第23話 初めての悪意
「おいおい~ここは獣臭いな~」
森に入ってすぐに大声で、わざとらしく僕達を威嚇する。冒険者ギルドから僕達を追いかけて来た四人組の冒険者集団だ。
リーダー格の一人が一番体が大きくて斧を持っている。他の三人は剣を持っていかにもどこにでもいそうな山賊みたいな感じだ。
「僕達に何か御用でしょうか?」
「おうよ。お前ら、毎日あれだけ綺麗なコーンラビットを売り込んでるよな?」
やはり、僕達の事を見ていた人達もちゃんといるんだな。
冒険者ギルドには大勢の人がいるので、誰がどういう人なのか判断するのは難しい。それに毎日ひっきりなしにやってきては依頼で出かける。この人達が冒険者ギルドにどれくらいいたのかは全く覚えていない。
「ええ。そうですが、何かしました?」
「何かしました? じゃねぇ! てめぇらのせいで俺達が捕まえたコーンラビットが全然売れなくなった! どうしてくれるんだ!」
「ん? それは冒険者ギルドに卸しているんじゃないですか? 買取不可とか聞いたことがないのですが……」
「はあ? 誰がギルドに真っすぐ卸す馬鹿がいるんだよ! お前らのせいで直接売れなくなっちまったんだ! コーンラビットの肉は直接レストランに高値で卸せるんだ! てめぇらのせいで、その値段が崩壊してるんだよ!」
なるほど……だから冒険者ギルドとしても大量に卸す僕達の存在が貴重だったのか。
それにしても、こういうのは冒険者ギルドを通して安定した相場で落ち着かせるのが街のためになると思うんだけど、どうしてギルドじゃなくて直接冒険者から買い取っているんだろう?
「だからてめぇらが稼いだお金は元々俺達が貰うべき金だ! 今まで稼いだ額、全部よこしな」
「目的はそれでしたか。はあ……セレナ~」
「は~い。死なない程度にボコボコにしておくね~」
「頼んだ」
誰よりもセレナの力を知っているから心配はしていない。でも、念のためにポンちゃんにも待機してもらう。
言わずともポンちゃんは睨んでいた。
セレナを見てニヤけた顔で見下ろす男達。
「ふう~ん。こんな女の子が俺達と戦うだと?」
「おじさん達。悪い人達みたいだから、ここで成敗してあげます!」
「がーはははっ! やれるもんならやってみ――――」
笑っていた冒険者の前からセレナの姿が一瞬で消えた。
満腹ではないけど、一度満腹になれば、半日は全力を出せるので十二分に実力を出せる。
「なっ! どこに消えた!」
冒険者達が慌てながら周りを見回すけど、セレナの姿は見えない。いや、目で追えないのだ。
普通の人では目で追えない速度で動いているセレナ。中級武術をインストールして、ようやく彼女の速度がギリギリ目で追えるようになったけど、【暴食】ってこんなにも強いんだなと感動すら覚える。
冒険者達の周囲を回っていたセレナが攻撃を仕掛ける。
全員の腹部を殴り付けると、空気を叩く爆音と共に、四人の冒険者がその場で白目を向いて倒れ込んだ。
「手加減はしたから大丈夫だと思う~」
「お疲れ。セレナ」
戻って来たセレナの頭を撫でてあげる。
冒険者達を重ねてセレナが片手で持ち上げると、そのままシーラー街に戻った。
「それはなんだ!?」
玄関口の衛兵さんが驚いた顔で僕達を迎え入れてくれる。
「衛兵さん! いつもお疲れ様です。実は~」
四人の冒険者がやってきた理由を伝えると、冒険者として違法行為であり、裏取引も違法行為だというのが発覚した。
すぐに冒険者ギルドに知らせるとのことで、僕達の仕事はここまでとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます