・待ち合わせは丘の上


会いたい人がいる。

私は、ヨシ葺き屋根の民家から逃げた。木の香が塗られた、黒鳶くろとび色の影は私の故郷じゃない。

 

線路を見下ろせる丘の上で、綺麗に笑うあの人は甘えたなんだ。末の次男だから。膝枕をさせた私に、柔毛を撫でて欲しいくせに。なんで風に解けて逃げるの?


白髪混じりのあの人は、薄汚れた白い画廊に居る。違う、古びたコンクリート造の寮だった。

どちらでも同じか。

振り向いた兄弟に喰われるのには、変わらないのだから。

解体されると、石綿アスベストが舞うんだっけ。 

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