第32話 3月25日のお題「お花見日和」/『隠れた桜の名所』

「お花見日和だから逢いに来て」という君の聲が聞こえた気がしたので、長い長い坂をバスで上っていく。

桜に映えるように空色のシャツを選んだのは浮かれすぎかな。


郷に入っては郷に従えだから、黒のウインドブレーカーで隠す。

もう灰色の煙突はない。

君がかたちを失った場所で桜が咲き誇っていた。



◆3月25日のお題「お花見日和」

#140字小説 『隠れた桜の名所』

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