第25話 ガチャ、ガチャ、そしてガチャ! ……★



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①~イベント“2人目の仲間を手に入れよう!”~

異世界奴隷(女)の所有数が1人の場合、★4の異世界奴隷(女)が排出される確率が2倍にUP!



※このイベントは10連ガチャ限定

 また、2日目の12時~3日目の0時まで

 ↓

 ただいま、イベント実施中!

 

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「よし」



 とうとう2日目の12時になった。

 午前の頑張りもあって、今現在のIsekaiは2450。


 ドラッグストアのマジックゴブリンや、さっきのホブゴブリンの稼ぎも大きかったと思う。



「えーっと、10連で200Isekaiだろ? だから12回、10連を回せる……あっ!」



 そういえば【ガチャ師】のジョブレベルが上がったことで、追加効果があったはず。

“10連ガチャを使用時、追加で1回分無料ガチャ可能”だと。

 


 つまり12回分、余分に出来るから……おぉ~!



「約130回! これは行けるだろ!」



 どんな確率設定がされているか知らないが、1%だとしても100回やれば出てくる計算だ。

 既に10連を2回分しているので、後80回。


 だから計算の上では、確実に1回は出てくるはずだ。



「確率が倍なんだから、もっと出てくる可能性は上がる……」



 根拠ある自信をひっさげ、早速1回目に挑戦してみる。

【異世界ガチャ】のマジックバッグが出現。


 200Isekaiが消費され、ガチャが始まる。



「ご主人様、頑張ってください!」



 運頼りなので何を頑張ればいいかはわからなかったが、ソルアの応援は心強かった。

 大きな麻袋の口元が開き、様々な色をした結晶が飛び出してくる。



「白、銅、白、銀! あっ、白、白、銅……」  

 

 

 途中★3を示す銀色が出て気持ちが高ぶったが、その後は白色と銅色が続いてしまう。

 求める異世界奴隷(女)は★4か★5、つまり金色か虹色だ。


 なのでこの演出の時点で、欲しい結晶が出てこないと分かってしまう。


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ガチャ結果


①魔法耐久+1 能力値 ★

②普通の細剣 装備 ★★

③9Isekai その他 ★

④ポーションセット アイテム ★★★

⑤MP+1 能力値 ★

⑥ただの盾 装備 ★

⑦【魔力上昇】 スキル ★★

⑧カジュの実 その他 ★

⑨HP+2 能力値 ★★

からのスクロール アイテム ★★



計:★1×5 ★2×4 ★3×1 

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 まあ、まだ1発目だから、うん。



<ジョブ【ガチャ師】の効果により、無料で1回ガチャを回すことが可能です。ガチャを回しますか?>



 あぁ、うん、そうそう。

 これも合計12回分になるんだから、意外に大事だ。



 回すことを選ぶと、再びガチャが動き出す。



「……あっ、銅か」 




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ガチャ結果


⑪中級ポーション アイテム ★★


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 この追加分も10連ガチャの続き・延長として扱われるのだろう。

“●中級ポーション”という表記じゃなく“⑪中級ポーション”と記されていた。


 まあ10連引いたらおまけで1回引けるって効果だからね。 



「……ポーションか。被ったな」



 さっきの10連で出た“④ポーションセット アイテム ★★★”が、そもそも中級ポーションと中級MPポーションを組み合わせたものだった。

 なので、実質ダブりともいえる。


 うーん。

 しょっぱいスタートだ。



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「でもまだ11回分、10連を回せるんだ。次に行こう……」


 

 気落ちしてしまったのは事実だが、スキルもあったので完全にハズレばかりじゃない。

 そうして自分を励ましつつ2回目の10連を開始すると、変化があった。



「……えっ? 嘘ッ、あっ、“金”キタっ!?」



 飛び出した結晶の中に、眩いほどの輝かしい色を見つける。

 一気にテンションが最高潮に。


 そのドキドキが冷めないまま、興奮した気持ちでガチャ結果を確認する。



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ガチャ結果


①耐久ポーション アイテム ★★

②黒パン その他 ★

③敏捷+1 能力値 ★

④【魔術師】 ジョブ ★★

容量キャパシティー+1 能力値 ★★

⑥敏捷の指輪 装備 ★★★

⑦500Isekai その他 ★★★★

⑧下級MPポーション アイテム ★

⑨下級MPポーション アイテム ★

⑩魔法耐久+1 能力値 ★



計:★1×5 ★2×3 ★3×1 ★4×1 

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 ――違うっ、そうじゃない!

 

 

 いや、“⑦500Isekai その他 ★★★★”も貰えるのはもちろん嬉しい。

 この2回分、400Isekaiを上回るプラス収支になるからだ。


 でも求めていた★4じゃなくて、素直に喜べない感が凄い。

 

 もし★4が出る確率がこれでリセットされていたら、逆に何で出てきたんだと荒れてしまうかもしれない。




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ガチャ結果


⑪MP+2 能力値 ★★


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 追加の無料ガチャもまあ違った。

 でもMPはなんぼあってもいいもんですからねぇ~。

 

 うん、これは素直に嬉しい。



現在保有Isekai:2559


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ガチャ結果


①筋力+1 能力値 ★

②4Isekai その他 ★

③ただのブーツ 装備 ★

④薬草 アイテム ★

⑤魔力+1 能力値 ★

⑥【HP自動再生】 スキル ★★★

⑦下級ポーション アイテム ★

容量キャパシティー+1 能力値 ★★

⑨カジュの実 その他 ★

⑩空のスクロール アイテム ★★



計:★1×7 ★2×2 ★3×1 

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「やべぇよ、しょっぱ過ぎるって……」



 全然ダメだ。

 10連で確定の★3はありがたかったが、★4の異世界奴隷が出る気配が全くない。



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ガチャ結果


⑪筋力ポーション アイテム ★★


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「…………」



 これで33回分は引いてんだぞ?

 クッ、これ、本当に出んのか?


 確率ちゃんと倍になってんのかよ。


 ……ダメだ、気持ちがすさんできた。


 ガチャ廃人への道を着々と歩んでいる気がする。



「あの、ご主人様? 少しお休みになられたらいかがですか?」



 先行きを心配してか、ソルアが恐る恐るそう提案してくれた。 

 まだガチャを始めて10分と経ってないが、それほど疲労した顔に見えたのだろうか。



 ……まあ1回1回、引くごとに何か大事な物が無くなっていく感覚はあったけどね。



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「……休憩は大丈夫だけど。少し目線を変えるってのはありかもしれない」



 ソルアの提案そのままではなく、ガチャを引く過程をちょっと変更してみることにした。

 


 突然だが、ガチャには様々な宗派が存在する。

 

 単発で引いた方が大当たりが出やすいとする単発教。

 特定の時間帯が当たりの出やすい時間だとして、その時間帯を狙いガチャを引くタイムテーブル教。

 あるいはガチャとは無縁な、無欲の友人・家族に引いてもらう無欲教などなど。



「――ソルア、一緒にやってくれ!」



 俺はだから、ガチャからは一歩離れた立ち位置にいるソルアの協力を仰(あお)ぐことにした。

 無欲教こそ絶対の宗派なり!



「えぇっ!? あっ、えっ、一緒に!? な、何をやるんですか!?」



 んんっ?     

 えっ、ソルアさん、今“やる”のイントネーションおかしくありませんでしたか!? 

 

 顔真っ赤にして慌ててるけど、君は一体何を想像してんの!?



「……あっ、あぁ。ガチャを、ですか? そ、そうですよね、はい! わかってます、私、全部わかってましたから!」


 

 凄い食い気味に言うじゃん。

 ……そこまで言うなら追及はしないけども。



「ですが、ご主人様のガチャは、スキルの能力なのですよね? 私が介入できるものなのですか?」



 確かに、ソルアの言う通り。

 ガチャを回す際は選択肢が現れ、回すかどうかの決定を求められる。


 念じるだけでも“はい/いいえ”の選択は可能だ。



 だがそれとは別に、指でタッチする方式でも選べる。



「それで俺が押すのを、ソルアに手伝って欲しいんだ」



 説明すると、ソルアは納得したというように頷く。

 そしておずおずと、俺に近づいてきた。



「わ、分かりました。ご、ご主人様がよろしいのでしたら、その、はい。……それでは、失礼、します」



 そっと背中側に回る。

 そしてピトッと抱き着くようにして、俺の体にくっついてきた。


 

 ――あっ、うわっ、これ、予想以上に恥ずいっ! 



「こ、これで、よろしいでしょうか?」



 右腕が伸ばされ、俺の手の甲に重ねるようにして優しく置かれる。


 ソルアの手の柔らかさもそうだが、この背中に当たってる二つの膨らみぃ~っ!

  


「あっ、あぁ。それで、ゆっくり、言う通りに動かしてくれ」



 俺の指を“はい/いいえ”の選択肢がある場所まで持っていけるよう、言葉で誘導する。

 ソルアはその指示に忠実に従って、俺の手を持って動かしてくれた。



 ヤバい柔らかいフニフニぃぃ……!


 

 だがこうして、他のことに思考の大部分が割かれている。

 それを頭のどこかで、ちゃんと実感できていた。

 

 

 ソルアという無欲な他者の力を借りられている。

 それにプラスして俺自身も、当たりを引きたいという欲望をうまく追い払えていた。



 無欲の重ねがけで、どうだ!




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ガチャ結果


①HP+4 能力値 ★★★

②中級MPポーション アイテム ★★

③黒パン その他 ★

④【戦士】 ジョブ ★★

⑤器用+1 能力値 ★

⑥7Isekai その他 ★

⑦薬草 アイテム ★

⑧筋力の腕輪 装備 ★★

⑨下級ポーション アイテム ★

⑩MP+1 能力値 ★



計:★1×6 ★2×3 ★3×1 

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「ダメか……」


「ダメでしたか……」



 結果は惨敗。


 まあ、そうだよな。

 ソルアの協力を得られて★4が手に入るなら、毎回頼むわ。


 それで★4もゲットできて、更にソルアと合法的に密着することまでできちゃって……。


 ……うん、それは流石に夢あり過ぎだろう。


   

<ジョブ【ガチャ師】の効果により、無料で1回ガチャを回すことが可能です。ガチャを回しますか?>



 ああ~はいはい。

 どうせ今回はハズレでしょう。



 そんなどこか悟ったような軽い気持ちで、無料分を回そうとする。



「えっ? あっ、きゃっ――」


「うわっ、ごめん――」



 ――だが、ソルアが未だに自分の手を、俺の手に重ねたままだった。



 タッチする方式で。

 しかし今度は自分で選択しようとして、そのままソルアの手ごと体を引っ張る形になってしまう。

 ちゃんと“はい”に触れた感触はあったが、それどころではなく。


 下手くそな背負い投げをしようとして失敗したみたいに、ソルアと一緒に倒れこんでしまった。



「っつ……だ、大丈夫か?」


「は、はい。申し訳ありません、直ぐに退きます!」



  

 お互いケガはなさそうだが、とても微妙な雰囲気に。

 ガチャも失敗して、その後不運な形で転んで……。


 この先の結果を暗示しているようで、とても気分が滅入ってしまう。


 

「……ん? あれっ?」



 だがそこで、異変に気付いた。


 えーっと……。



 ――金色?




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ガチャ結果


⑪アトリ・ローウィラル 異世界奴隷(女) ★★★★


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 ――当たってるぅぅぅぅぅ!?  



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