第17話奴隷に仮名を付けました
セシリアにジャラリと魔石?と宝石?をのせられたデュバインは、自分の手の平を見て硬直する。
側で見ていたカレンとエルザが、思わず両腕でバッテンにする。
えーと……その……やっぱり……足りないってコトよねぇ………
いや、まだまだ、魔石?と宝石?は……いっぱいあるから………
と、セシリアが再び、フード付きマントの内側をごそごそしだしたコトにハッとして、バウが首を振って言う。
「いやいやいやいや……多過ぎるだろう………なぁ………」
そのバウの声でハッとしたデュバインもコクコクして首を振る。
「……あ……いや…多いから……つーか多過ぎだから………」
言葉が思うように出ない2人に、小首を傾げたセシリアは、ちょっと考える。
あぁ~ん………金額のレートが全然わからないから…………
カレンとエルザのバッテンは、そういうコトなのぉ………
だからって、一度出したモノ回収する気なんて無いし……んぅ~………
………と、そうだ………良いコトを思い付いたわ………
奴隷ゲットしたら別れようと思ったけど………もうちょっと良いよね………
この奴隷の身体の持ち主と交換された魔獣?の代金ってコトにでもすれば………
「なら………従魔の販売区域で……従魔…探すってことで…………」
該当の従魔探しと、買い取り値段ってことで、手渡した魔石?と宝石?の返品をさりげなく回避する。
セシリアが返品を受け付けないコトを見て取り、4人はちょっと溜め息を吐きながら頷く。
「そんじゃ………これから探しに行く?」
エルザの言葉に、カレンが首を振る。
「まず、その前にその奴隷の装備を整えて………そしたら、ご飯を食べましょう」
言われて、全員のお腹がくぅぅ~っと小さくなる。
「あははは………なんかバタバタして、昼メシ忘れていたわ」
バウの言葉に、こっそりと新しい古代遺跡の『ダンジョン』に潜り込んだ4人は、肩を竦める。
そんなやり取りを見て、首を傾げたセシリアは、自分の隣りにしゃがみ込み、見上げている真紅の長髪の細マッチョの頭をナデナデしながら考えていた。
………えぇーとぉ…そう言えば、今って何時なのかしら?………
時間の感覚がおかしくなっているみたいで、何時がわからないわねぇ………
王国歴より………大陸歴のが良いわよねぇ………この大陸の名前って………
そうそう……たしかアシュトン大陸だったはず……滅びしアシュトン神聖国………
近年、なんとか解読された古文書に載っいた………私達の住む大陸名………
神子と呼ばれる者が居た時代を代表して、そう呼ばれていたはず………
「えーと……その…今っ………何時なのでしょうか?……そのアシュトン歴で……」
時空間のズレも考慮して聞けば、デュバインが首を傾げて言う。
「リアさんが何時、転移魔法陣で跳ばされたかわからないし…アシュトン歴ってやつでは、わからないけど………今は、ロマリス王国で………ちょうど500年だっけか?」
話しをふられたエルザが頷いて言う。
「うん…確か前の王国がクーデターで滅亡して、建国から…ちょうど500年………」
「先月の7月が建国記念日だったので大変だったわねぇ~………」
「ほぉ~んと………見栄っぱりだからさぁ~………」
「色々な他国の王族とか呼んで、盛大に建国500年祭をしたセイで、王都の方はもっと大変だったらしいぜ」
「そのお陰で、冒険者ギルドも忙しくて、新しい『ダンジョン』も未探索なんだよね」
「まっ…だからまだ、正式な『ダンジョン』の名前もないんだよな」
「そっ…危険度もわからないから、出入口も封鎖されてないし………」
「だから、物は試しで、入った者勝ちさぁ………」
「まず、1階部分なら、俺達みたいな低ランクでも大丈夫………」
デュバインと頷くエルザ達の言葉で、セシリアは内心で頷く。
あははは………そう言えば、建国祭に出席する為に不在だったんだっけ………
近場の隣国のひとつってコトで、王と王妃と神官長で出席だったのよねぇ………
………って、そう言えば、魔法長は?………あれ?息子は攻略対象?
いやいや………もう、そんなコトどうでも良いことよねぇ………
そう言えば、この異世界の単位も日本の単位とほぼ変わらなかったわねぇ………
年とか時間も……助かるわねぇ……覚えなおさなくて良いんだもの………
前世の記憶が混じったセイで、セシリアとしての記憶が混乱中だから………
にしても、大陸名は乙女ゲームで出て来たモノなのね………なるほど………
「だから、ロマリス王国の歴で500年よ……今日は8月の2日ね」
ふむ………卒業パーティーが7月の29日でしたから…………
パーティー会場で意識を失ってから馬車で運ばれて…フフフフ………
良かったわぁ……妙な時間のズレはなさそうねぇ………
でも、どうりで喉は渇いているしお腹が空いているはずね………
「んで、もう4時だわ……流石にお腹すいたわねぇ~………」
「取り敢えず、その奴隷の装備を整えてご飯食べましょう」
「「「さんせぇ~……」」」
その言葉に、セシリアも頷く、勿論喋れずとも、言葉を理解している、奴隷の中のソレもコクコクと頷く。
「そんじゃ、量もあって安い……食堂『ごっつもり』に行こうぜ」
そうして、奴隷市区域から歓楽街の端にある安宿や酒場へと移動するコトにした。
その際に、奴隷商が売買終了と共に逃げてしまった為、買った奴隷の名前がわからないので、仮の名前として、真紅の髪の色から、グレンと呼ぶことに決めた。
「それじゃ……グレン…行こう………」
買われる前の暴れが嘘のように、真紅の長髪の男、仮名グレンはセシリアの後に付いて行く。
食堂『ごっつもり』に行く道すがら、道具屋が有ったので、そこでグレンの服を調達した。
身体に合いそうな服をグレンに着せた後、武器防具は後と、さっさと食堂『ごっつもり』へと直行した。
勿論、服を着せる前に、セシリアの生活魔法で、グレンの汚れきった身体を綺麗にして着せたコトは言うまでもない。
ちなみに、ロマリス王国は幾重もの防護壁が張られていたりする。
中心より少し東よりに王城があり、それを守る高い城壁がそびえ立っていた。
その外には、諸外国に有名なべらぼうなお金と地位が無ければ入れない、高い逃亡防止用の壁に囲まれた遊廓が存在していた。
そして、それぞれ、外に向かって、上級貴族が住む区域があり、次の防護壁に中級貴族の区域があり、また、防護壁があり下級貴族区域。
その外には、更に裕福階級の区域、一般市民の区域、下級市民の区域に、貧民街となっていた。
ちなみに、すべての土地は、ロマリス王国の王族もモノとされていた。
あくまでも、借りて住んでいるというカタチだった。
勿論、貧民街の民とて、ロマリス王国の大事な資産なので、勝手に殺したりすると、場合によっては、重罪になったりするコトも、しばしばあるのだ。
余談だが、貧民街の生まれでも、容姿端麗ならば、遊廓に引っ張って行かれるコトがあるので、勝手な売買も禁止されていた。
諸外国の外交官や王侯貴族の欲を満たし、お金を落としてくれるので、遊廓に連れて行かれた者は、案外、幸せだったりする。
そして、遊廓に落とされる大金を元に、ロマリス王国の王族は、今の防護壁の更に外側に新たな防護壁を建築することを目論んでいた。
そこまでロマリス王国の王族が下々までゆるぅーくだが管理しているのは、クーデターによって滅亡した前王国の持つ技術と財宝を盗られない為だったりする。
ようするに、現在のロマリス王国は、滅んだ前王国の上に立っているのである。
現在、前王国の7割を防護壁で囲んだ状態だったりする。
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