不幸が7回起こると死ぬ話
ぐらにゅー島
生きろ
「皆さん、突然ですが今日1日の中で7回不幸なことに出会うと死にます。気をつけてください。」
3月13日、月曜。深夜12時ぴったりの時間に突然政府はそう声明を発表した。それにより、国を挙げたデスゲームが突如開催されたのだ。
「って言ったってさ…。7回も1日で不幸なことに合うとか有り得なくね?」
僕は、テレビに写っている阿鼻叫喚している世の中の人々を見てそう思う。そんな不明瞭なことに対して驚くなんて、馬鹿だ。そう思い、ため息をついた。
そもそも、今日は片想いしている華織と初デートの日なんだ。むしろ、幸せいっぱいの1日になるに決まっている。
家のドアを開けると、桜のいい香りがして心地よかった。
「…で、達也君。どうして約束の時間に遅れたの?」
「すみませんでした…‼︎」
華織はニコニコとした表情をしていたが、その目は完全に笑ってなどいなかった。心なしか声に重圧感がある。
今日は幸せ一杯な1日になる。家を出るときはそう思っていたのに。まさかの不運に見舞われてしまったのだ。
1、鳩に糞を落とされる
2、服を洗おうとして、公園の水道で水浸しになる
3、服屋が全部ストライキで休み
4、電車が止まって帰れない
5、スマホが壊れて華織と連絡が取れない
一気に、5つもの不運に見舞われてしまったのだ。まるで、誰かの差金かのように、うまくいかなかった。
「もう達也君なんて知らないっ!」
6、華織に振られる。
今日の僕はどうもツイていない。1日だけで6回も不運に見舞われたんだから…って、6回?
「やばい、僕死ぬじゃん。」
本当か嘘かはわからない。それでも、国の言っていたことが本当なら僕の命日は確実に今日だ。今の時刻は午後の四時。もう一つ悪いことが起こったって不思議じゃない。
「あ、あの…。」
そう思って僕が絶望していると、誰かが声をかけてきた。かすみ草のような小さくて綺麗な声だ。
ふとその声の方に顔を向けると、可憐な清楚系黒髪ロング美少女が立っていた。
「突然ごめんなさい…。好きです、付き合ってくれませんか?」
「は?」
本当に突然すぎて変な声が出てしまった。僕が、こんな美少女に告白されるなんて…。
「ど、ど、ど、どうして僕なんかを…?」
しかもびっくりしすぎて声が裏返ってしまう。
「えっと…笑わないでくださいね!私、滅茶苦茶不運な人がタイプなんです!」
「それは誠に草wwwww」
「草に草を生やさないで下さいよー!」
そう言って、眉を顰める彼女は可愛くって。そうか、そうだったんだ。僕は、この時大切なことに気がついてしまった。今日、どうして政府がこんなデスゲームを開いたのかを。
不幸か幸せかなんて、個人が決めることだ。そして、どんなことだって幸せにつながるということを証明するためだったんだ。今日だってそうだ。僕は不幸だと思い込んでいたことでも、それがなかったら彼女には出会えなかった。幸せは僕たちが自ら掴むもの。それに気がついて欲しくて政府が計画したんだ。
「まだ出会って間もないけどさ、ぼくたち付き合わないか?」
「え、ちなみに私は指名手配中の連続殺人犯だけどいいんですか?」
7、連続殺人犯に好かれる。
僕は死んだ。
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