喰え!生き物には食べるということが必要なのだ!



「ふはははははは、良いではないか貴様!実に俺好みの味だ!名は何という?そうか、パーシヴァルか!良き名だ、美食の道は長く険しいぞ、精進しろ!」


邪神ベヘモットはご機嫌だった。彼の周りには料理人であるパーシヴァルが腕によりをかけて作った、いつもより豪勢な、大量の料理が置かれていた。


しかし大量の料理はもう既に邪神の腹の中だ。


彼の周りには、食べ残しも無く綺麗な空の皿が置かれている。暴食というわりに、食に対する敬意と感謝で溢れ、マナーを守り食事は丁寧だった。


大食いタレントとしてでも活躍できるだろう。





何故俺が邪神に対して、このように食事を振る舞っているか。


こいつは人類の害である邪神ではあるが、ダンジョン攻略において大きく活躍した。


何とこいつは俺の目に見えない素早い動きで、次々と素手で敵を殴り殺し、あっという間に敵軍を壊滅させ敗走にまで追いやった。


基本的に魔物は突撃しかしてこない、理性の無い化け物だ。どれだけアンデッド爆弾を爆発させても、敵を殺しても臆せずに突撃を続ける。


そんな彼らが撤退したのだ。一体どれだけの恐怖だったのだろう。




まぁ、そんなわけで。こいつはダンジョンで大いに活躍したのだ。


部下の功績には、王として報いなければならない。


暴食を司るなら、とりあえず腹いっぱい食べさせて満腹にしてやろうと考え大量の料理を食わせようと考えたのだが当たりだった。


俺は不満げな顔のベヘモットをホテルの大食堂に案内したら、非常に嬉しそうな顔をして食べ始めたのだ。



「うむ、このラーメンというのも悪くはない。こんな物が3分で出来上がるとは。俺のいた世界には存在しない味だ。このワインも非常に美味だ。ロマネコンティというのか」


ベヘモットは俺がクエストで金と交換したカップラーメンを食べている。うーーむ、上品だ。非常に上品に食べている。というか、どれだけ食べれば気が済むんだ。



俺はベヘモットの目の前に座る。



「なんだ、貴様か」


微妙そうな顔をした。そんな顔するなよ、悲しい。



「俺のことを恨んでいるか?自分で言うのも何だが、結構雑な扱いをしていると思うんだが」



「貴様の命令に対して絶対服従であるという点は色々と思うことはあるが、貴様は俺を封印から解き放ったのだ。脆弱な肉体ではあるが、実体を持ってな。その点は感謝している。あのまま邪神として蘇っていたのなら、ただ厄災を振り撒くだけの存在となっていただろう。だが、受肉したおかげでこのように舌と胃があるのだ。貴様がいなければ味覚と満腹感を覚えることはなかっただろう」



「それで聞きたいのは、お前が殺した魔物なんだけど。何あれ?なんか、げっそりしてたけど」


そう、こいつが殴り殺した大量の魔物の死体。何故か非常に痩せていたのだ。それはもうガリガリに。

げっそりと。回収役のホムンクルスは軽くなったので運びやすくなったと喜んでいた。




「俺の権能については知っているな?」


「暴食を司るということは」


「俺の権能は暴食、その能力は二つ。一つはカロリーを奪うことだ。俺がいるだけで敵はカロリーを奪われ、触れられるとカロリーなどの栄養を奪われる。痩せていたのは俺に全ての栄養を奪われた結果だろう」



あぁ~、なるほどねえ。前線のホムンクルスより、ベヘモットの前にいる魔物はベヘモットを無視して共食いを始めたという報告があったのだ。てっきり俺のホムンクルスが使う武器防具によって錯乱したのかと考えていたが、こいつの権能だったのか。




「そしてもう一つ。敵は餓死する」


「?そりゃ誰だってそうだろ」


「違う。例えばあの機械馬。俺はあいつを餓死させることができる」



ベヘモットはオレンジジュースを飲む機械馬を指さして言う。



「餓死って…燃料が無くなった時のことか?」


「それはただの燃料切れだ。一時的な休眠であり、餓死とは違う。俺が権能を発動すると、機械馬は飢えを感じ、燃料が無くなれば自身の体を食って分解し、エネルギーに変換し強制稼働させる。最後は変換する物がなくなり餓死するのだ」


『否定。当機体は飢えの感覚も、金属をエネルギーに変換する機能は存在しない』




「だから、発生させるのだ。その感覚と機能をな。権能ってのはそう言うものだ、現実を改変するのだ。生きとし生けるもの、何かを食わなければ生きていけない。これが俺の権能だ」



「ふーん。機械文明とか相手には強そうだな。そのときは権能を存分に奮ってもらおうかな」



「ククク、俺が活躍するのは意外と早いかもしれんぞ?そのうち面白い物が見れるかもしれん」


「そりゃ楽しみだ」



「今はいないが、寿司職人Kの寿司?という物も是非味わってみたいものだ」


「おすすめは大トロだ。うまいぞ?」



あの人はダンジョンで寿司の食材確保のためにドラゴン殺してるからなぁ。

寿司職人とは一体。
















今日のログインボーナスはオフィス用品確定ガチャコインだ。


えぇ…オフィス用品って。


今更だが、このログインボーナス、何の脈絡もないな。昨日は神、今日はオフィス用品。

これ運営が適当に決めてるんじゃ無いか?




それ。





ガタンッ






C『超頑丈 万年筆千本』



ペンの中のインクが自動的にペン先に供給されるペン。インクの入れ方は大きく2つあり、インクの入ったボトルにペン先を漬けて吸引する方法と、インクの入ったカートリッジを交換する方法である。


万年筆は953年にエジプトで発明され、その後、イギリスで特許が取得されfountain pen(泉のペン)という名前が使われた。






出現したのは、大量の万年筆だった。




俺はこれを見て思った。




あっこれ武器にしよう。





先端は鋭利であり、超高速スピードで敵に飛来すれば、深く突き刺さるだろう。


大量の万年筆が予測不能な動きで飛来し、あらゆる角度より突き刺さり貫通、次の獲物を求めて無差別に襲うのだ。


軽くて丈夫。数も多い。魔力も大して使わないはずだ。



俺は万年筆千本を宙に浮かべようとする。


『能力 ガチャコール』


これによりガチャから出た物をいつでも呼び出し、浮かべ動かすことが出来る。


さあ、浮かべ!








ウァッ。


な、なんだ?頭がだるい!



まずい、疲労感がやばい、徹夜したかのような疲れが脳を襲う。


俺は慌ててポーションを飲む。


あー美味い。脳が生き返る。





調査の結果、このガチャコールで物を動かすには凄まじい負荷が脳にかかるようだ。


万年筆の場所の把握、移動ルートの決定、現在位置の把握など。非常に多く考えなければならない。



今の俺では、せいぜい一般万年筆を3本ほど自由に動かすくらいだ。


万年筆を武器にするの、結構かっこいいと思うんだけどなあ。



俺は諦めないからな!






さて、無料ガチャ。




ガタンッ








R『魔王の王冠』



魔王とは元々は仏教の用語で、仏道修行を妨げる「第六天魔王波旬」のこと。



仏教だけでは無く、全世界で悪魔や怪物、妖怪などの王としてその名はつかわれ、数多くの神話や物語に登場する。


織田信長は自らを第六天魔王と名乗り、延暦寺を焼いた。まさに仏教の敵である。



ファンタジー作品などの創作においては、人類に敵対する勢力の王のことを魔王と呼称され、特に現代ではこちらの使い方の方がよく使われる。





出現したのは、金の王冠だった。


王冠が煌びやかに輝き、紫色の宝石など様々な装飾を施されている。


金の王冠は、その輝きで一瞬にして俺の目を奪った。その美しさに俺は見とれてしまった。





●魔王の王冠



とある魔王が使っていた伝統ある王冠です。これを着けていると敵軍はあなたの軍勢に恐怖するでしょう。

山田さんも王なのですから、いい加減ジャージやパジャマはやめてそれ相応の見た目をしたらどうですか?






俺は金の王冠を手に取る。王冠は俺の手のひらに収まり、その輝きはますます強くなった。






そうだ、魔王軍を結成しよう。



俺はパジャマを脱ぎ、魔王っぽい装備品をドロップアイテムの中から探し着用する。





全身を黒い鎧や兜、ガントレットやレギンスで身を纏った俺は、恐怖と畏敬の念を抱かせる風貌をしているはずだ。



兜には2本の長い角が突き出し、鎧には不気味な紫色の紋様が彫り込まれていた。ガントレットには鋭い爪がついており、レギンスには尖った棘があしらわれている。





俺は玉座に座り、目の前で一糸乱れず整列したホムンクルス達を見る。


全員がダンジョンよりドロップした闇の装備を身にまとっており、これこそまさに魔王軍だ。


装備が統一されておらず雑多な印象だが、それは我慢しよう。




遠くで軍人達が苦笑いをしているのが視界に入った。だが、何も恥ずかしくない!恥ずかしくないったら無い!





「さあ、邪神将ベヘモット、黒炎のA、我が側近よ、出撃せよ!」




魔王軍の結成だ!さぁ、進軍せよ、敵の全てを奪うのだ!




まずは爆弾アンデッドの突撃だ!何事も派手に行こう!
















ダンジョン内の魔物は、ダンジョンに存在する豊富な魔力を吸収して生きている。魔力を体が必要なエネルギーに変換し、生きているのだ。あいつらは魔力と水だけで、生きているのだ。


そこに俺の権能だ。俺の権能『暴食』により、その魔力をエネルギーに変換する能力は停止し、ダンジョン内の魔物は生きるために、何かを食べる必要に迫られる。


ダンジョン内は、国家に相当する物が存在しているという。暗黒騎士のような兵士から使い捨ての魔物、さらにダンジョン内に住まう動物や虫。


一体、何兆の生命がいるのだろうか。


こいつらが皆、一斉に飢えを感じ、何かを食べる必要がある。


だが、これまで食べるという文化がなかった国家に、農園や牧場などはあるのだろうか。


今はいい。豊富で質の良い魔力から変換された栄養が、体内に蓄積されているため、しばらくは大丈夫だろう。


しかし、その後は?食料はない。なら、何を食べれるのだ?


生きとし生けるものは、何かを食す必要があるのだ。その法則からは、逃げることが出来ない。逃げた者には、相応の報いを。





だが、これまで使われることがなかった、胃などの消化器官はまともに動くのか?




クククククク、クククク。クハハハハハハハハ






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