第31話 ロマンは止まることを知らない!
夕暮れ時。
『世界樹』の頂上展望台にて。
「じゃあ今月末よろしくお願いします!」
「分かったよ」
学校帰りの美月ちゃんと早めの夕食を
あの美月ちゃんの家から大体予想はしていたけど、まあお金持ち学校だった。
学校自らがメディア露出なども展開していて、文化祭には有名人がたくさん来るとのことだった。
もちろん混雑などを考えたルール設けられており、今はその辺のことを詳しく聞いていたわけだ。
「そんなとこに俺なんかでいいの?」
「何言ってるんですか! やすひろさんは一番人気の大本命ですよ!」
「本当に?」
さっき聞いた限りだと、去年はアイドルグループやカリスマ探索者、芸能人なんかがバンバンいたらしいけど。
美月ちゃん俺に期待しすぎでは?
「やすひろさんは今や時の人ですから!」
「そうかなあ。
「とにかくそういうことなので!」
そう言うと、美月ちゃんはスクールバッグを持って立ち上がった。
良い時間だし帰るみたいだな。
「じゃあ一緒に行きますよ~」
「え、今日も!?」
「もちろんです! ほら早く早く!」
「……しょうがないな」
美月ちゃんに
これは「巨大滑り台」の入口だ。
頂上から地上までを緩やかに繋ぐ巨大滑り台は、俺もすごく気に入っている。
でも、女の子と年甲斐もなく……いや、気にしたら負けだな!
「それっ!」
「はははっ!」
そうして、巨大滑り台で美月ちゃんと地上まで降りていった。
「ふい~」
家の近くに呼んでいたタクシーに乗った美月ちゃんを見送り、再び『世界樹』の元へ。
最近はここで配信をするのが気に入っている。
視聴者たちも「綺麗!」と喜んでくれるしな。
「よお。今日のデートは終わったかよ」
「そういうんじゃねえって」
ようやく導入できた「木のエレベーター」で頂上に向かっていると、中間でえりとに止められた。
「そういえば、最近ずっとここにいるよな」
「まあな」
何か大きな研究が入ったとかで忙しそうにしていたえりとは、『世界樹』が出来てからというもの、ここに居座りっぱなしだ。
「ちと気になることがあってな」
「今度は何を調べてるの?」
「んー、一般人には言えないんだが」
「そこをなんとか!」
「……」
渋りながらも乗り込んで来る。
素直じゃない奴。
「頂上でいいだろ?」
「ああ」
そのまま頂上へ向かった。
一息つき、共にビールを片手に話を再開する。
この絶景とビールが堪らなくいいんだ。
「それで、結局何を調べてるの?」
「そうだな。一言で言うと……」
えりとは言葉を選びながら見上げて、やがてニヤリとしながら言った。
「この木が、本物の『世界樹』かもなって話」
「は!?」
俺は反射的に声を上げてしまう。
どういうことだ!?
だってその名前は、暴走した二十七歳の三人がノリで付けたものだったはず!
「そもそも『世界樹』なんてあるのか?」
「正確には、
「最近?」
「ああ。とあるダンジョンでな」
最近という言葉でピンと来る。
「じゃあお前が最近忙しそうにしてたのって」
「新発見ダンジョンについてだよ」
「まじか!」
ダンジョンというのは、突如として門と共に出現する。
『はじまりの草原』や『まあまあの密林』もそうだけど、一見ただポンと置かれた大きな門の向こうにダンジョンが広がっている。
イメージ的には『どこ〇もドア』かな。
かなり大きめの。
その扉に合わせて協会という施設を作っているのでそれっぽく見えるけど、新興のダンジョンは何もない場所に扉だけがある異質な光景だ。
不思議なもんだね。
「でも、新興ダンジョンが現れたらニュースにならない?」
「それが今回は情報規制されてるんだよ」
「なんで?」
「あまりにも前例がないダンジョンだからだ」
「……!」
おいおい、そんなこと俺に言っていいのか?
もう今更だけど!
「繰り返すが、絶対に口外は禁止。めどさん、桜井さんにもだ」
「わ、わかった」
“めどさん”は
二人にも言うなと止められるのは初めてかもしれない。
「その新興ダンジョンは『先行隊』が調査をしてくれてる。俺ら研究者側は送られてきたデータを調べるのが仕事だ」
「なるほど」
先行隊というのは、新興ダンジョンが現れた時に、真っ先に探索をする超凄腕探索者さん達。
一般開放する前に、難易度設定や規制を設けるかなどを先に調べるために潜入するらしい。
いきなり一般探索者が入って行って、死亡が相次いだら物騒だからね。
「そのデータの一つに、我らが『世界樹』と随分似てる木があったんだよ」
「まじか」
えりとは頂上の葉を触りながら言う。
「だが、一つだけ違う点がある」
「……なんだ?」
その口ぶりに、少しドキっとなる感覚があった。
「サイズがまるで違う」
「……! それって」
「新興ダンジョンのはもっと、アホほどデカい」
「待ってくれ。もしかしてお前が言いたいのって」
えりとがワクワクした顔で口を開く。
「この『世界樹』はまだまだ子どもかもしれねえ」
「えええ!? この大きさで!?」
えりとはまだ続ける。
「だって最近は成長が止まってただろ?」
「う、うん」
我らが『世界樹』は、35メートルを超えたあたりから成長を見せなくなっていた。
「それって成長しきったのではなくて」
「成長するための
「その何かは?」
「まだ分からないが、新興ダンジョンを調査すれば見えてくるはずだ」
「……」
すごい話だ。
俺たちの『世界樹』のロマンはまだ終わっていなかったなんて!
「やすひろ。つまりだな」
「うん! 言いたいことは分かる!」
えりとに同意するよう頷いた。
そして、俺は今のワクワクを言葉にする。
「『モフモフパーク』の可能性は無限大だ!」
★
<三人称視点>
ここは最近出現した新興ダンジョン。
今までの傾向とはあらゆるものが違うこのダンジョンは、日本のトップ探索者達という先行隊ですら中々進めないでいる。
そして、その最奥。
広大なダンジョン一面を見渡すことができるこの木の上に、何かが
おそらく魔物だろう。
「プクー!」
その特別な魔物は、木の頂上からどこへ向かって
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