第34話 最後の戦い 前


「それじゃ俺達は行くから後で追いかけてきてくれよ」


「解った…それで悪いが…」


「解った金だよな?金貨30枚(約300万)置いて行くよ」


「もう少し、何とかならないか?」


まぁお金に関しては幾らでも教会が口座に入れてくれるから、幾らでも問題はない。


だが、あくまでもこれはガイアには内緒の話だ。


一応、建前上は俺が出した事になっている。


「解ったよ…金貨100枚置いて行くから、余り無駄使いしないでくれよ」


「解った」


三人はあの事件の後からガイアに会おうとしない。


あの状況で『会いたい』そう思う人間はそうは居ないだろう。


「それじゃ俺達は明日にはこの街から出て北の魔王城を目指すからな、所々冒険者ギルドに言伝を頼んで置くから、立ち寄ってくれ」


「解ったよ」


しかし覇気が全くないな。


これも薬の影響か?




◆◆◆


俺は教会からの話を元に北に歩みを進めることを提案した。


「どうして、そこを目指すの?」


「そこに何があると言うんだ」


「どうして」


そこには目当ての相手が居る。


それが、四天王の1人スカルだ。


此奴の特徴は『数の理』で戦う所だ。


つまり、此奴単体は強くない。


もし、倒せそうなら倒して、最後の花道を飾っても良いし、勝てないなら撤退。


そして引退すれば良い。


スカルの部下はそんなに強くない。


だから、負けた場合も余力を残しておけば逃げられる。


つまり『逃げる事が可能な』都合の良い幹部だ。


「そこには四天王の一人冥界王スカルが居る…そいつが目当てだ」


「冥界王ですって…四天王?!」


「四天王と戦う!今の私達がそんな事したら、本当に死ぬぞ、ヤバいよ」


「何か策があるんでしょう?リヒトが何も考えてない訳ないじゃない?そうよね!」


「そこで、俺は運命を賭けるつもりだ! この一戦で全てを終わらせる…あらゆる物を犠牲にしてスカルの首を取りに行く…あとは結果任せだ」


「どう言う事なの?」


「意味が良く解らないんだけど」


「それはどんな策なの?」


「簡単だよ! スカルが使う死霊は動きが鈍く、攻撃力が弱い、だから、どうにかして倒せるなら卑怯な方法も含んで倒す…勝てそうも無いなら逃げて終わりだよ!」


「それで問題にならないの?」


「不味く無いか?」


「それの何処が策なのかな?」


「勝てれば、四天王を撃破した代償に大怪我で引退。負ければ善戦虚しく引退…どっちに転んでも問題なく引退できると思う。その後の生活がどうなるかの差だよ!『四天王に挑んだ』その実績があれば、最悪負けて引退でもだれも文句は言えないだろう? 過去は兎も角、今現在四天王クラスの魔族には誰も勝利してないんだからな…特にスカルは数の暴力で過去には勇者を葬った事もあるという話だ」


「待って、まだ私やリタは良いけどエルザは足が悪いから逃げられないわ」


「すまない…」


「そうよ、どうするの」


何を言っているんだろう?


俺は『三人を戦いの場』に立たせるつもりは無い。


折角、愛して貰ったのに死なれたら溜まったもんじゃない。


だから、これは俺1人でやる。


「戦うのは俺1人でやるよ! 三人はそうだな、俺が戦っている間、近くの村に退避していてくれ…身元を偽ってな」


「リヒト1人でやるの?!危ないよ…どうして?」


「私が足を怪我したせいか?すまない…」


「確かに、私もマリアもエルザも戦えないものね…ごめんなさい」



「謝ることは無いよ…寧ろ五体満足で引退させてあげられなくてすまない」


俺は只の転生者だ。


物語の主人公の様なチートは無い。


勇者のように凄い才能、能力も無い。


だが、それでも守りたい者がある。


『他を犠牲にしても守りたい』


俺の能力じゃ守れない。


魔王、魔族からも…


だから、体を犠牲にした。


大切な彼女達の体をだ…


俺にとって最大の敵は魔王でも魔族でも無い。


それは…人間だ。


楽しく暮し、俺の幼馴染に過酷な物をしいた人間だ。


だから、犠牲になって貰う事にする。


只の人間の俺が魔族の四天王と戦う為の下駄になって貰う。


それで人類の敵の一角が崩れるんだ…文句ないよな。


「「「リヒト」」」


三人を守る為なら…俺は外道になる。


「任せておけ」


優しい彼女達に悟られないように、俺は笑顔を作った。



※この話もいよいよクライマックス。

 あと数話で終わる予定です。






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