第9話
「判子は私のものです。」
誰が聞いてもこれしか答えない長平、世間はいつの間にか汚職事件の黒幕として彼を扱うようになった。ただし長平に金が流れた形跡は一切なく、幸いにも長平は司法の裁きを免れた。印鑑を押したのは自分ではないが、確かに印鑑は自分のものである。これは自分の過失であり、部下の監督不行き届きである。これが長平が考える責任の取り方であった。ようやく騒ぎが収まったころ、長平は職場を追われた。これだけの大騒ぎの後である。とても再就職は望めなかった。何もかもが長平の手から離れていき、気が付けば彼は妻子も失っていた。意地を通して手に入れたものは天涯孤独の我が身であった。
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