第3話 甘々な同棲生活が、始まってしまった

「結婚?同棲?」


あまりにも急すぎる話に、俺は紅茶をこぼしそうになる。


「アルくん……もしかして忘れたの?」

「えーと、ごめん。全然思い出せない」

「もう!アルくんひどい!」


トリーシャは俺をポカポカ叩く。


「ほら、アルフォンスくんが村を出た時……」


見かねたウィンディおばさんが、助け舟を出てくれた。


「あの時か……」

「アルくん。やっと思い出した」


――8年前。

俺が故郷のコリン村を出た時だ。

子どもの頃から錬金術師になりたかった俺は、王都にある錬金術工房で見習いをやることに決まった。

その時、泣き止まないトリーシャに俺は言った――「もし大きくなっても俺のことがまだ好きなら、トリーシャちゃんと結婚する」


なんて俺は調子に乗った発言をしていたんだ……

「俺のことがまだ好きなら」って、どこの騎士様の台詞だよ。

恥ずかしすぎる過去だ。


「あれからずっと、この子は頑張っていたのよ。アルくんのお嫁さんになるために、お料理したりお裁縫したり……」

「もお!ママ!恥ずかしいから言わないで!!」


頬をぷっくと膨らませて、トリーシャはウェンディおばさんの肩を叩く。

それにしても、トリーシャは大人になった。

雰囲気も話し方も昔のやんちゃな女の子じゃない。

……胸のほうもかなり大人になっている。


「同棲は、トリーシャがアルフォンスくんのことが好きってだけじゃないの。アルフォンスくんなら、トリーシャを安心して預けられると思って。子どもの頃からトリーシャの面倒を見てくれてるから」


なるほど。

トリーシャは俺のことが好きだし、ウェンディおばさんは一人になったトリーシャをよく知っている俺に預けられる。まさに一石二鳥というわけだ。


「トリーシャは寂しがり屋で甘えんぼうだから、一人にするのが心配なのよ」

「ママ!あたしそんなじゃないから!!」


寂しがり屋で甘えんぼう……今もそうなのか。

そこは昔から変わっていないようで、変な話だが少し嬉しい。

よく夜中にトイレについて行ってあげた。


「アルくん!笑わないで!!」

「あ、ごめん……」


顔を真っ赤にして怒っている。

か、かわいいな……


「結婚するかどうかは置いても、まずはトリーシャの保護者として一緒に住んでくれないかな?トリーシャを王都に一人にするのは不安だから……お願い!」

「アルくん、よろしくお願いします!」


トリーシャとウィンディおばさんが頭を下げた。

これはもう、断れないな……


「俺なんかでよければ……」

「やったあああ!!」


トリーシャが俺に抱きついた。

むにゅうっと、成長した豊かな胸が俺の顔に押し当たる。

これは男にとって、危険な胸だぜ……

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