【完結】拾った美少女には猫耳ついてて、俺の嫁になりたいらしいのだが、毎日可愛すぎて困っています。
空豆 空(そらまめくう)
第1章 ~拾った猫耳少女が甘えん坊過ぎて困る!~
少女との出会い
第1話 『拾ってください』
え、なにこれ、拾ってください??
休日出勤からの帰り道。俺——
‟拾ってください” と書き殴ったような汚い字で書かれたそのダンボールの中からは、見ず知らずの可愛い女の子が俺に向けてキラキラとした視線を送っている。
なんだこれ?? どーゆーこと?? 唐突に訪れた出来事に、俺の頭は理解が追いつかない。
困った。そうだ、一旦整理しよう。
俺は朝早くから呼び出された仕事に貴重な休日を潰された事を嘆きながら帰路についていた。
そして大きな公園の前を通りかかった時、公園の入り口に女の子が立っているのが目に止まった。
桜色のロングヘアに、白いパーカーのフードを被り、下はデニムのショートパンツ。小柄ながらもスタイルが良く、色白で人目を惹く可愛らしい女の子。歳は……高校生くらいに見える。
折り畳んだダンボールを手に、通り過ぎる人を目で追いながら誰かを探しているようだった。
こんな時間に……彼氏とでも待ち合わせだろうか。あんな可愛い子と待ち合わせだなんて、羨ましい限りだ。俺にもあんな可愛い知り合いがいれば、もう少し楽しい人生だったかもしれないのに。
そんな事あるわけないかと溜息を吐いた瞬間、その女の子の金色の瞳と目が合った。
その吸い込まれるような瞳に目が離せないでいると、その子はまるで宝物を見つけた子供のような笑顔を浮かべた。そして、小走りで俺を追い抜くと、俺の進路上にダンボールを組み立て中に入ったのだ。
なんだ!?
そのダンボールには書き殴ったような汚い字で"拾ってください” と書かれていて、中からは女の子のキラキラとした視線が俺に向けて送られていた。
……というわけなのだが。うん。やっぱり意味がわからない。イタズラ? ドッキリ? なんにせよ、面倒事はごめんだ。関わらないに越したことはない。
俺はその箱に入った女の子から目を逸らし、見なかったことにして通り過ぎることにした。するとそのダンボールの女の子は慌てたようにまた小走りをして俺の前へ来ると、先ほどと同じようにダンボールの中に入って俺を見つめる。
……一体なんなんだ。俺に向けてやってる? 俺はあんな子知らないぞ。知らないし、そんなことをされる覚えもない。
……よし、ここはスルーしよう。
そう心に決め、もくもくと足を進める。あんな可愛い子が俺にちょっかいをかけてくるなんて、理由はひとつしか考えられない。詐欺だ。詐欺に違いない。俺は引っかからないぞ。なんせ俺は自分の容姿への自信のなさに鉄壁の自信を持っているんだ。ここはスルーだ。スルーしよう。
俺は固い決意を胸に足を速めた。すると、俺の後頭部のあたりにまっすぐな視線を感じると共に、
「にゃーん! にゃーん! にゃああああんんん!!」
……明らかに俺を引き止めようとする、困ったような、わざとらしくも必死さの伝わる声が聞こえる。
いやいや、きっとこれは俺の気を引いて俺を騙すための詐欺の手口だ。きっとそうに違いない。
そう思いつつ……、やはり気になって足を止めて振り返り、その声の主に目をやった。
すると女の子は、パッと花が咲くような安堵の笑みを見せた後、にゃんにゃんにゃん! と俺に向けて鳴き続けている。
……俺に向けてそんなことをする意図は分からないが、少なくとも困り顔でそんな声を出す女の子が、詐欺をするような見た目には見えない。
むしろ、詐欺にすぐに騙されてしまいそうな、悪い人にすぐに連れ去られてしまいそうな、そんな危うささえ感じた。
あ、もしかして悪いやつに騙されて、詐欺の片棒を
俺は遠い昔に捨て去った正義感から、彼女に声を掛けようと思った。その時だった。
「あ、あのお……」
声を掛けてきたのは女の子の方だった。
「……はい?」
いささかの警戒心を抱きながら返事をする。そんな俺の声に萎縮してしまったのか、彼女は肩をすくめて上目遣いになりながら、申し訳なさそうに言葉を続けた。
「わ、私……捨てられちゃったみたいで。拾ってくれませんか?」
……いやいや、自分でダンボール広げて中に入って にゃんにゃん言ってただけじゃないか。なんの小芝居だよ。うん。やっぱり詐欺か。詐欺確定。こんな見ず知らずの可愛い女の子が、こんな俺なんかに拾って欲しいなど、自らの意思で言うはずがない。
「あのさ……どしたの? 誰かにこういう事をするように頼まれたの?」
「え? ち、ちがいますっ」
俺の問いかけに眉尻を下げて必死に首をぶんぶんと振る女の子。見れば足元は裸足で擦り傷だらけ。おまけにダンボールの他に荷物らしき物は何も持っていない。
……ああ、もしかして、家出? 新しい考えが俺の脳裏を
いやいや、警察だってしっかり事情を聞くかもしれない。けれどこの子だって子供じゃない。本人の意思だってある。何よりこの子は、なぜ俺に向かってあんな事をした?
それに俺を見つけたときのあの表情、明らかに俺の事を知っている様だった。
俺はこんな可愛い子知らない。見たことがない、そう言い切れるほど、この子の容姿は飛び抜けて可愛い。その謎が気になって仕方がない。
俺が無言であれこれ思案していると、泣きべそをかきそうな女の子のお腹の方が先にぐぅとべそをかいた。
「……お腹減ってるの?」
俺の問いかけに女の子はこくんと無言で頷いた。
俺は面倒事は嫌いだが、もう遅いこんな時間にショートパンツに傷だらけの素足の女の子をこのまま放っておくのも気が引ける。お腹を空かせているのなら尚更だ。
それに俺の住むアパートはもうすぐそこ。素足の女の子を連れ回すよりは、連れて行った方がいいかなと思った。足の擦り傷の手当てもしてやりたいし。
「んー、もうこんな時間だしなあ……、まぁいいや。とりあえず俺んち来る?」
「はいっ!!」
女の子は勢いよく首を縦に振りながら嬉しそうに返事した。あまりにも嬉しそうな顔をするので、逆に不安になってきた。
え、俺の部屋、そんな大した事ないんだけど?
……連れて行くのか? 俺の部屋に? こんな、可愛い子を? 普段部屋に人を入れる事がない上に、男の一人暮らし。最近仕事も忙しかったし部屋の中は荒れに荒れている。
ゴミとか……いつ捨てたっけ? そこまで考えて、考える事がなんだかめんどくさくなってきた。
ま、いっか。虫が湧くほど汚いわけではないし、別に異性として好意のある人を部屋に呼ぶわけでも、知り合いでもないのだし。
この子だって、別に俺に何かを期待しているわけではないだろう。
とりあえず玄関横の風呂場に案内して、擦り傷だらけの足洗ってもらってる間にちょっと部屋の中掃除しよう。
頭の中でそんな算段をしながら、俺はその子を俺の部屋へと連れて行く事にした。
……その時の俺は、そんなS級美少女が、俺の事をご主人様と呼び、俺に甘えてベッドに入ってくる。
そんな日々を送る事になるなんて、微塵も想像していなかったのだ。
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