十円玉

簡単に言えば、することがなくなってしまった。

このガチャを回すためにはガチャコインやチケットなどが必要なのだが、俺はそれを持っていない。

入手方法も今のところ運営からログインボーナスなどから貰うだけ。それ以外の方法を知らない。


これは非常にまずい。そもそも、ログインボーナスだってガチャコインがもらえるとは限らないのだ。

今回のように水などの生活必需品がもらえるかもしれないし、どうでもいいものがもらえるのかもしれない。


最悪ガチャを回すことができずに何日も簿記教科書を読み続けるということになる。





あっ。


そうだ、昨日の夜、喉が渇いたからジュースを買いに自販機に行ったんだ!

確か140円のジュースを買うために100円玉と50円玉を入れて、おつりとして10円もらったはず。


その10円玉はどうしたって?ポケットだ、パジャマのポケットにいれたんだ!



パジャマのポケットを漁ると、硬い何かに触れる感触。10円玉だ。10円玉をガチャのコイン投入口に入れ、ノブを回す。


こい、何か役に立つもの。






ガタンッ






C 人生ゲーム




今回現れたのは人生ゲーム。

白いダンボールに大きく赤い文字で『人生ゲーム令和最新版』とでかでかと書かれており、隣には家族と思われる人たちが大勢描かれている。

作った企業もタカラトミー、俺でも知っている日本企業。生産日は2022年1月。運営はどうやってこれを入手したのだろうか。普通に店で買ったのかな。




【バグを修正しました。今後ガチャコイン以外は使用不可能です】



…いいけどね。もうお金はないし。



ダンボールを開けボードを広げ、駒やルーレット、不動産を配置し、札束などを準備する。

うーーん。これを一人でやるのか。普通これは複数人でやるのでは?


ルーレットを回し、出た目に従ってマスを進める




カラカラ~。




出た目は9。やった、出た目が大きいぞ。

…大きいから何なのだろう。別に勝ち負けがあるわけでもないのに。


自動車型の駒を進め、マスに書いてある字を見る。

『お年玉を落とした。マイナス10000円。』


最初の所持金は5000円なので、5000円分の借用書を手に取った。

初っ端から借金をしてしまった。


カラカラ~


出た目は4。



『隣の人が誕生日!お祝い金として1000円あげよう』


…俺は一人で人生ゲームをやっている。俺はいったいどうすればいいのだろう。


むなしい、寂しい。泣きそうになった。



漁師で独身という結果に終わった。借金もなんとか完済し、資金も目安がわからないがそこそこ増やせたと思う。


ゴールして所持金を数え終わったとき、ゴトンッという音と共にそれは現れた。




景品『サーモンのお刺身』


スーパーで売っている発泡スチロールの入れ物にビニルで包まれたサーモンのお刺身、醤油とワサビ付きが現れた。消費期限は明日まで。



これはもしや、漁師でゲームクリアしたから、魚がもらえたのか?

もし石油王や社長でゲームを終えたらどうなるんだろう。


よし、目指すは王族、やるぞっ。




…だめだった。

あの後何回ゲームを終えても景品が現れることはなかった。最初の一回だけだったらしい。




やる事もないので簿記三級の教科書を適当に読んだ。


お腹がすいたのでサーモンのお刺身を食べた。箸がないので手で食べた。醤油とワサビもすべて食べた、貴重なカロリーだ。無駄にすることはできない。


ペットボトルの詰まったダンボールを広げて布団がわりにし眠りについた。



今日はチキンとみかん、サーモンしか食べていない。

お腹が空いた。





まずい、このままでは餓死してしまう。なんとかしなくては。











C 人生ゲーム

ボードゲームであり、すごろく。大体4人程度で遊ぶ。

基本的にルーレットを回して出た目に従って駒を進め、マスに書いてあるイベント、人生ゲームなので大学受験、就職、結婚、出産などを得て資産を増やしていき、ゲーム終了時点で最も資産総額の多いプレイヤーが勝利するというボードゲーム。正月に親戚で遊ぶもよし、友達と遊ぶもよし、しかし注意、一ゲームかなりの時間がかかるので注意されたし。

なんとアメリカ発祥のゲームである。










皆が皆、与えられた能力を発揮していく。

あるロシア人は、植物と生態系を操作するスキルで一日で大森林を形成した。

あるアメリカ人は瞬く間に軍隊を展開し、即席の基地を作り上げた。

ある日本人は、数多くの美少女を召喚し、ハーレムを結成した。

あるイギリス人は、工場を建設し物資の生産を始めた。





とある日本人はガチャでガラクタを生み出した。

全世界は彼に諦め、呆れ、嘲笑、傍観、応援、同情した。





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