第20話 筆記試験を受けるヒカル
「ヒカル。早くしないと遅れちゃうよ。」
「わかってるよ。ちょっと待って。」
王都に来てからヒカルとメイリーンは、図書館での勉強とギルドの依頼を平行して行い、実力とお金を着実に伸ばして行った。
ヒカルは入学試験に落ちて魔法学校に入れなかったら死亡するので、必死に勉強した。ヒカルが合格しメイリーンが落ちたら一緒に魔法学校に行く事ができないので、メイリーンの必死に勉強した。
目標がある事で勉強もとても捗った。しかも王都の図書館には、過去の魔法学校の入学試験問題集も置いてあった。最後に解いた過去問集ではヒカルもメイリーンも8割以上の正解を上げる事が出来たので、二人とも試験に自信を持っていた。
「早く早く。遅刻して入学できないなんて嫌だよ。」
「そんな急がなくても大丈夫だよ。まだ2時間もあるじゃん。」
「もう。行くまでに何があるかわからないでしょ。」
(いやいやメイリさんや。魔法学校までは歩いて20分で着くじゃん。道中に何かがあっても余裕でしょ。1時間40分前についてどうするの?30分前とかならわかるけどさすがに早すぎないですか?)
準備を終えたヒカルとメイリーンはアルカディア魔法学校に向かった。魔法学校に着くと、すでに受験者がちらほらいた。
「ほらヒカル。全然早すぎじゃなかったでしょ。試験受ける人けっこういるじゃん。」
「本当だな。」
(なんでみんなこんな早いんだ。そんなに人気なのか魔法学校って・・・。まだ1時間40分前だよ。試験始まるまで何するんだよ・・・ってまあ最後の追い込みをするんだろうけど。)
「早く行きましょ。」
(よくよく考えれば早めに来たのは正解か。ここって貴族とかも来るもんな。人が少ない内に来た方が変に絡まれたりしないもんな。さすがに貴族がこんなに早く来るとは思えないし。)
ヒカルとメイリーンは受付で名前を伝え、受験票を受け取った。試験の申込はエベレス辺境伯がしてくれていた。ヒカルは330番、メイリは329番だった。
「そう言えばスクルドも来てるんだよな?会えるかな?」
「さっき受付で聞いたけど500人ぐらい試験受ける人がいるみたいだよ。運がよかったら会えるんじゃない?」
(折角ヒカルと2人で試験受けに来たのにスクルドに邪魔されないようにしないと・・・)
「500人か・・・たしか合格するのってAクラスからEクラスで30名だったよな。って事は150人合格するのか。」
(倍率3倍ちょっとか・・・意外にハードルが高いな。)
「一緒にAクラスに入るんだからね。つまらないミスしちゃダメだよ。」
「わかってるよメイリ。」
(そりゃこの試験に俺の生死が関わってるんだから必死にもなるよ。あれっそう言えばミッションって試験に合格したらクリアになるのかな?それともやっぱり入学と同時にクリアになるのかな?俺としては合格が決まったらクリアになればありがたいんだけど・・・)
受験票を受け取ったヒカルとメイリは筆記試験の会場に向かった。筆記試験会場は100名程入る大きな会場だった。受験番号301番から400番と書かれた会場に入り、机に330番と書かれた紙の置かれた席につく。329番のメイリーンはヒカルの前の席だ。
「まだ全然席埋まってないね。」
「試験が始まるまでのこの時間を有効に使わないと、忘れる心配がないから詰め込まないとね。ヒカルもそうでしょ。」
「まあ・・・」
(参加者がドンドン入ってくるな。この中に勇者はいるんだろうか?勇者っていうぐらいだから平民でイケメンさわやか野郎だよな?ああ勇者の名前も、どんな姿かも教えてくれてないって絶対ネメシス様のミスだよな~。そもそもアルカディアの魔法学校に来るかどうかもわからないし・・・)
アルカディア魔法学校の筆記試験は、現代学、歴史学、算学、魔法学、法律学の5つの分野で行われる。その後、実技試験だ。実技試験は魔法学校なので、もちろん魔法を使った試験だ。
魔力量を測る、魔力測定と、魔法の技術を測る的当ての2つの実技試験だ。学科と実技の総合で合格者が決まるのだ。定員数150名とは言ったが、一定水準以上の者が多いと定員以上の合格者が出る事もあるし、逆ももちろんある。
ヒカルは、入ってくる受験者を見ながら試験の開始を待った。何名か気になる人がいたが、合格するかどうかもわからないので、見るだけだ。
試験が始まり、現代学、歴史学、算学を終えた。ヒカルとメイリーンは宿で用意してもらったサンドイッチを食べながら午前の試験内容を話し合った。
「午前中の試験は算学以外は簡単だったわ。あれなら8割は合ってると思うわ。ヒカルはどうだった?」
「俺は算学は問題無し。現代学と歴史学もだいたいはわかったよ。まあ多分大丈夫だと思うよ。」
試験の合格基準は5割だ。5割以上正解できれば入学できる。だが、ヒカルとメイリーンはただの合格ではなく、Aクラスでの合格を目標にしていた。Aクラスは8割以上の正解と上位30名に入らなければ行く事ができないエリートクラスだ。
昼からの魔法学、法律学を無難にこなしたヒカルとメイリーン。メイリーンは特に魔法学が得意だったので、学科試験終了後のメイリーンの表情はとても明るかった。逆にヒカルは得意なのは算学だけだったが、他の科目も不得意ではないので、合格基準は満たしたと安堵していた。
筆記試験が終わり、ヒカルとメイリーンは実技試験の会場に移動したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます