5-3
もう周りは上を下への大混乱である。ステージに尻もちをついた司会者、どよめく観客席、ヒステリーを起こして泣き出してしまった候補者もいる。
キイイン、というハウリングの音を響かせて、大音量はまだ続いている。わたしは足をもつれさせながら観客席の方へ走り出た。群衆の中で上を見上げる。
青空をバックに、誰かが立っていた。
なんだなんだ、とざわめきが聞こえる。みんなが上を見上げている。視線の先にあるのは、我が大学のシンボル、時計台。その上に立つ背の高い青年。そして、その手に握られたメガホン。やがて、青年がおもむろにメガホンを口に当てた。
「おい、お前ら!騙されんなよ!このミスコンは、コントロールされてるぞ!!!」
ざわざわ、とどよめきが大きくなる。ステージの上で湊さんが呆然と立ち尽くしているのが見える。
剣崎は嬉々として続ける。
「このイベントはあ、宗教法人○○による、出来レースじゃあああ!」
叫びと共に、剣崎の手を離れて白い紙切れが空を舞った。何十枚も何十枚も、青い空を背景にして白い紙が振ってくる。地面に落ちたそれをひらりと拾い上げてみる。
それは、ファイナリストの名前を羅列したオッズ表だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます