第25話 テスト当日!

 あれからもいすずに勉強を教えてもらい、気がつけばテスト当日になっていた。


「この公式を当てはめて……」

「お兄ちゃんなら大丈夫だって! なんせこの星夜いすず様が教えたんだからね」

「えっとこの数字を」

「人の話聞いてる!?」


 ポカポカといすずに叩かれながら、俺は教科書をめくって数式を確認をしていた。

 どうやら合っているようだ。

 その事にホッとした。


「よし! この調子で、テスト頑張るぞ!」

「ねぇ、私の話聞いてるかな?!」

「いたっイタタ」


 いすずに叩かれながら、俺は家を出た。

 家を出て、歩きながら頭の中で数式を思い出す。数学だけではなく、今日やる英語や歴史もだ。


「(頭がパンクしそうだ。でも、思い出さないと不安になるんだよなー)」


 とにかく覚えたことは思い出し、分からなかったものは教科書ですぐ確認した。


「えっと、これがこうだから」

「おっはよう! 弘人!」

「こうなって、そうなって」

「おーい、弘人! 聞こえてるか?」

「青か、はよっ」

「おはよう! 弘人今何をしてるんだ?」

「見れば分かるだろ。テスト勉強をしてるんだよ」


 そういって青に教科書をみせると、みるみる顔が青くなっていった。


「うぅ、テストかぁ。体力テストは自信あるんだけどなぁ」

「ちゃんと勉強やったのか?」

「やったぞ! ただ、どれも意味がわからなかったな」

「……わかるよ、その気持ち」


 俺は青の肩に、手をポンっと置いた。なぜなら、青の目が潤んでいたからだ。


「うぅ、早くテスト勉強やっとけばよかった!」

「青、しっかりしろ! まだ、赤点とるって決まった訳じゃないだろ!」

「で、でも!」

「まぁ、赤点とっても夏休みを返上するだけだしな! どんまい青!」

「人でなし!」


 青にもポカポカ叩かれる。


「ふはははっ全然痛くないぞ! 悪いが俺は赤点なんてとらないからな!」

「なんでだよ!?」

「だって、地獄の指導を受けてきたからな」

「ひ、弘人の目が濁り出したんだけど?! 一体どんな指導を」


 青に指導について聞かれたが、俺は答えなかった。言ってしまったら、後でいすずになんと言われるのか分からなかったからだ。


「その話はどうだっていいだろ? 早く学校行くぞ?」

「あっちょっと待てって」


 青の一歩先を歩き、学校へ向かう。

 学校に着いたら、復習をしないとな。なんとか赤点回避できますように!!


「(もしも赤点になったら、いすずに怒られそうだからな)」



 学校につき、1時間後にテストが始まった。クラスメイトたちの顔は、憂鬱そのものだった。


「それでは、テスト始め!」


 先生の合図とともに、テストを引っくり返す。

 俺はテストに取り組んだ。


「(おっこれは、いすずとやった問題だ! 解ける! 解けるぞ!)」


 俺はスラスラと問題を解いていった。分かってる問題が出てきた時は、テストが楽しくて仕方がなかった。


「(これなら、赤点とらずに済みそうだ!)」


 それから他の英語や歴史もそうだった。スラスラと問題が解くことができて、とても楽しい。


「(この調子で問題を解いていくぞ!)」


 そして3つ目のテストを終え、気がつけば帰る時間になっていた。なんとか問題を解けて、安心している自分がいる。


 明日もテスト頑張らないとな。


 帰りの支度をして、家に帰る。家に帰ると誰もいなかった。


 今日は、いすず。仕事があるって言ってたっけ。日にちはズレるが来週テストもあるみたいだし……大変だな。


 それなのに、俺のテスト勉強まで見てくれて……。


 ちなみにその事実を知って一度断ったのだが、いすずは頑なに「気にしなくていいよ!」っと言って聞かなかったのだ。ありがたかったけどさ。


「なにか、お返しがしたいな」


 何がいいんだろうか?

 うーん、うーんと考えたが、なかなか思いつくことができない。


「オムライスはよく作ってるしな、どこかに連れて行ってあげる?」


 でも、外でいすずだってバレたりしたらまずいからな。そう考えて、俺はあることを思いついた。


「そうだ! いすずを癒すのはどうだろうか!」


 今はテスト期間中だから無理だけど、テスト終わりにいすずにお返しをしよう!


「そうと決まれば、テスト頑張らないとな!」


 俺は頬を叩き、気合いを入れると、自分の部屋に向かった。そして机に座ると、問題を解き始めたのだった。



 テスト2日目になった。

 今日もテストは、三科目あった。さて、今日も頑張ろう。


 家を出ようとした時、いすずがリビングから出てきた。


「お兄ちゃん、今日もテスト頑張ってきてね」

「あぁ、ありがとう。昨日勉強したしバッチリだと思うよ」

「そっか、よかった」


 どこか安心した顔でいすずは、笑った。しかし、その顔にはどこか疲れの色が見えた。


「いすず、昨日仕事があったし、疲れてるんじゃないか?」

「うーん、大丈夫だよ。少し寝不足なだけ」

「そっか」


 心配だが、いすずに「時間大丈夫?」と聞かれて、俺は慌てて家を出た。


「いってくるな、いすず!」

「いってらっしゃい」


 ヒラヒラと手を振られながら、俺は学校へと向かう。

 そして、2日目のテストを受けた。自分なりにいい出来だったと思う。


「あと2日テストをやれば、終わりか!」


 いやー長かったな。テスト期間中、眠れない日々が続いて寝不足だから辛いな。


「ふわぁぁ、ねむっ」


 帰ってから少し仮眠でもとるかな。

家に着くと俺は、リビングにあるソファにもたれかかった。

 何気なくテレビをつけると、そこにはいすずが映っていた。今日もお昼の番組で歌うみたいだ。


「星夜いすずです! よろしくお願いします」


 明るい笑顔を浮かべながら、仕事をこなしているいすず。


「やっぱり、すごいな。いすず」


 いすずの仕事姿を見て、感動を覚えていた。だって仕事をこなして、家に帰れば勉強も完璧にやって……素直にすごいと思ったのだ。


 けど、っと俺は思った。いすずと半年間暮らしているが、いすずは頑張り屋さんすぎるところがあった。頑張ることはいいことだけど、頑張り過ぎるのは体調面や精神面で心配だ。


「(あっ)」

 

「とっても、美味しいです!」


 テレビを見ていて気がついたが、いすずの顔が疲れた顔をしているように見えた。


 いすず大丈夫か? ちゃんと休んでるのかな?


 仕事に勉強、いすずにはやることがたくさんある。頑張り過ぎていないか心配だった。


「メールでも入れとくか」


 俺はスマホを取り出すと、メールを一言送った。


《テレビ見た。あまり無理せず、休めよ》


 これでいいだろう。


「さて、少しだけ寝ますか」


 ぐぅーっと手を伸ばすと、俺はそのまま目を瞑って眠った。


 起きたのは、それから2時間後のことだった。


「ふわぁ、寝過ぎたな。早く勉強をやらないと」


 ふとスマホを見ると、メールが1件来ていた。見てみるとそれは、いすずからのメールだった。


《なになに、お兄ちゃん心配してくれてるの? いすず嬉しいなー♡》


「たくっあいつは」


《心配してる。兄だからな》


 すぐにメールが返ってきた。


《日ノ出弘人としては、心配してくれないんだー》


「どういう意味だ?」


 よく分からないが、なにか不満があるみたいだ。


《? よくわからないが、日ノ出弘人としても心配してるぞ?》

《……お兄ちゃんのバカ!》

《バカっていきなりなんだよ!?》

《ふんだ、分からないならいいよーだ!》

《(あっかんべーをしているスタンプ)》


 いすずは俺とのやりとりが気に食わなかったようで、そこから一切メッセージは来なかった。


「まったく、何を考えているのか分からないな」


 俺ははぁーっとため息を吐いたのだった。

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