第15話 誘う
ガイアからあっさりと許しが出たから、後は俺の頑張りだ。
高級車の代わりは白馬の馬車で良いだろう。
レストランはちょっと高級なレストランでドレスコードが無い店を予約して、念の為個室を用意…プレゼントはこの間の物で良いだろう。
ネックレスだから丁度よい筈だ。
勇者パーティは旅から旅、そのせいもあってオシャレにも余り気を使っていられない。
マリア達の年齢なら宝石箱の一つ位裕福な平民だって持っている筈だが…それもない。
案外不憫なのかも知れない。
この辺りもおいおい考えるとして、取り合えず今夜は豪華なディナーでも堪能して貰おう。
馬車とレストラン…予約して帰るか。
◆◆◆
トントントン
「リヒト…どうしたの?」
「なにかようかな?」
「どうかしたのか?」
「いや、花でも活けようかと思って持ってきたんだ、上がらせてもらうね」
返事を待たずにそのまま入っていく。
幼馴染だし、ガイアも含みほとんどの世話を俺がしていたんだから少し可笑しいがいつもの光景だ。
「お花?!そんなの今までしてくれた事ないじゃない? その…どうしたのよ…あのさっき話した事と関係あるの…」
「私たちがガイアと恋仲なのは知っていると言っていたよね…それなのにどうしたのよ…」
「気持ちはうれしいけど困る」
恋愛というのは情報戦でもある…この辺りで1~2枚手札を切っても良いかも知れない。
「知っているよ…それにもう俺たちの別れは近い…そして別れた時がきっと一生の別れになる。だからせめてその時まで『大好きな幼馴染』と一緒に楽しく過ごしたいだけだから、余り気にしないで良いよ」
さぁここからだ。
「一生の別れ? リヒト、私は別れた後もガイアと正式に結ばれた後も友達をやめようなんて思わないわ!一生の別れなんかじゃないわよ」
地味に心に刺さるな。
「そうそう。リヒトが幼馴染なのも友達なのも変わらないよ」
「そんな事、考えていたのか?私がそんな薄情な人間に思えるのか?」
やっぱり、余り将来の事迄考えて無かったんだな。
これなら幾らでもつけこめる。
「嫌な事から言うよ! 魔王と戦い負けた時…ガイアを含む4人は死んでしまうからもう会えない」
俺の考えでは確かに4人は才能はあるが…恐らくは勝てない気がする。
『努力』それが桁違いに足りない。
「リヒト…最低…」
「確かにそうだけど…それを言うの…」
「…それで」
かなり暗くなり少し怒っているな。
「嫌な方から先に言ったんだ! 悪いな…それじゃ勝った時だ…魔王に勝てば恐らく褒美としてガイアは最低でも貴族、恐らくは伯爵以上の地位が貰える。そして貴族の子女、場合によっては王女との婚姻が待っている…今の王国には王子は居ない。そう考えたら王配になるかも知れない。貴族とその側室…王配とその側室、幾らS級とはいえ平民の俺がもう皆になんて会えるわけないだろう?」
「そうね…ごめんね、私リヒトの状況を考えてなかったわ…そういう事ならお別れまで仲良くして過ごすのも良いかもね…ごめん」
「…」
「そうだな、私はどうも状況を理解できていなかったようだ!言われてみて解ったよ…悪かったね」
「謝る必要はないよ!普通はそんな先まで考えないからね…それで今日の夕食なんだけど、ガイアも今回は接待でかなり楽しんでいるだろうから、少し豪華な所を予定しているんだけど、どうかな?」
「豪華な所ね…いいわ、楽しみにしているわ」
「…そうね」
「豪華なご飯か、楽しみだ!」
「それじゃ、夕方に迎えにくるから、外食に出かける準備しておいてくれ」
「解ったわ」
「…うん」
「了解」
約束も取り付けたし、どうやらリタは気が付いたのかもな。
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