ラブコメ世界に転生したので、ラブコメ配信者になります。定番ネタに翻弄された結果、予想外にバズってしまった件
ひつじ
第1話
目が覚めるとそこは真っ白な部屋だった。
「あなたは転生することになりました。転生特典を授けますので望みを」
趣味の悪いアラームをかけたかな、と眠気まなこをこすってスマホを探す。
ない。というか、布団もベッドも何もないんだけど。そもそも何この部屋?
ないない尽くしだけど、意識は鮮明にあるし、感覚もある。夢とかではなさそう。
仕方ない。現実逃避はやめて、非現実と向き合うことにしよう。
まず、ずっと俺を見下ろしている女神みたいな見た目の人からだな。
俺は立ち上がり口を開いた。
「あの、貴方は誰ですか?」
「私は女神です。貴方を転生させるために、ここにきました」
「転生……ですか?」
「ええ。本来、死ぬ予定ではなかった貴方は、通り魔に刺されて亡くなってしまいました。そういう方は、別の世界で新たな生を与えるということになっています」
「なるほど。死んでしまったことは残念ですが、仕方のないことですね。女神といえど、ヒューマンエラーは責めるべきではないでしょう」
「私のミスではありません。下界の愚かな人間が悪いのです」
「女神名乗っていい言葉使いじゃないですね」
「怒ってもよろしいですか?」
「すみません。ちょっとテンション上がって、ふざけました」
テンションが上がって。この言葉は嘘じゃない。何せ俺は転生に憧れていたのだ。いや正確にいえば、転生ではなく、その先の異世界ファンタジーのダンジョン配信者にだ。
ダンジョン配信者とは、ダンジョンに潜る様子を配信し、ちやほやされたり、褒められたりする職業だ。
当然、憧れるのには理由がある。
俺には、ちやほやされたり、褒められたりすると、恥ずかしくてむすっとしてしまう悪癖がある。
そのせいで周囲の人は気を遣って褒めてくれず、ちやほやされたい、と日々悶々としていた。
そんなある日。ダンジョン配信者モノの小説に触れて、俺は閃いた。
「これならチヤホヤされても、画面越しだから恥ずかしがる姿を見せずにすむ! 存分に褒めてもらえる!」
と。
そういうわけでダンジョン配信者に惹かれ、憧れていたのだった。
「転生を受け入れてもらえていたようで、何よりです。それでは、転生特典を授けますので望みをどうぞ」
転生特典か、定番のやつだな。
何があるかはわからないけれど、ダンジョン配信者になりたい俺の望みは決まっている。
「自由にどこでも配信できる能力をください!」
「かしこまりました。となると、近いものはこれですね」
女神様は端末を取り出して、何やら操作し始めた。
意外にハイテク。というか、片足に体重預けて弄るな。ギャルか。
「はい。全ての手続きを終えました。それではよい異世界ライフを」
女神様がそう言うと、俺の手脚が透明になり始めた。
「え、説明とかは……?」
「後日また伺います。今日はもう業務時間外なので」
「そんなあっさり……」
と言葉を残して、俺は異世界に転生した。
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