【修正版】この孤独な厄災達に救いの手を!

@Fukutu-Yuki

爆死


 「突然ですが貴方は死んでしまいました」


 一面真っ白な空間で、蒼い髪をした綺麗な女の人に急に死の宣告をされた。いや過去形だから死の報告が正しいのかもしれない。



 「………………え?」


 「貴方は死にました」


 唐突にそんなことを言われても自分がどうしてここに居るのかすら分からないのにどうすればいいのだろうか。というか記憶が朧げで自分が死んだ時のことを全く思い出せない。


 「俺……死んだんですか?なんで死んだのに俺は会話できるんですか?というかどうして俺は死んでしまったんですか?」


 自分が死んだ瞬間の記憶が無く「俺が死んだなんてありえない」と主張したかったが、どこを見ても白が広がってる空間という非現実的な光景を前に、そういうことなのかと自分でも驚くくらいすんなりと自分が死んだ事を受け入れてしまった。


 「死んだ筈の貴方が今こうしてここで会話できているのは女神である私が貴方の魂を呼びよせたからです」


 「そして貴方が死んでしまった理由なんですが………聞きたいですか?」


 目の前の女性は躊躇いがちに聞いてきた。


 「はい……お願いします。もう自分が死んだ事は受け入れてます。その理由どうのこうので文句を言ったりはしません」


 「本当ですか?本当に怒ったりしませんか?」


 「当然ですよ!自分が死んだからってやけになって八つ当たりなんてそんなことは絶対にしないですよ!」


 女性が困っているようなのにさらに困らせるなんて事は男として出来るわけがない。


 「それじゃあ貴方の死因何ですが、えーっと………………


   性病


です」


 「…‥‥………はい?」


 この女性は今なんて言った?俺が性病で死んだと言ったのか?死んだ瞬間こそ思い出せないけど俺が生きてきた二十三年間の中でそんな行為をした覚えは一回も無かった。体の不調も無かったし清い身体のまま死んだはずだ。それが性病?絶対にありえないだろ……


 「あの、嘘ですよね?俺そんな病気に罹るようなことした覚え無いですよ?」


 「間違えました」


 「ですよねっ!?いやーびっくりしましたよ。ハハハ…」


 どうやら先程の言葉は言い間違いだったようだ。安心した。


 「いえその間違いではなく……私が女神の仕事をしてる途中に貴方の書類の死因のところに別の人と間違えて今日の日付と性病って書いちゃいました!その………ごめんね!」


 軽すぎる謝罪で俺を殺した事を謝られた。


 「そんな間違いある!?ていうか間違いましたってアンタのことかよ!?ふざけんな!」


 つい女神を自称している目の前の女に掴みかかってしまった。


 「きゃー!?怒らないっていったじゃないですか!」


 「八つ当たりでキレるような真似はしないって言ったんだ!俺の死んだ原因がアンタの間違いなら文句くらい言うわ!本来死ぬのが別のやつだったんならもちろん元に戻してくれるんだよな!?」


 「ごめんなさいそれは出来ません。命とは尊いものです。私の判断で勝手に殺したり生き返らせたり出来るようなものではありません」


 慈愛に満ちた表情で命の尊さを語られた。


 「俺の尊い命はお前のふざけたミスで失われたんだが」


 「それに生き返らせようにも現実の貴方の体はもう無いのです。」


 俺の言葉はスルーかよ。


 「なっ!?もしかしてもう火葬されてしまったとか?」


 「いえ本来健康体だった貴方が今日性病で死ぬっていう辻褄を合わせるために一時間で急激に病状が進んでいった結果…‥……‥爆発しました」


 「爆発したの!?」


 「爆発しました」


 「性病で体が爆発ってありえるのか!?」


 「本来ありえないですね。フフッ検死官の方もバラバラになった貴方の体を何度も調べたのですが性病で爆発したという結果しか出てこなくてすごく困ってましたよ!」


 笑い話みたいに話してるけど自分の事だから笑えねぇんだよ!


 「性行為経験のない男性が性病で急に爆発なんて世界的なミステリーになっちゃいますね!」


 満面の笑みで死んだ本人に言う事じゃないだろ!


 「笑ってる場合か!?というか完全にお前のせいじゃないか!」


 目の前の女に掴みかかろうとしたら急に体が動かなくなった。


 「きゃあ!?急に怒鳴ってくるからびっくりして貴方の体の動きを止めてしまったじゃないですか!談笑中に急に怒り始めるなんて、その……大丈夫ですか?」


 最初から笑い話のつもりだったのはお前だけなんだよ!だからその精神を病んでる奴を見るような目をやめろ!


 「ちょうどいいからこのまま話しますね。貴方を間違って殺してしまったお詫びに次の貴方の人生を私がサポートします。手始めに次の貴方の人生で欲しい能力はありますか?一つだけ望んだ能力を特典として付けてあげることが出来ますよ」


 「急にそんなこと言われても……」


 「まあこんな事を急に言われても混乱しますよね………とりあえず貴方が今心の奥底で一番願っている能力が付くようにしておきます」


 「……俺の願っていること」


 正直自分が性病で死んだと告げられた時ぐらいから頭の理解が追いついてないのに次の人生で欲しい能力とか聞かれても分からない。というか本当に死ぬ前に戻してもらうことは出来ないのだろうか?


 「あと貴方が次の人生を過ごすのは貴方が住んでいた世界とは別の世界です。なので貴方が十四歳になるまでは私が念話で案内をしますね。個神的に心配なこともありますし………」


 だからその精神を病んだやつを見る目はやめろ!


 「では次の貴方の人生では神のミスで死んでしまうなんてとんでもない不幸に遭わない様に祈っておきますね!」


 他人事!?


 女神?のその言葉と共に俺の意識は急速に失われていった。




 「………ではどうかその身に宿した使命を果たして来てください」




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