第漆話 俺は……戦闘ぅ?!

 あーあ、変なところ見ちゃったよぉ〜。

 なんか企んでるようにも見えたし、そうでないようにも見えたけど、あれはどうするかねぇ。

 後顧の憂いを断つと言う意味でも、成敗!!的な感じのやつをしないといかんかなぁ?

 でも、俺にはあんまり関係のないことだしなぁ?

 どうしよっか、これ?

 見つかったら戦闘になりかねないぞ〜?

 まぁ、あのなんちゃら院何ちゃら何ちゃら君(覚える気はない)はナーバスになってるっぽいけど、そのお付きというか友達というか何というかだけど、その人達はこっちのことを明確にまだ敵だと認識はしてないっぽいから良いんだけどさ。

 目下の行動の中では、彼女らの行動は気になってしまうよねぇ?

 流石に全部が全部こちらに肯定的になるなんて思えないし、そもそも肯定的になられたところでどう言って良いか分かんないっていうのが本音だし……。

 ま、まぁ何とかなるんじゃね?って思ってはいるけどどうなんだろうなぁ。


「うむ?何か衣擦れの音がしましたね?そこにいるのは誰なんですか、ことと次第によっては…………」


「あれあれあれぇ?そこに隠れている人は誰かなぁ、もしかしてわたしらの会話聞いてたとかぁないよねぇ?」


 正直彼方の異能を把握していない時点で戦闘行為そのもの自体を避けたいんだけど、こんなところでこのズボンの衣擦れ音が仇になるとは思っても見なかったわ……。

 流石に格好はスカートだとなんか嫌なので、あのイケメン君にズボンを用意してもらったけど、やっぱり布面積が少ないのを着るのはちょっと元男としての抵抗感がある!

 だからズボンだった…………けど、コレならスカートのほうがまだ良かったのかもしれないな。

 スニークにはズボンはあまり向いていないのかも……?

 それとも、あのインテリ君の耳が良かったか、そういう異能なのかどうか。

 判断しかねるけど、異能持ち同士の戦いはこの地では禁じられているはず。

「異能を持っているだけで才能であり、それを無闇矢鱈に減るのはこちらとしても望ましいものではない」という天皇猊下の言の元、忠実に守られているはずなんだけど、そうも言ってられないっぽいね、これ。


「悪……だくみ?」


 とりあえず会話を試みることにしてみたけど、俺喋るの苦手なのよねぇ。

 だからあんまり口数を増やしても意味のないものだと思ってしまうから、早いところこの状況を打開しないといけないな!

 相手からの返答は返ってこず、戦闘体制を解かれることはない。

 コレは戦闘になってしまう。しかし、良い機会だ。

 私の力が、異能がどれだけのものであるのかを測る良い機会だ。

 もう一度言おう、良い機会だ。


「………………良い機会」


 口に出すぐらいには丁度いいと思っている中身は無口無表情のおっさんです!

 この人たちには人知れずサンドバッグになってもらうことにしよう。

 この【強化する】ということに特化した異能を、自分の手と足のように使いこなせるように、最初のチュートリアル戦といこうじゃない?

 そして力み出すと、ネッチョリ系女子がこちらにものすごい速さで駆け巡ってくる。

 なるほど、異能対異能での戦闘に慣れているようだ。

 戦闘経験があるのとないのとではまた意味合いも違ってくるだろう。

 視覚を予め強化しといて良かった。普段はそこまで使えないが、単純に初速を見極めるということにおいては重要な情報である。

 まず戦闘では情報が命だ。何をするにしても相手の情報がないと詰んでしまう。

 しかし、相手の初速が見極められないのであれば、情報云々よりも先にお陀仏だろう。

 それを可能にするのが【視覚の強化】だ。強化するのには1秒もいらない。すぐに自分の思い通りに強化される。

 そして、なぜ戦闘中にここまでのことを考えられているかと言うと、【思考を強化】して考える時間を倍にしている。

 考える時間は戦闘の中では限りなく短い。そして、判断ミスが一つだけの判断ミスでも命取りになる。

 戦闘が始まる前から俺は思考を強化をしているため、他の人間よりも倍の時間考えることができるという荒技だ。

 相手はこちらが最初の一撃を見切っているといいうことに驚きが隠せておらず、そこら辺ではまだ素人なのかな?と思わせられる。

 それが演技だったらしょうがない、負けを認めるしかないよね!

【筋力を強化】して思い切り頬を強打する。

 どうやら動揺は本物の様だ。

 自分の異能に余程の自信があったと見える。多分速度にまつわる異能かなぁ?

 インテリ君も最初は驚いてみているばかりしかできなかったが、手をかざし始めるとそこから魔法の様なキラキラした何かが手から飛び出した。

 異能の種類ってクソほどあって、めちゃくちゃ把握するのに時間がかかるんだけど、何の異能か判断できないのも死活問題だなぁ。

 何の異能かさっぱりわ"か"ん"ね"。

 さて、何の異能か分からないところで、戦闘にはあんまり関係ないと思うんだよねぇ、多分。

 とりあえず強化はした方がいいと思うけど。


「何……!?」


 うん、避けちゃえば全部問題ない。

 全てを避け切れば、当たらなければどうということはないのだよ……!

 さて、鳩尾に思い切り拳を入れて捻り込んで打つべし。

 俺、実はちょっとだけ護身術を学んでたんだよね。

 コレでもう一名ノックダウン…………と。

 さてさて、どうするかな、何ちゃら院くん。

 あ、びびっててそれどころじゃないわ。

 じゃ、ばいちゃ








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 戦々恐々としている三千院播磨守御門は、二人が倒されたことに驚いて足も口も動かなかった。

 この二人は戦闘面では負けなしと言われていた最強の異能使い。

 女の方の名前は吉祥寺権少納言怜きちしょうじごんしょうなごんれい、男の方は遷宮寺少納言蒼海せんぐうじしょうなごんそうかいで、戦闘力はこの学園切手のものであった。

 その二人が何もさせてもらえることなくノックアウトされたことにより、心に動揺が走っているのである。

 こんなにもあっさり倒されたことによって、あの少女は名実共にあっさりと最強最悪の悪魔と評されることになる。

 ここでさらに勘違いが生じ、さらに恐怖されることになるとは露知らず、一番合戦式部大輔華恋は鼻歌混じりでその場をさっていくのである。

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