第40話

「それじゃあいくか」

「よっしゃあぁぁ!!」

 ダックスさんの一声にクラン一同が元気を吹き返す。

ポータルに入ると、そこは過去に一度も見たことない住宅街の様なポータルだ。しかもトラスト区と同じ様な街並みが、広がっている。こんなのは初めてだった。少しこんな所で暴れてしまうとなると少し気が引けてしまうが、仕方のないことだ。

 「全然現れませんね。本当にAポータルですか?」

 ハンスさんがダックスさんに話しかけるが、

 「気を抜くなよ 一気に崩されるかもしれないからな」

 「うっ、はっはい」

 

 ハンスさん以外にも先輩、マーレンも返事をしている。この2人も全然現れないモンスターに余裕があったのだろう。そこで大人しい声でダックスさんが皆んなの雰囲気を引き締める。


 「出てきたぞ!ハイオークだ」

グオォォォッ

 斧を持った典型的なモンスターそれを俺たちは完璧な連携プレーによりノーダメージでハイオーク5体を撃破した。こんなに低レベルならあっさりクリアができそうだ。


 キィィィィィ

順調にモンスターを倒していく時間にも余裕があったこともあってか、全員行動で前に進んでいく。しかし


「俺とロンは2人でここを右に曲がって進もうと思います。俺たちもしっかり気を引き締めて行きます。危険に感じたら

すぐに遠隔同調で知らせるので、」

「そうか、じゃあ行ってこい。気をつけてな!」

「はい!」

「へい」

 ハンスさんが話を切り出してダックスさんが了承する。2人が右に曲がっていく。その2人の姿は、カッコ良かった。俺にはそんなことはできない。

 今日の俺は、いつになく不調だ。体の気分が悪いとかそんなのではない。


 それは俺の住んでいる街だからここで攻撃をして街が崩れてしまうのが怖いのか?

 それとも、まだ俺は変われてなかったのか?

 まだここには何か恐ろしい空気がする。

 それは俺にだけ感じ取れていた。


「あ、」

「どうした?アルバード!何があった?」

 この場に初めからおらず、1人単独行動を決め込んでいるアルバードが、ポータルに入り初めて喋る。


 本当にこいつは自己中な奴だ。俺も含め、誰もあいつの思考を理解できる奴はいない。今日初めて同じ任務を行なっているし。


「恐らく俺の所にボスがいます」

「何!?それはどこだ?俺たちもすぐに向かうぞ教えろ!」

「どこだ?アルバード君!」

 ダックスさんとハンスさんの2人が、声を上げてボスらしきモンスターの居場所を聞くも

「あんたらがいなくても俺1人で十分なんで、周りの雑魚でも狩っといて」

「なっ、」

 

 アルバードは年上に対する口の書き方がなっていない。今このポータルにいるすべての隊員の中で1番ランクが高い。

 しかしダックスさんもハンスも先輩だって数年前に比べれば、アルバードにレベルは近づいている。


「アルバード ランク 上位ランカー

 ダックス  ランク 8320pt

 ラン    ランク 7990pt

 ハンス   ランク 5100pt 」


 この3人は間違いなく成長している。能力も精神的にも、それに対し、アルバードは元々の魔力量の多さとセンスに頼っていて、成長がほぼない。それでもこの人達より強いし、ランクがそれを表してる。

 だから何も言い返せなかった。


「ダックスさん目の前!避けて!」

 先輩が急に大声を出す。


 ドゴォン

 先輩の声が少し遅かったら危なかった。

「ラン、助かった」

「いえいえ、」

 先輩も褒められるのは慣れていないのか?少しダックスさんに褒められている時、タジタジになる時がある。

 

「しかしこんな Aランクに光神竜ライドラ《小型タイプ》がいるなんてな」

「ついてますね俺たちしっかりこいつはアルバードがボスを倒し前に倒しましょうね」


 こいつはレアモンスター光神竜ライドラと言うドラゴンでサイズは小、中、大、特大、???、の5種類がいる。大型タイプまではレアモンスター扱いされどのポータルにも存在はする。レベルで言うとB下位〜S下位でそこまでの脅威でもなく、レアなアイテムの黄金の爪、鱗が入手でき、このアイテムを求める人が世界に多くいる。


 「ラッキーですね。」

 と言ったのと同時に飛び上がって空にいる光神竜に斬りかかる。

「斬風刃」

 風属性魔法をうまく扱い、斬撃を飛ばして攻撃するも流石に当たらない。逃げ回っている。

「斬風刃 斬風刃」

「くそっ」

 空を飛び続ける光神竜を倒せるのは先輩か俺しかいない。

しかし俺の攻撃自体に遠距離の高火力攻撃は《破壊する氷レイルバスター》しかなく、さらに当てにくい欠点もある。

「フィル頼むランを援護してくれ」

「は、はい」

 俺もやらなきゃいけないことくらい分かってる。でも俺にできるのか、もし先輩に当たってしまったら。死んでしまわないだろうか、街を壊してしまわないか、仮想のトラスト区なのに俺は戸惑いで攻撃が放てない。

「速く援護をしろ!」


 やってやる!俺も腹を括らないと行けない。

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