ガチャと奴隷と異世界ゲーム Qモンスターが歩き回るヤバい世界になりました。どう生きればいいですか? A異世界ガチャで美少女奴隷を当てましょう。そうすればボッチでも素敵な終末ハーレムライフを送れます!
第84話 認める敗北、怒れる住人達、そして後処理の結末
第84話 認める敗北、怒れる住人達、そして後処理の結末
「……なるほど。チッ、俺の負けか」
【修羅属性】の喪失を理解してか、千種はゆっくりと戦闘態勢を解いた。
敗北から来る屈辱感も、勝者たる俺への憎しみも、その表情には全くなく。
むしろ楽しい時間が終わってしまった、そのことへの名残惜しさみたいなものが感じられた。
「【
負け惜しみを言ってる風でも全くなく。
千種は真実、無くなった物になどこれっぽっちも執着はないというように笑った。
清々しいというか、さっぱりしているというか……。
「――さてと。敗者は大人しくこっから出ていくとするわ。……またやろうぜ?」
「……君の相手は凄く疲れるから、こっちは金輪際ゴメンだね」
戦闘中にあった軽口みたいな感じではなく、嘘偽らざる本音だ。
【スキル
他にも、今日まで努力して得たどの要素が欠けてもダメだった。
そんな薄氷の上での勝利だしね。
「ハハッ! 面白い冗談だぜ――じゃあな」
でも何故か、小粋なジョークと取られて笑われたでござる。
君はあれか。
人の真意や本音を、本心として受け取れない鈍感系主人公か。
……まあ確かに顔も良いし、どこかのボッチと違ってモテそうだしねぇ。
「はぁ~マジで疲れた」
奥へと歩いていく千種を見送り、その場でドカッと腰を下ろす。
勝敗は決した。
このホームセンターから出ていくようちゃんと釘を刺さなくても、千種は大人しく部下を率いて退散するだろう。
先ほどまでのやり取り、短い戦闘時間だけでも、それが確信できた。
それに反するような見苦しい真似はしないだろう。
……まあ保険として、ファムがもたらしてくれる映像もあるしね。
「後はあっちに任せて、流石にちょっと休ませてもらおう……」
ここに来る前、一人だけ仮眠を取ってないのが今にして効いてきている。
あれはリーユをお迎えするイベントがあったから、仕方なかったといえばそうなのだが。
そうして残っていた商品棚に背中を預け、全身から力を抜いて休もうとした。
――そんな矢先である。
『は、はぁ!? ……お、お前ら、あんなことしておいて! た、タダで逃がすと、思ってんのか!?』
ファムと共有した聴覚だけでなく。
俺自身の耳にも届く怒声が、ホームセンター内に響き渡った。
□◆□◆ ◇■◇■ ■◇■◇ ◆□◆□
『そ、そうだ、その通りだ! 不良のくせして調子に乗りやがって!』
『や、やったことの落とし前くらいつけやがれ!』
やって来た千種が告げた、退散の言葉に対する住人達の反応だった。
ファムの視界から供給される映像。
ソルアや久代さんたちによって、住人達は既に解放されている。
衰弱していて立ち上がれなかったり。
未だ死の恐怖が残っていて怯えていたり。
しかしその半数以上が立ち上がって、不良達へと烈火のごとく怒りをまき散らしていたのだ。
「あぁ~まあそうなるよねぇ……」
俺としては早くワールドクエストに取り掛かりたいので、さっさと出て行ってもらえるに越したことはない。
それが、このホームセンターまでやって来た目的なのだから。
だが拘束され、殺されるかもという状況まで追い込まれた当人たちとしては、そうすんなりと納得いくものでもないだろう。
「……まあ、ここは静観だな」
ここから先は、俺が介入すべき話ではないだろう。
本命であるこの後、ショッピングモールへ向けて少しでも体力を回復させたい。
ソルアや久代さんたちも同じような考えで、口を挟まず様子を見ている。
……と、思っていたら。
『――
あれ?
来宮さんの前、
……そういえば、転がされてた住人の中にこんな格好の奴いたな。
『いや、あの、
それに対して、来宮さんは困惑と若干の迷惑感が混じったような表情。
……しかしその来宮さんへ背を向けているため、当の青年はもちろんそれに気づいてない。
「“建屋”……。どっかで聞いたような――あっ」
そうだ、さっきホテルで聞いたな。
【施設 通信の館】で俺に接触してきた、自分の名前を
ワールドクエストの攻略に協力してほしいとか、言ってきたアイツだ。
「見た目は似てるけど……別人。とすると、弟の方か」
確か兄弟で久代さん・来宮さん、それぞれにプチストーカーしてる疑惑があるって話だっけか?
つまり、あれだ。
千種たちに捕まって寝転がってたけど。
来宮さんに救出されて運命の再会、“ここからは俺のカッコいい姿、見ててくれよな!”って感じかな?
「来宮さんも大変だねぇ……。昨日は
久代さんも久代さんで、なんと言ってもミスキャンパスだし。
まだ会ってないだけの自称“親しい相手”とか一杯いそう。
二人とも、彼氏とか思い人とか。
それらしいパートナーがちゃんと出来たら、風除け的な感じで変わるかもだけどねぇ……。
そうして完全に他人事気分で事態の推移を見守り続けていると――
『――チッ。ゴタゴタとうっせぇなぁ』
心底つまらなそうな、底冷えする声音で。
千種がぴしゃりと、その場全員を黙らせた。
□◆□◆ ◇■◇■ ■◇■◇ ◆□◆□
『何もとらずに出てってやるって言ってんだ。素直に受け取っとけよ?』
そこには、純粋に戦いを楽しんでいたさっきまでの千種はどこにも無く。
とても退屈そうに、ナイフのように
『な、なんだその言い方は!?』
『そ、そうだそうだ! ふざけてるのか!?』
一度は千種の威圧感に押し黙ったものの。
再燃した怒りを後押しに、住人達はまた怒りの声を上げた。
だが千種は、それすらも心底どうでもいいと思っているように鼻で笑う。
『ふんっ。じゃあ何だ? 誰か代表して俺たちを殺すか? 処刑でもするか?』
そんなこと出来ないと確信した、バカにしたような言い方だ。
『そ、それは……』
『う、うぅ……』
だがそれに名乗り出る者は誰もいない。
そりゃそうだ。
相手はモンスターじゃない。
どれだけ憎かろうと、自分の手で人を。
……だからこそ【施設】を利用したいがために、先の利用者を殺そうとした千種たちはある意味異常なんだが。
『――こっちには来宮達がいるんだ! あんまり強がったこと言っても、お前らが負けた事実は変わらないんだぞ!?』
そこで何を思ったか。
建屋君が、勇ましく千種へと突っかかっていった。
……おい、“守る”とか言っておいて、その来宮さんをそこで使うなよ。
『えっ? あの、いや、ここで私達をあてにされても……』
『……ですねぇ。私達は、ただ出て行って欲しいだけですし』
ファムが謎の気を利かせてか、久代さんとソルアへと急接近。
二人の困惑したような、それでいてやはりどこか迷惑そうにしているコソコソ話を。
しっかり俺にお届けしてくれる。
……あの、いや、ここで俺にそれを聞かされても。
『…………』
来宮さんの表情にも。
クラスメイトと再会できた、守ってもらえているという喜びは一切なく。
むしろさっきホテルで見た久代さんに似ている。
建屋兄の本性を垣間見てショックを受けていた、そんな久代さんの様子に。
……俺やソルア達の前で見せてくれていた、感情豊かな来宮さんは完全に引っ込んでしまったようだ。
『――
そんなところも、やはり千種はきちんと見透かしたように告げた。
『
強く軽蔑したような、虫けらを見るような目。
それに強く
……おい、頑張れ
想い人にカッコいいところ見せんだろ!?
だが千種のそれは、しっかりと向ける相手が区別されていて。
ソルア達を見るとき、千種は無色透明の、好感も不快感も何もない目をしていた。
『……何も悪い話をしてるわけじゃねぇ。よくよく考えろ』
千種は物分かりの悪い生徒に、これでもかと嚙み砕いて言い聞かせるように。
ゆっくりと、だがやはりどこかバカにしたようにして話す。
『お前らは綺麗なままで、誰も手を汚さず、俺たちに死んでほしい。一方で、この“
表現の仕方が全くオブラートに包まれておらず、千種の悪意を感じる。
しかし内容が真実を言い当ててしまっているからか、住人達から話を遮るような声は上がらない。
『俺たちはここの外に出ていくわけだから、確実にモンスターと戦闘になる。そして、それをしないと安全な場所へは逃げられない。つまりだ――』
最後、千種はまとめに合わせて最大の軽蔑を込めた表情をする。
それでも自分の言うことに反論は返ってこないと確信している、そんな顔だった。
『お前らは俺らを使って、外のモンスターの処理ができるってわけだ。一匹でも多く俺たちが狩れば、お前らはその分だけ
憎しみや怒りが頭を支配していて、言っている意味が理解できていない住人ももちろんいた。
だがそんなことはお構いなしと、千種は続けて結論づける。
『逆に俺らが逃げる過程で死ねば、それはそれでお前らに損は一つもない。誰も手を汚さず、俺らを処理できるんだから。――どうだ、わかったか? お前らにとっちゃ、どう転ぼうと今すぐ俺らが外に行く方が得なんだよ』
だから
……そんな強い思いが、千種からは感じられた気がした。
『…………』
『…………』
『…………』
肯定・否定、どちらの声も特に上がらない。
頭では理解できても、感情が納得できずにいる。
あるいはどちらの声を上げるにしても角が立ちそうで、問題がありそうで
肯定したら、自分たちを殺そうとした奴らの意見に頷くのかと非難されそうだし。
否定したら、じゃあ不良たちに手を下す・殺す役目を担ってくれるのかと言われそうだし。
そうした様々な思いが渦巻き言葉にならず、皆が黙している。
『……答えは出たようだな。――おい、お前ら、行くぞ』
それすらもお見通しだというように。
千種は住民たちから視線を切った。
そうしてもうこの場に用は無いという風に、手下たちへ向き直る。
未だリーユの魔法で上手く歩けない奴に肩を貸し、ゆっくりと歩き出した。
呼び止める者はいないと確信しているように、一度も振り返ることなく――
『…………』
――いや、一度だけ。チラッとこちらを、俺のいる方を向いた。
しかし、やはり何も口にはせず。
とうとうホームセンターの出口へと到達。
バリケードを乗り越えて、千種たちは去っていったのだった。
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