第27話:誇誉愛の実力 1
誇誉愛は横目で柃が入っていった扉に入っていく姿を見ていた。
扉の先にあった光。どうやら、扉へ入ると自動的に別の空間に飛ばされるような仕様となっているようだ。誇誉愛は以前、同じような経験をしていた。
別空間がどうなっているのだろうか。もしかすると、想像を絶する敵がいるかもしれないし、敵の数が異常かもしれない。
早めに対処したほうが良さそうね。誇誉愛は目の前にいる白色の仮面の男に目をやった。
「展開っ!」
誇誉愛はいつものごとく今いる空間に灰色の霊気を展開する。
手加減はしない。持った竹刀を両手で強く握り締めると白色の鬼面に向けて素早く飛んでいく。
まずは一刀。後ろに引いた竹刀を一気に振り払う。
白い鬼面は誇誉愛の振り払った竹刀に向けて手をかざす。手の平から白い霊気を放出する。竹刀は霊気に押し留められる。それだけではなく、押し出された霊気はそのままレーザー光線となり、誇誉愛を巻き込んで発射して行く。
誇誉愛は地面に突き当たる直前でレーザー光線を跳ね除け、空高く飛び上がる。
そのまま体制を整えて地面へと着地しようとした。だが、それよりも早く白色の鬼面が誇誉愛の前につく。
拳を振り上げ、誇誉愛に向けて一発食らわせる。誇誉愛は咄嗟に竹刀を間に挟み、防御する。だが、白色の鬼面の拳の強さに圧倒され、扉に体をぶつける。幸い、展開された霊気によって衝撃を軽減することはできた。
「お返しっ!」
誇誉愛は竹刀を上にかざすと振り下げ、白色の鬼面へと斬撃を飛ばす。
鬼面は避け切ることはできず、体に切り傷がつけられる。誇誉愛は地面へと着地し白色の鬼面の方を向いた。
「今のは序の口でしょ。この程度のやりとりで切り傷をつけられるなんてまだまだね」
「ふっ。傷をつけられただけで全体としてのダメージは少ない。それにしても、このフィールドでは戦いにくいな」
黒いマントから手を出すと白色の霊気を手のひらに浮かべる。そのまま地面へと霊気を叩きつけると、空間全体へと霊気は侵食して行く。
先ほどの誇誉愛の攻撃で空間を操られるのが、不利なことであるのに気づいたみたいだ。
空間への霊気展開は、空間に傷がつかないようにする役目とともに自分の戦いを有利に進める効果があった。自分が壁にぶち当たる際のダメージ軽減、相手が壁にぶち当たる際のダメージ増加をすることができる。
それを今のやりとりですぐに察知し、打ち消してくるあたり、才能はずば抜けているようだ。ただ、最初からそれに対処できなかったということは経験は浅い。ならば、誇誉愛に倒せない相手でないことはわかった。
「少しは楽しませてくれそうね。なら」
誇誉愛は竹刀を納刀するように後ろへと下げて行く。瞳を閉じ、何かを念じるように意識を研ぎ澄ませる。
白色の仮面はこれみよがしに誇誉愛へと攻撃を仕掛ける。
地を大きく踏みつけ、誇誉愛との距離を一気に縮める。
誇誉愛は白色の鬼面の気配を感じとると、開眼させ、竹刀を抜いた。
「等活地獄(とうかつじごく)」
一瞬にして、白色の鬼面の背後につく誇誉愛。白色の木面はそれに気づくことなく、気づいた時には黒いマントは切り刻まれており、大量の血が辺りに散開する。
最後に白色の鬼面に一筋の線が入ると、仮面が割れる。
白のトゲトゲした髪をはやした髭面の男が顔を現した。
男は倒れることはなく、その場にとどまり、息を整えている。
「今ので、倒れないのは中々のものね。でも、残念ながら勝負ありよ。面が見えたらお終い」
鬼面の中身さえ見えてしまえば、誇誉愛の視界を通して男の情報を割り出すことができる。後はもう現実世界で居場所を突き止め、逮捕まで持ち込めば任務は完了する。
「はあはあ、ふっふっふ。先の戦いはまったく持って本気を出してなかったみたいだな」
「挨拶程度よ。まあ、今もそんなに本気は出してないけど」
「そうか。ならば、最後に貴様の本気を見てみたいものだな」
そう言うと、白髪の男は自身の霊気を極限まで高めて行く。抑えきれなくなった霊気は外へと放出して行く。それが一定量を超えると爆発を起こすように一気に発散した。
「リミット・オーバー。モード、バーサーカー」
白色の霊気が赤く染まっていく。
誇誉愛は大きな霊気の発散を竹刀を盾に受け止める。霊力の力は先ほどと雲泥の差があった。体重を前へと傾け、全体で霊気を押し返していく。
少しでも気を緩めれば、こちらに向く霊気に飲み込まれる。
誇誉愛が霊気と対峙している間に、白髪の男は体制を整え、彼女の方へと向いた。そのまま拳を後ろへと振りかぶる。
まずい。
誇誉愛は危険を察知し、霊気を放出して応戦するが、彼の霊気と誇誉愛の霊気はほぼ互角であり、押し返すことはできないでいた。
「喰らえっ!」
防御する誇誉愛に対し、振り払われた拳が彼の霊力をさらに強めて行く。
誇誉愛は霊力負けをすると、遠くへと吹き飛ばされる。白髪の男の霊力は凄まじく、展開した誇誉愛の霊気をも跳ね除ける。階段はおろか、建物全体が崩れ去っていく。二人は崩壊した建物の瓦礫の餌食となった。
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