第4話 いすず、兄を起こす!?

夕飯を食べた後も、いすずはぶぅぶぅ文句をいっていた。


「お兄ちゃん、女の子の扱い分かってない!」


とか。


「お兄ちゃん、ほっぺ触るならやることあるでしょ!」


とか。

 サッパリ意味が分からなかったので、放置することにした。(そんな俺の態度に対しても、不満だったみたいだが)


「んじゃあ、俺明日早いから寝るわ」

「……ふん」

「おやすみ」


 それだけいうと、俺はいすずに向かって軽く手を振った。いすずはヒラヒラと反射的に手を振ろうとしたけど、慌てて手を引っ込めて舌をベッと出した。

 やれやれ。

 いすずの機嫌は悪いままらしい。

 まっ放っておけば治るだろう。


 俺はいすずを無視して自室の扉を開けた。部屋に入ると、そのままベッドに倒れ込んだ。           

 今日一日、精神的に疲れた。主にいすずのせいだけど。


 どうしてアイツは、こうも俺をからかってくるんだろうか? 不思議でならない。


「ふぁぁ、眠っ。今日は一日中動きっぱなしだったなからなー」


 このまま、眠ってもいいけど。


「まだ、宿題が終わってないからなー」


 机に積み上がった本の山を見て、うぇっと舌を出す。やりたくない、けどやらないといけない。


「やりますかー、早く終わらせてアニメ見たい」


 特に今期お気に入りである魔法少女キラ☆ルリを観ないとやってられない!!

 子ども向け作品でありながら、大人が観ても感動しちゃうんだよな!! 


「キラ☆ルリのために、頑張ろう!」


 ほっぺをパチンと叩くと、気合いを入れて宿題に取りかかる。待ってろキラ☆ルリ! 今日もルリたんのために、頑張りマッスル!!



 なんとか宿題を終わらせることができた。終わったのは時刻深夜2時ごろだった。


「よーし、キラ☆ルリ観るぞ!!」


 宿題が終わってハイになった俺は、観ていなかったキラ☆ルリ5話を何周かした。セリフを完璧に覚えてしまうくらい、熱中したし……


「ふわぁあ、そろそろ寝るか」


 明日朝早いのに、夜ふかししてしまった俺。早く寝なくては。


「ぐぅ」



「ん?」


朝、やたらとガサゴソと何やら物音が聞こえてきた。不自然な音に、不思議に思った。


 なんだ、なんの音だ? まさか、猫でもいるのか?


 ゆっくり目を開けると、そこにはいすずがいた。寝ている俺の上に跨り、ニコッと笑顔を浮かべている……いる!?

 


「いすず、何やってんだ!?」


 ありえない状況に、全身が目を覚ます。

 いすずはというと可愛らしいウサギのプリントされたパジャマを着ていて、片手で胸のボタンを2つ外している。


 ハレンチだから、やめなさい!!

 慌てて動こうとしたが何故か体が動かない。

 よく見ると足と手は縄でぐるぐる縛られていた。


「逃げようたって無駄だよ、お兄ちゃん」

「どういうつもりだ、いすず!? どうしてこんなことを……」

「そんなの決まってんじゃん」


 いすずは誰もが魅力されるような蠱惑的な笑みを浮かべると、


「お兄ちゃんと一緒に寝かったから、侵入しちゃった☆」

「はぁ!?」


 キャハハっと声を上げると、俺の体に体を押し付けてきた。柔らかな二つのものが体が押し付けられ、顔が真っ赤に染まっていくのが分かる。


「お兄ちゃんどうしたの? 顔真っ赤だよ?」

「っ!」

「まさか、反応しちゃった! ごめんね、お兄ちゃん」


 本人はそれは、もう楽しそうだ。

 恐らくだが、昨日のことを根に持って攻撃しに来たのだろう。負けず嫌いらしい。


 チラッと時計を確認すると、時刻は朝の5時。 


 まずいな。


 俺は、6時までには家を出なくてはいけなかった。


「お兄ちゃんどうしたの? あっ、もしかして我慢できなくなっちゃった?」

「……」

「お兄ちゃんのざぁこ、ざぁこ♪」

「……」

「あれ? お兄ちゃん反応ないな?」


 反応がない俺を不思議に思ったのか、いすずが顔を近づけてくる。桃色の唇が近づいてきた。


 それを見て、ピンときた。


 手にめいいっぱい力を入れ、いすずの拘束から振り解く。


「あっ!」


 しかし、手の拘束を解いただけではいすずは退いてくれないだろう。ならばっと、いすずの頭に手を回すと……


「へっ?」


 そのまま俺は顔を近づけて、いすずにキスした。


「ひゃぁぁぁああ?!」


 まぁ、ほっぺたにだけどね。

 顔を真っ赤にさせ、慌てて俺の上から退くいすず。


「にゃ、にゃ、にゃんてことを!?」


 噛みまくっているいすずを横目に、俺は足の拘束を解いた。


「今のは、あいさつだよ。あ・い・さ・つ。家族でするやつだよ」

「こ、ここ日本だよ!?」

「日本に住んでいちゃ、あいさつのキスをしちゃいけないのか?」

「そ、そういうわけじゃないけど、いきなりすぎるというか!」


 ゴニョゴニョと何かをいっているいすずに近寄る。そのまま壁にいすずを押し付けると、いすずの唇に指を当てる。


「なら、いきなりじゃなければいいんだよな?」

「へっ?」

「次はここにするから」

「ちょ!? お兄ちゃん、なんかキャラ違くない!!」

「……」

「おにいひゃん!!」


 唇と唇が当たりそうな一歩手前。いすずはさらに顔を赤らめ、「ぷしゅー」といいながらダウンした。目はグルグルになっている。


「お兄ちゃんを朝からからかうからだ、バカ」


 俺は軽くいすずのおでこにデコピンをした。


 ふっふっふ、日頃の恨みをいすずに返すことが出来てラッキー!

 まぁ、寝不足の変なテンションでやりすぎちゃったけど。



 さっ早く、朝ごはん食べよう。



 その頃、部屋に取り残されたいすずはというと。


「……お兄ちゃんの、バカァ」


 部屋の中で、うずくまっていた。

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