第23話同僚side

≪ノアァァァ!!!愛してるよ~~~~っ!!!!≫


≪僕には君だけだぁぁぁぁぁ!!!≫


≪結婚しようぅぅぅぅぅ!!!≫




 王宮の門前で叫び続ける変人の声が室内に響き渡る。

 はっきり言って、う・る・さ・い!


「ねぇ、何アレ」


「ライアンさんが王宮の門でノア先輩への愛を叫んでいるんですよ」


「それは分かるわ。私が言いたいのは、何でうちの職場魔法薬研究所に響き渡っているのかってことよ!しかも大音量で!!それと何でライアンは王宮門で叫んでいるの!?」


「それは単純にライアンさんが謹慎中だからです。登城することを許されてないんですよ、あの人。だからあそこで叫ぶしかないんですね。因みにここだけ大音量で、他が全く聞こえないこと知ってましたか?」


「え?! し、知らない。あっ!そういえば廊下に声なんて聞こえてこなかったわ!!」


「ライアンさんが魔術を駆使してこの場所限定で響かせているらしいですよ?他の部署にも迷惑をかける訳にはいかないからって。それに仕事の邪魔をしてはいけないとも言っていたみたいですね」


「あの男にそんな気遣いができたのね」


 そっちの方が驚きだわ。


「まぁ、それは建前で、実際の処は王宮中に大音声すれば苦情の嵐は必須。しかもその矛先がノア先輩に向けられる可能性も考慮した結果でしょうけど」


 あーそういうこと。


「なるほど。よく分かったわ」



≪僕の愛は永遠だ~~~~っ!!!!≫


 考えなしの行動じゃないことは分かったわ。 

 でもね、アホなことに魔力を使うなと言いたい。魔道具の音声拡大機じゃなくて自分の魔力量を膨大に使っての荒業。流石は腐っても最優秀と謳われる魔術師。なんであのアホがあれだけの魔力量を持ってんのよ?どう考えても才能のムダ使いだわ!私に少しよこせ!!


「それにしてもライアン。あんな細かい魔術が使いこなせたのね」


 意外だった。

 魔術師として凄い男だけど、細かい術式は個人のセンスがものを言う。ライアンは大雑把だから派手で大掛かりな術式は大得意。しかも、普通は大勢で使いこなすものを一人で出来ちゃうんだもの。もっとも、その反面、繊細は術式は壊滅的だったりする。


「元々ですからね」


 そう言って肩をすくめるクリスに相槌を打ちながら私は溜息をつくしかなかった。できるけどやらないタイプだったわけね。それもムカつく。


「お陰で苦情が言いにくいんです」


 確かに。

 ライアンの迷惑行為はうちだけに厳選してる。ここだけ集中させて他の処には一切声が届かないように配慮している。そのせいで表立って怒る人間がいない。本当にこういう事には頭がまわるんだから。


「ノアが居ないこと知らないのかしら?」

 

「知らないでしょうね。ノア先輩が大事を取って休職中なのはことですから」


 シレっと言っているけど、それってライアンはノアの関係者じゃないと言っているも同然なんだけど。

 

「ライアンに誰も伝えてないのね」

 

「? いう必要がありますか?。あの人の自業自得です。ノア先輩がバッシングされている時でも『酔っぱらって記憶ない』とか『愛する恋人としか結婚しない』としか言わないような人ですよ。自分の気持ちが一番大事。癇癪を起こして周りを威嚇するだけ。ノア先輩の気持ちとか、フォローとか一切ありませんでしたからね。ない事ない事書かれた記事だってライアンさんのポケットマネーでどうとでもなったでしょうに。それをするという考えさえなかった人です。ノア先輩の今を教えてあげる必要は全くありません」

 

「クリス、あなた結構怒ってたのね」

 

「当然です!ジュリア先輩もでしょ?」

 

「まぁね。流石に記者連中も王宮内には入れなかったみたいだけど、ずっと張り込んでたみたいだし。あんな嘘っぱち記事を書かれたらね」

 

「迷惑極まりない話ですよ。でも、全部嘘って訳でもないようです」


「どういうこと?」


「インタビュー記事、学院の在学生らしいです」


「はぁ?!ばっかじゃないの?学院が一番ノアの味方しなきゃダメでしょ?」


 何で教師は止めなかったの?

 だってノアの家が学院に寄付しまくってくれているお陰で成り立っているようなもんでしょ!!

 一番のパトロンの御機嫌を損ねてどうするの?バカなの?死ぬの?




 


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