優しい神父さん

次から次へと、ダンジョンから魔物の死体が運ばれてくる。


ドロップアイテムなど有益な物、使い道のよくわからないものは全て保管してあるが、この死体は臭いし邪魔だし、放置してると進軍の邪魔になるのでさっさと処分をしなければならない。


一つ目の使い道として、首無しの魔術でアンデッドとすることだ。ゴブリンやオークなどその他諸々の死体はアンデッドとしてこちらの兵士となり、ホムンクルス製造を始めたとはいえ、未だ人手が足らない前線を支えてくれるだろう。


撤退時の肉壁にもなるし、ダンジョン突入、撤退時は全身に爆弾を縛って突撃、自爆をさせることで敵に大きな損害を与え士気を下げることができる。



二つ目はマッドサイエンティストの実験体となることだ。

彼らは死体が手に入ったことに歓喜し、次から次へと様々な実験、研究を行っている。


死体が余るほどあるのでどんな過酷な実験でもやり放題、誰も咎める者はいないと言うことで、しばらくはこの研究にかかりきりになるらしい


流石に死体をホムンクルスと合成するのはやめた。クリーチャーは望んでいない。



三つ目はホテルの食糧保存庫などの倉庫に、アナスタシアによって冷凍保存する方法だ。


ダンジョン攻略中に報告があったのだが、たまに敵の中に指揮官と思われるやつやエリート兵、精鋭兵といった、普通の魔物とは違う奴らが混じっているのだ。


そういったやつの死体は首無しの手で蘇るよりも、もっと腕の良いネクロマンサーに蘇らせたら良いと言うので、とりあえずは冷凍保存している。


これでも余った奴らの使い道として、生贄の棺にぶち込むという方法だ。

この棺に入れるとあら不思議、なんと綺麗さっぱり無くなるのだ。


誰に捧げているかは考えないこととする。







それでは今日のガチャだ。ログインボーナスは通常ガチャコイン。いつも通り




ガタンッ








C『ルービックキューブ』


1974年にハンガリーの学者、ルビク・エレネーにより考案された立方体パズル。それぞれの面が違う色、つまり六色で構成され、全ての面が九つに分割されている。


この面を全て同じ色に揃えることを目的とする。


ルービックキューブの面を揃える世界大会が行われており、プロは10秒以内に全ての面をそろえることができる。


機械は何と1秒も使わずに揃えることができるのだ。




うわっ、ルービックキューブだ。

子供の頃に親に買ってもらったことがある。


最初全ての色が揃った綺麗な面を適当に回転させ、いざ全ての面を揃えようとするのだがこれが全くうまくいかない。


何とか一つの面を揃えることに成功したのだが、それ以上は無理だったし飽きたので放置した記憶がある。


さぁて、せっかくガチャから出たのでリベンジだ。ご丁寧にもう既に色が揃えられていない。これならすぐに遊べるだろう。







ダメだ、まったくうまくいかない。一面も揃えられないなんてどうなっているんだ?



俺はルービックキューブをよく観察する。



……⁈


このルービックキューブ、よくみたら八色もあるじゃねーか!

完成できる訳がない!






今日の無料ガチャである。



ガタンッ









UC『神父』


キリスト教において司祭の職位を持つ者に対しての敬称。

キリスト教の中でもカトリック、正教会などで使われる。


プロテスタントでは神父を使用せず、牧師を使う。




出現したのは、黒い神父服を着た男性だった。


西洋人だろうか、金髪碧眼であり、手にはなんと俺を神と崇める運命教会の経典、運命書と大きな銀色の槌を軽々と片手で持っている。




彼は自身を神父であると自己紹介し、死者の供養からお祈り、人生相談に清掃活動、傷の手当てなど様々なことをしてくれるそうだ。


俺に対して跪き、俺を神として信仰していると話してくれた。


「どうか私に、あなた様の手助けをさせてください」


と言う。



「じゃあ、ダンジョンで仲間を助けてくれ。応急手当や銃弾の補給、ドロップアイテムの回収とか、できることをしてほしい。無理はしなくて良いからな」


すごく優しそうな笑顔で、彼は微笑んだ。





やった!貴重な医療ユニットだ!

それに神父だって⁈もしかしたらPTSDなど、ダンジョン攻略で精神的に疲れるホムンクルスや軍人もいるかもしれない。


彼らの良き相談相手となってくれるだろう。















神父は笑顔で足を進める。


彼が一歩進み、銀の槌を振るわれる度に、残忍な潰れる音と悲鳴が響いた。



彼の持つスキルは、『対異教徒特攻』『蹂躙』『人体破壊』『運命神の加護』『神命』。


神の名の下に猛威を振るった。


「さて、これでお片付けも済んだでしょう」


神父は自信に満ちた口調で言った。


辺りは普通のモンスターとは違う、全身を鎧で身を包んだ騎士たちの遺体が散乱していた。その数約100名。


「あなたたちが悪いのですよ。私の降伏勧告を拒否するからです。神に敵対するあなたたちは滅ぶべきなのです」


神父は、彼らの罪を厳しく断罪した。


この部屋には、敵の侵攻を受けて下の層より偵察に来た騎士たちが前線の情報を後方に送るために小さな連絡所を設営していた。


しかし、彼らは任務を全うすることなく、散っていった。


「うぅ......」


生き残りの騎士が、瀕死の状態で倒れていた。



「おや?まだ生き残りがいたのですか。安心なさい。あの死神が魂を導いて、神の元に返してくれるでしょう」


神父は、笑顔でそう言った。



「ぁ…ま」


「何でしょうか。遺言ですか、いいでしょう、聞き入れて差し上げましょう。これが神の慈悲です」


神父は、笑顔で問いかけた。


「我ら魔軍、決して負けぬ!」


「俺はここで死ぬだろう。だが、我ら暗黒騎士団の同胞、そして敬愛する騎士団長が、お前らを許さぬ!」


生き残りの騎士は、最後の力を振り絞って言った。


「覚悟しろ!」


瀕死の騎士は、憎悪と覚悟の瞳で神父を睨む。














「あ?」




「てめぇ、運命教会信徒である、この私に逆らうのか!」


何者かに乗っ取られたような、狂気に満ちた顔だった。



「私が慈悲を見せたから、調子に乗りやがって!このゴミ虫がッ!ふざけるなッ」


何度も、騎士の頭を踏みつける。何度も、何度も。既に騎士の命はない。



「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」





「大丈夫か⁈援軍に来たぞ!」



前線基地襲撃される。その連絡を受けて後方で待機していた、援軍の騎士団300名。


彼らは目撃する、恐怖する。絶望する。





神父は微笑む。


「さぁ、ゴミ掃除を始めましょう」





暗黒騎士団上層部 緊急即応隊 総員 103名 全滅


暗黒騎士団上層部 緊急即応隊支援隊  325名 交戦開始








本日の鑑定


●暗黒騎士団鎧


黒炎石で製造された暗黒騎士団の鎧です。この鎧を着る者は暗黒騎士団上層部の緊急即応隊所属の団員が着用し、軽快に戦えるよう軽さを重視しています。


暗黒騎士団はダンジョン上層30階、中層60階にそれぞれ支部を、下層90階に本部があります。厳しい訓練で鍛えられた集団戦の力、そして高い士気と仲間への信頼、敬愛する騎士団長への想いであなたの前に立ち塞がるでしょう。



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