第6話 構ってよ! お兄ちゃん!

 授業中、さっきからスマホにいすずからのメッセージが鳴り止まない。


 メッセージをみると、


《おーい》

《お兄ちゃん!》

《愛する妹のいすずちゃんだよ♡》

《チラッ(壁から覗き見しているスタンプ》

《嬉しすぎて、泣いちゃった?》

《ねえってば!》

《無視しないでよー! 泣いちゃうよ!(泣)》


 たくさんのメッセージが送られてきた。アイツ、どんだけ暇なんだよ。


《今、授業中だから後にしてくれ》

《えー、今授業中なの??》

《それなのに、スマホみてるのー?》

《先生、ここに悪い子がいます!(ニヤリと笑ってるスタンプ)》



 授業中と教えた瞬間、メッセージの量が一気に加速した。SNSのアイコンに30という数字が表示されている。

 アイツ、面白がってやってるな。


 無視をしようとしたが、


《無視したら、今日お兄ちゃんねたっぷり構ってもらうんだー♡》


 という脅しを受けたので、構うしかない。   

 帰ったら、キラ☆ルリの考察動画をのんびり見たいからな……ここは、従うしかない。


《授業中だからあまり構えないぞ》

《わーい、お兄ちゃんが構ってくれる!ありがとうお兄ちゃん♡ 大好き!》

《(投げキッスしているスタンプ)》

《……お前、お昼ナンジャーの時とテンションの差が違いすぎるだろ(汗)》

《えっ? お兄ちゃん、お昼ナンジャー観てくれたの!?》

《たまたまな》

《おやおやー? あんまりアイドルの星夜いすずには興味がないお兄ちゃんが、私の出ているテレビ番組観るなんて珍しいね〜》

《なんだよそれ》

《だってそうでしょー? アイドルが妹になったってのに、家で話題すら出さないし! 興味ないのかなって思ってた》

《そうか?》

《そうだよ!》


 いすずにいわれて、まぁたしかにと思った。

 俺はいすずに対して、ずっと"普通"に接していた。

 話題も出さないし、いすずを特別扱いしたりしない。"妹"として扱っていた。

 そんな態度だったから、俺が星夜いすずに興味がないんだと思っていたらしい。


 なんていえばいいのだろ。

 別に興味がないわけではないけど、なんとなく触れなかっただけだ。

 家でもアイドルの話題を出されたら、気疲れしちゃうんじゃないかと思ったからだ。


「(家は、落ち着ける場所であって欲しいからな)」


 その気持ちを簡単に、メッセージで送った。


《ありがとうお兄ちゃん》


 いすずからのメッセージは、珍しく素直だった。


《すごく、嬉しいな》


 なんだかそれが照れ臭かった。


《おぅ、大切な妹だからな》


 すると、さっきまで連続できていた返信が遅くなる。


「(どうしたんだ?)」


 不思議に思っていると、ピコンと通知が届いた。


《むぅ大切な妹かぁ・・・》

《なんだ、不満そうだな》

《だってお兄ちゃん、私のことを妹としてしか見てくれないんでしょ? 嬉しいけど、寂しいなー》


 意味が分からなかった。妹としてしか見てくれない? 妹以外に何があるんだ??


《友だちとかに、なりたいってことか?》

《バカ》

《バカってなんだよ!》

《だって、そうでしょ! もうお兄ちゃんは、超がつくほど鈍感過ぎ! あとキス魔》

《誰がキス魔だよ!? あれは、あいさつっていっただろ!》

《ふんだ、私のファーストキス(ほっぺ)を奪ったくせに、全然動じないんだから! お兄ちゃんのバカバカバカ!》

《(あっかんべーをしているスタンプ)》


 そこで、メッセージのやりとりは終了した。

 俺が超鈍感だって? そんなはずはないんだけどな。

 結構勘が働いていると思いたい。


《おーい、いすず?》

《いすずさん?》


 なぜ、いすずが怒ったのか結局わからないままだった。


 「(カルシウム不足か?)」


 ちなみにその後、校内を走り回っていた青を捕まえて相談してみた。(※青はいすずがアイドルであることを、知っている)


「妹としてしか見てくれないかぁ、つまり妹以外で見られたいってことだよな?」

「多分そういうことだと思うんだけど、よく分からなくて」

「友だちになりたいってことなんじゃないか? 弘人といすずちゃん仲良しだし」

「やっぱりその結論になるよなー」

「あと、怒ってたのはカルシウム不足なんじゃないか? カルシウム不足してると、イライラするって聞くし」

「だよな!! さっすが青だぜ!!」

「えへへっ、そんなに褒めるなよ。後で特別にカルシウムがたっぷりとれるレシピを教えてやるよ」

「まじで、青さまさまだな!」


 青から特製レシピを教えてもらいウキウキの俺。これで、いすずの機嫌もよくなるだろう。


「ふんふふーん」

「そういえば弘人、23日なにやるのか弘人のクラスでは決めたのか?」

「23日? 何があったっけ?」


 頭の中で思い出そうとするけど、全く思い出せない。不思議に思っていると、青ははぁーっとため息を吐いた。


「おいおい、23日は体育祭だぞ? なんで忘れるんだよ」

「……」

「弘人?」


 俺はその場に崩れ落ちた。


「弘人? どうしたんだよ弘人!!」


 ブンブンと勢いよく青が俺の体を揺する。


 今の季節は6月。つまり6月の後半にはあのイベントが待っているのだ!

 

 "地獄の体育祭"が!!

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