第11話 猿芝居
数日後、学校終わりの放課後に巧と街をぶらついていると晴の言っていた足首にアイラブ美由紀と入った男とその仲間であろう柄の悪い奴に肩を掴まれた。
振り向くと突然殴り飛ばされ、てめえが最近暴れ回ってるって言う生意気なくそ餓鬼かと怒鳴ってきた。巧は携帯を取り出し晴に連絡を取る。
「いったいなあ、お兄さん。突然は卑怯でしょ。僕みたいなくそ餓鬼相手にこんな大勢で。殺り合うなら、ちゃんと連絡くれないと」
いつものように相手の油断を誘う。
「兄貴、こいつじゃねえっすよ。こんな弱々しくないって噂っすよ」
作戦にまんまと引っかかりやがった。馬鹿なのか、こいつらは。
「じんじん、たっくん。お待たせ。まだ始まってない?」
晴が手を振りながらやってきた。
「やっぱり違うっすよ。こんな可愛い男の子が味方なわけないっすもん」
確かに晴は見かけは可愛くて弱々しい。だけど、見かけに騙されたら痛い目に遭う事を相手は知らない。
「おい、てめえ、どうなんだよ」
「何のことだかさっぱり、わからないなあ。全然、最近自分の憂さ晴らしで喧嘩売りまくってて、口が悪くて生意気な仁ってやつの事なんて僕、知らないなあ」
俺の喧嘩のやり方を二人は知っていたから見学している。
「そうか、仁って言うのか。そいつは何処に居んだよ」
「それよりお兄さん達、僕達と一緒に遊ぼうよ。そんな奴を相手にするより楽しいと思うよ」
俺がそう言うと柄の悪い男達はそれならこっちに来いよと俺達を誰も来ない路地裏に連れて行った。
「おい、くそ餓鬼。今なら財布を置いていくぐらいで許してやっても良い」
「やだなあ、そんな怖い顔しちゃって。眉間にしわ、寄ってるよ?」
俺の言葉に兄貴と呼ばれた入れ墨の入った男は持っていたバッドを俺の真横の壁に調子ぶっこいてんじゃねえぞと言って当てて威嚇してきた。
「ひ、ご、ごめんなさい。僕が悪かったです。ちょっと粋がってみたかっただけなんです。許して下さい。お金、あげますから許して下さいとでも言うと思ったかよ、この野郎」
兄貴の男の腹部に強く蹴りを入れた。その衝撃で男は倒れた。
「兄貴、大丈夫っすか。このくそ餓鬼、何してんだよ。おい、殺んぞ」
舎弟らしき人物がそう号令をかけると他の待機していた男数人が殴りかかってきた。
「おい、仁。てめえ、芝居が長過ぎなんだよ。いつまでやってんだ」
「良いじゃねえか。楽しかったし。どうせ殺るなら、楽しみも必要だろうが」
巧とそう話しながら喧嘩を続ける。三十分後、兄貴の舎弟達を倒し兄貴一人になった。
「お兄さん、一人でも殺るつもりかよ。俺は良いけど」
「くそ餓鬼が、覚えとけよ」
舎弟を置いて逃げていくその後ろ姿は負け犬そのものだった。
「は、覚えとけだって。今時そんな吐き台詞言う奴居るんだな。くそだな、死ね」
「さすが、傷一つしてないね。たっくんも強い。僕、見直しちゃった」
晴は余裕の笑みを浮かべてそう言った。
「はは、そりゃどうも。おい、仁。うちの親がお前に会ってみてえって言ってるんだけどどうするよ」
「んだよ、俺の事話したのかよ」
巧はまあ、友達のこと聞かれたから軽くなと答えた。
「今日は帰ってきてるからもしあれならうちに来いよ」
「めんど。けど、胸に入れ墨入ってるお前の父ちゃんにも会ってみてえし行ってやるよ。晴はこれからどうするんだ?」
晴は少し考えた後、久々に施設帰ろうかなと言った。
晴は更生施設を出た後、母親と暮らしたいと言ったが母親はそれを拒否した。だから市が運営する養護施設に入所させられていた。
「そうか。んじゃ、俺はそろそろ行くわ。巧、行くぞ」
「それじゃ晴、またな」
晴と別れて巧の家に向かう。
ー続くー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます