魔道士は11才の配信者(中二病を笑われ、親に売られた少女。スパチャを稼いですごい魔法無双)

フワフワソ

zero-0話 プロローグ


 これは私の自伝なんだ。書き手である私が何者か? っていうのはプロローグの最後のほうで説明するから、ひとまず置いておいて欲しい。


 始まりは二人の冒険者が死にかけているところからだ。


 二人の名はヴァルヴィンさんとゼロカさん。剣士と魔道士という二人組みバディパーティで、魔物討伐の依頼でその森に来ていた。


 後に聞いたやりとりを再現すると――。




「すまないな、ゼロカ。おれのせいでこんなことに……」


 剣士ヴァルヴィンさんは、相棒のゼロカさんに謝っていた。


「ハアハア、情報の読み間違いは誰にでもあるし、私の責任でもあるから。謝らないで」


 ゼロカさんは息を荒げ、ヴァルヴィンさんに背中を預ける。その手には魔道士の杖を掲げてた。


「いや、そういうことじゃないんだ。情報の読み間違いとかじゃ……」


 ヴァルヴィンさんは言いよどんでいた。


「じゃあどういうこと?」


 ゼロカさんが尋ねる。


 その時の二人の状況は最悪だった。


 一昼夜にわたる戦いで、魔力は既に尽きていた。


 討伐依頼書に書かれていた魔物の情報と、実際にいた魔物の情報が違っていたのだ。


 巨大蜘蛛が一匹という話だったのに、巨大蜘蛛を子蜘蛛としてボコボコ生み出す、巨大女王蜘蛛クイーンがいた。


 情報より遥かに強力な魔物に遭遇して、二人だけのパーティは今まさに全滅の危機に瀕していた。


 でも、それは誰に責任があるわけでもない。冒険者界隈では、情報違いによる不幸はよくあることなのだ。今回はたまたま巡り合わせが悪く、自分たちが不幸に出くわしただけ――。


 ゼロカさんはそういう運命論的なことを言いたいらしかった。


 しかし、ヴァルヴィンさんが言いたかったのは別だった。


「おれは、おまえのことが……」


 死地にはそぐわない話。いや、死地だからこそ伝えたい話。


 要するにヴァルヴィンさんはゼロカさんのことが好きだったのだ。


 銀色の髪をした美しい魔道士に、ずっと心を寄せていた。


 


 本当はゼロカさんは、前回の仕事で冒険者を引退しようとしていたのだ。


 でも、そうなると二人の関係はどうなるのか。


 もう二度と会えなくなるのかも知れない。


 人生の岐路が永遠に分かれてしまうのかも知れない。


 そんな不安に突き動かされ、ヴァルヴィンさんは、「あと一度だけ一緒に仕事をしないか?」と誘ったのだ。


 それが最悪の判断ミスになった。


 そばにいたいという浮ついた気持ちが、世界で最も大切な相手を死地に追いやることになってしまった。


 バキバキッッ! ガサガサガサッ……。


 灌木をへし折りながらやってくる巨大蜘蛛。


煙幕噴出呪文スモーク・ベルチ!」


 ゼロカさんの呪文詠唱とともに、魔道士の杖から黒煙の弾丸が飛び出して、宙を走る。


 ドッッ……!


 弾丸は巨大蜘蛛の複眼に命中し、噴き上がり、煙幕となって視界を奪う。


「今のうちにッ!」


 ゼロカさんが叫び、二人は森を走る。


 残された魔力では、巨大蜘蛛を倒す攻撃力を出すことは出来ない。


 できるのは、煙幕噴出呪文スモーク・ベルチで魔力を節約しながら森の中を逃げ惑うだけ――。


 今の二人の力では、巨大蜘蛛に囲まれた森を突破することは難しかった。


 だが――。


「……!?」


 後悔にさいなまされるヴァルヴィンさんの目に、不思議なものが映る。


 ダダダダダダダダッ!


 茂みの向こうを、少女が走っていた。


 ここは人も近寄らない森の奥地だった。時刻はもうじき夜を迎えようとしていて、足下は既に暗くなりかけている。


 そんな、あり得ない場所、あり得ない時刻に、無防備な村娘ふうの少女がいる。


 疲れすぎて幻でも見たのかとヴァルヴィンさんは思ったらしい。


 しかし、少女の声が耳に届く。


「うわあああああああああぁぁぁぁぁああああぁぁん!! みんなッ! グルなんだぁぁあああああ!!」


 少女は泣きわめきながら、森を走っていた。


 なぜ少女が泣いているのか、何をわめいているのか、なぜこんなところにいるのかは分からない。


 でも、彼女の存在は、死地からの突破口になる……!


 ヴァルヴィンさんはそう直感した。


 そしてその直感通り、二人を救うことになる。


 そう、その泣いている少女こそが私なんだ。


 私の名はチエリー・パンス。


 当時11才の、何の変哲もない村娘だ。


 畑仕事をすれば疲れて熱を出すほどの体力の持ち主だし、牛乳を飲むとお腹を壊すほど身体は丈夫だ。 


 そんな私がどうやって二人の冒険者を救ったのか――。


 先が気になるとは思うけど、まずは私が何で森の中を走ってたのか、ってところから始めなければなるまい。


 切っ掛けはものすごくしょーもない出来事だ。しかし、11才の私にとっては世界を揺るがす大事件だったんだ。


 そう思って、11才の気持ちで読んで欲しい――。





††† あとがき †††††††††††††††††††


 ここまで読んでくれてありがとう。


 私の話がちょっとでも気になったら――。


 フォロー、★評価、ハートの応援ボタン、なんでもいい、押してみて欲しい。


 そうすると、私がお話を書く筆が進む――。


 これから私が出会う世界の秘密を、ぜひ一緒に見届けてもらいたい。


 (★を押す用のページ)

 https://kakuyomu.jp/works/16817330654449666146/reviews


††††††††††††††††††††††††††††


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