第11話 ガイアって良いな


ハァ~気が重い。


確かに最高の初体験には違わないよ…


そりゃ最高級娼館の最高の娼婦でガイア憧れのエルフ。


それが童貞喪失初体験、狂うのは解らなくない。


だが度があるだろう。


まさか一発で娼館住まいになるとは思わなかった。


普通に考えたら一応勇者パーティだから魔王城目指して『旅しなくちゃいけない』一箇所に長く留まる事は出来ない。


困った。


まさか1週間超えたら『延長』とか言わないよな。


教会にお伺いをたてた方が良いか。


◆◆◆


『おや、また勇者様の相談ですか? 初めての相談がローアンだったので少し寂しかったのですが…何でも言って下さい』


『実は…』


俺は事の次第をロマーニ教皇様に話した。


『そうですね、それは勇者様の思うままにしてあげて下さい。場合によっては『教会からの頼まれごと』を1週間位する事になったようだ。これは『私からの頼み事なので俺も知らない』というのは如何ですか? これならリヒト殿も困らないでしょう』


勇者絶対主義、凄いな。


教皇が勇者の娼館通いの手伝いまでするなんて…最早何でもありだな。


『宜しいのですか?』


『はい、もし「期間を延長したい」そう勇者様が言われるのであれば『常識の範囲』で伸ばして頂いても構いませんよ、その辺りの事はリヒト殿にお任せ致します』


マジか…


『常識の範囲っていうのはどの位でしょうか?』


『そうですね…3か月位なら問題は無いですね』


嘘だろう…確かに急いでも仕方が無い旅だが。


形上は『救世の旅』なのに、そこ迄遅らせても良いなんて異常だ。


『本当に宜しいのですか?』


『大丈夫です! 聖女や賢者、剣聖でも中央教会には手紙でしか連絡は取れませんし、事実上私達とダイレクトに連絡をとれるのはリヒト殿だけですから…ばれにくいでしょう』


『いや、そちらじゃ無くて』


『期間の事ですか? 教皇の私が許可したのですから文句は誰にも言わせません』


『そうですか…』


『ええっ…それと今回のリヒト様の手柄として例のお金から金貨15枚(150万円)差し上げましょう…これからも勇者様の『影の従者』として頑張って下さい』


俺、頑張ってきたのに今迄1度も慰労金なんて貰った事無いぞ。


それに『影の従者』ってなんだ。


『影の従者ってなんでしょうか?』


『ローアンを含むナーロウ派で考えました。勇者の望みを叶える特別な従者です。力になりますから、これからも精進して下さいね』


俺はそんなのになりたくない。


俺が返事に困っていると…


『それでは勇者様を頼みましたよ! リヒト殿』


『あっ』

そのまま通信が切れてしまった。


しかし、本当にぶれないな。


良く注意しなくてはいけないのは彼らが好きなのは『勇者』だ。


恐らく彼等にはガイアという考えは全くない。


その証拠に今迄の会話で『勇者様』というがガイアの名前は出て来ない。


彼等が愛しているのは個人ではなく『勇者というジョブ』を持つ人間だ。


尤もジョブが失われた事は無いから『死ぬまで安全』と言える。


まぁ、今回の通信で、全部教会のせいに出来るので安心といえば安心だ。


◆◆◆


「ガイアが1週間居ないのですか」


「だけど、随分急な話だよね、連絡位してくれても良いのに」


「危ない任務じゃないと良いな」


折角、頑張って豪華な朝食を作ったのにこれだ。


自分達の恋人とも言えるガイアが1週間居なくなるんだ、まぁこうなっても可笑しくない。


心配そうな顔をしているが、肝心の意中の相手は今頃、他の女相手に腰を振っている最中だ。


さけど、このままじゃ少し可哀そうだな。


「危ない事は一切無くて、ガイアにとってはご褒美に近い話らしいよ! 話こそ急だけど、接待に近い内容だと言っていた」


俺が教皇様や大司教との直接のパイプがあるのは勇者パーティの誰も知らない。


勿論、通信水晶の存在も同じだ。


今回はガイアにも任されているし、教会も黙認しているからこれで問題は無い筈だ。


「そう良かった…危ない単独任務とかだと思って心配しちゃったわ」


「うん、それなら安心だね」


「良かった…本当に」


ガイアって良いな。


こんなに心配して貰えるんだから。


だけど、今頃ガイアは…まぁ今は良い。







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