第42話

 「よっしゃああああああああああ」


 先輩がめちゃくちゃ嬉しそうに飛び跳ねる。

 光神竜を倒し、俺たちはこぞって、光神竜ライドラの死体を漁り始める。


 「なんだ?これも使えるものなのか?光神竜ライドラの頭の骨は」

 

 頭蓋骨、爪、鱗、羽、両翼など使えそうなアイテムは全て取り尽くした。

  

 もう大丈夫か?

 

 ダックスさんがはしゃいでいる先輩を止めようとする。

 流石の先輩もダックスさんの言う事はしっかり聞いている。マーレンさんも先輩を止めようとしていたのに、


 「俺の言う事も少しは聞けよな、、、、」


 マーレンさんもこのチームの中では年上の方。実力で言えば、真ん中の方だが、努力量ならば先輩の次に日々鍛錬を怠らない真面目な人間だ。


 「ボスはまだ倒せていないのか?アルバード!助太刀に行こうか?」


「…………………」


「おい!アルバード反応しろ!」


 アルバードはダックスの応答に返事をしない。もしかして死んでしまったのか?いやあいつに限ってそれはないだろう。能力は隠密に長けているから1人で戦っていても、戦闘離脱出来るくらいに、優れている。そんな奴がAランクボス程度にやられる訳が無い!


 しかしその後も応答を試みるが、反応はない。本当にやられてしまったのか?

 そう思っていると、、、


「ポータルボスを討伐しました。ポータルが10分後閉鎖を開始します。」


「こちらアルバードです。生きてます。ボスは今、撃破完了した。それよりハンスさんとロンさんの応答がないですが?生きてますか?」


 あ、


 ここにいる全員の顔が青ざめる。そういえばさっきから2人の声が聞こえない。


「おい、ロン!ハンス!大丈夫か?」


 しかし返答が来る事はない。もう2人は何者かによって撃破されてしまっていたからだ。

 

「死んじゃてますね、じゃあ自分はボスも倒した事ですし先に帰らせてもらいますね、」

 

 と、安否不明のチームメイトをまるで赤の他人の様にしている。

 「ふざけんなよアルバードお前の自分勝手がこれ以上通ると思うなよ!お前はリューに拾われてここに来ていると言うのにお前はその恩を少しは返そうとも思わないのか?」


「なに言ってんだ?あんたバカなのか?ロンもハンスもリューさんではない。2人に俺は恩を貰ってない。そんな死んでる奴を助けに行くほど俺はお人好しじゃねえ」


「だからってこのチームの人が死んだかもわかんねーでこのポータルに見捨てられる。それがリューにとってどんだけ悲しいことかを考えろ!」


 2人の通話越しの口論に俺と先輩とマーレンさんはただ引き気味に見ているだけだった。


 「五月蝿いな!もういいよ。俺はこのクランを抜ける。もう1人で生きていけるくらいには金も稼げたし、これからも1人で稼いでいける。リューももう俺の人生に必要の無い存在だ。ガチャ」


 と言って、遠隔同調のマイクを地面に投げつけてぶっ壊した。


「おい!アルバードアルバードまだ話が、」


 明らかに頭より格段に冷静さを欠いたダックスさんがただ1人でずっとアルバードの名前を叫び続けている。

 もう通話はかれてるって言うのに、、、



「ダックスさん自分達だけでも2人を探しませんか?あいつはもう同じチームじゃない訳ですし、」


 マーレンさんは荒々しく取り乱してるダックスさんに普通に話しかける。

 おいおいとは思いつつもこう言うところがマーレンさんの頼りになるところだ。


「だか、、、」


「だがって何ですか?何か言いたい事でもあるんでしょうか?そんな取り乱した姿、リューさんに見せられませんよね?ダックスさんもアルバードの様に成り下がりたいんですか?」


 煽るように喋る。こんな事をしたら余計に暴れてしまうのではないかと俺は焦りを隠せていないが、先輩の方を見ると、首を振っていた。

 

 「安心しろ」とでも言っているかのように、、、、


「そ、そうだな俺が悪かった。ここにいる4人だけでも探そうか、」


「おーーっ!」


 先輩が元気に声をあげる。

 一同に活気が戻って来る。


 


 3分後


「なかなか見つかりませんね、、」


 先輩がもう根を上げている。おそらくだが、先輩も探すのは内心嫌なのだろう。

 ちなみに俺も嫌だった。それは面倒くさいのでは無くて、仲間の死体を見るなんて俺にはとても耐えれそうに無かったから。


すると─────


「これ、、、ハンスの手袋じゃないか?」


 ついに見つけた。しかしそれは生きている仲間では無かった。死体も無く手袋だけがあった。

 周りも探すも、片手袋以外には特に何も無かった。


「これで許してくれ、ロン、ハンス」


 マーレンさんがいつに無く大人びている。やはり身内の死ともなるとそう元気でいられなくなるのも無理はない。



「じゃあここも少し遠いですし、出口に向かいつつ探しましょ〜」


「あ、いつもに戻った。」


 安心する俺がいる。やっぱりマーレンさんはこっちでいる方がなんか親しみがある。


マーレンの声を聞いてダックスさんが腰を上げる。そしてマーレンさんの方に振り返る。


「逃げろ!マーレン!後ろ!」


「えっ?」

 ダックスさんが声を掛ける時にはもう遅かった。


「あああ、、、、、、、」


 俺がダックスさんの声でマーレンさんの方を振り返ると、

ちょうど、大型のモンスターに喰われたマーレンさんが俺の目に映った。


「君がフィル=フリートだね?」

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