第43話 魔法

 次の日。


 テントの外に出ると、ミレイちゃんが水を用意してくれて、ライラさんとセレナが顔を洗っていた。


 僕も水をふんだんに使い、顔を洗う。


「ミレイちゃん。うちのパーティーに入らない?」


「えっ!? だ、ダメです!」


「うぅ……ミレイちゃんがいれば、水に困らなさそうなのにね」


 ん? 魔法使いのシズルさんがいるのに、どうしてミレイちゃんがいいんだろう?


「エリ姉~」


 昨日色々話していて仲良くなったセレナが、フランクに話しかける。


「うん?」


「シズ姉も魔法が使えるんじゃないの?」


「あ~セレナちゃんって魔法の基礎を知らない感じか~。君達ってこれからティス町に向かうんでしょう? 私達もそちらを目指しているから、その時に説明するよ~」


「わ~い! 楽しみにしてるね!」


 こ、こんなに楽しそうにしているセレナがっ……!


 娘がこんなにも楽しそうにしているのは、凄く嬉しい! 娘じゃないけど。


 朝食は、昨日試したうどんにした。


 戸惑うのかと思いきや、昨晩の焼肉があまりにも美味しくて、絶対美味しいに違いないと、うどんをつるつる食べ始めた。


「「「これもまた美味しい~!」」」


 朝からうどんは重いかなと思ったけど、つゆは少し冷えた体に染み渡って、これはこれでいい気がする。


 それにしても、朝食のレシピをいくつか購入するべきだったなと、ちょっと反省した。


 どうしても屋台で売るメニューばかり優先してしまった。


「このうどんというものも凄く美味しかった! 店長。ご馳走様!」


「気に入ってくれたら良かったです」


 これなら立ち食いそば的な販売もできそうだ。


 テントを片付けると、ブレインさん達が驚いていた。


「まさか店長って……【アイテムボックス】持ちだったとは……」


「あはは……まあ、そういう類ですね」


「やけに荷物が少なさそうに見えたが、それは良さそうだな」


「ノアくん! うちのパーティー入らない?」


「ダメええええ! ノアは私達の店長だもん!」


 セレナが僕の右腕に抱き着いてきた。


「じゃあ、セレナちゃん達も! ぜひ! ――――痛っ!」


 エリナさんの頭にブレインさんがチョップを叩き込んだ。


「さあ、片付けも終わったし、出発するか」


 なんやかんやブレインさんがリーダーである理由が分かった気がする。


 それから僕達はみんなで一緒に街道の傍を歩いて、東を目指した。


 僕達の歩く速度はミレイちゃんもいるので、そう早くない。なんなら、途中で花を見たり、丘の上に行ったりと寄り道までする。


 そんな僕達にブレインさんは全く構わないと、付いてきてくれる。


「あはは……店長と一緒にいた方が、美味しいものを食べれそうだからな」


 とのこと。


 それと歩いてる時、エリナさんがセレナちゃんに魔法について、色々教えてくれた。


 まとめると、魔法には二種類があって、具体的に形を決めて放つ【呪文魔法】と、形を決めずに魔素だけを使って具現化させる【自然魔法】に分けられるそうだ。


 ミレイちゃんがいつも使う【水魔法】は全てが【自然魔法】なので、魔法の強さもミレイちゃんが創造した通りになる。


 でもシズルさんのように【呪文魔法】が得意な人は【自然魔法】があまり使えず、ミレイちゃんのように水を生成するのは至難の業だそうだ。


 変わりに【呪文魔法】を見せてもらった。


「――――ライトニング・ブレイド!」


 シズルさんの両手から放たれた雷の剣が、複数集まったゴブリンを一斉に一刀両断した。


 いつかミレイちゃんも【呪文魔法】を覚えると、破壊力抜群の魔法が放てるかも知れない。

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