第14話とある学生side
一つ上のエラ先輩は物凄く面白い。
何て言うんだろ?
発想が斬新っていうか、行動が突飛というか、とにかく僕が思いつかない事を次々とやっていくんだ。魔術学院を卒業したら魔法道具研究所に就職する予定だけど、最近は魔法薬研究所も視野に入れているんだ。エラ先輩は魔法医師だからね。先輩からアドバイスされた物を製造するのも悪くない。この前、造った
「ローガン、大変な事になった」
「? 先生?」
「学院の寄付金の大半がなくなる」
「…………はぁ」
寄付金なくなるからなんだっていうんだろ?
学生の僕や先生には関係ないことだし。そういった小難しい事は学院を運営する側や理事長たちが考えることじゃない?
こう言っちゃあ悪いけど雇われ教師の先生がそこまで深刻になる必要はないよ。
「他の生徒には昨日伝えたんだが、ローガンは昨日風邪で休んでいたからな」
うっ!
実は仮病です、なって言えないよね。
エラ先輩との共同開発したものを学会に発表しようと先輩の許可を貰いに行ってたなんて。なんでか先輩はあの偉大な発明を世間に公表しようとしない。勿体ないよ!あれは革新的な発明
なのに!!
「寄付が無くなったことで学院の運営に支障が出る。ローガン、君は学院の奨学金制度を受けているな」
「え、はい」
「恐らく今月いっぱいで停止するだろう」
「は?!」
「この学院で使用している最新の備品や機材は勿論の事、希少な素材や資料など全て寄付で賄っているんだ。それが殆どなくなるとなれば質を落とすか、または今やっている研究を打ち切らざるを得ない」
「なにそれ?!嘘でしょ!?」
研究が出来なくなるだなんて!
ありえない!!
「学院側は早急に新しい出資者を見つける必要があるだろうが、その前に奨学生たちが奨学金の打ち切りで学院を去る生徒が出てくるだろう。なにしろ、学院の授業料だけでも一般階級の生徒には払いきれない額だ。幸い、と言っていいのか。ローガン、君は今年で卒業だ。個人の支援者を見つける必要がある」
「そんな……」
「他の生徒は既に動いているんだ。ローガンも急いだ方が良い」
「で、でも支援者だなんて……」
「そう難しく考えなくともローガンは優秀な魔法道具を生み出している。援助したいと申し出る者は多いはずだ」
「……僕は地方の孤児院出身だから、王都で親しい大人なんていないし……そもそも、そんな金持ちの知り合いなんていませんよ」
「そうか。なら、先生が支援してくれそうな人物に当たろう。先生も君の研究を高く買っているんだ。必ず君の役に立つよう力になろう」
「先生……。分かりました、お願いします」
後日、先生が出資してくれそうな資産家や貴族を紹介してくれた。何人かに会って、その中から条件のいい人を自分で選んで決めろと言われた。そして、僕はとある貴族を選んだ。
僕の支援者であるコナー子爵はとにかく注文が多い。
学生だからある程度考慮してくれてるみたいだけど……それにしたって働かせすぎ!
しかも、コナー子爵の持っている研究施設も今一だしさ。学院の方がよっぽどいい設備が揃っているっていうのに!!
まぁ、その分の費用は一切惜しまない。
僕への金だって一番多く提示してくれてた。金に釣られた訳だから文句も言いにくいんだよね。仕事だって割り切っちゃえば楽だけどね。
「ローガン、あなた大丈夫なの?今、学院が大変だって聞いたけど本当なの?」
あ~~。エラ先輩の耳にも入っちゃったんだ。
学院は箝口令敷いているけどやっぱりバレるよね。
「うん、まあね」
「研究の方は大丈夫なの?」
「え?うん。一部取り止めしたものもあるけど、僕は大丈夫かな?支援してくれる人も見つかったし。今のところ問題はないよ」
「そう、良かった。奨学金を止められたって聞いたから心配したわ」
「僕は今年で卒業だからね。大変なのは後輩たちの方だよ。奨学金が打ち切りになって親が借金してまで通わせている学生もいるからね。まぁ、支援者の要望の物を優先して造らなくっちゃならない事は不満だけどね。ま、それも卒業までの我慢さ」
「…………ローガン、それ本当に大丈夫なの?」
「え?なにが?」
「支援の見返りを要求されたり……ローガンは優秀だから卒業後には自分の所へ来ないかとか言われたりしない?」
あーー。あるかも。
でも、そんなの相手にする必要もないよね。
「大丈夫だよ。契約書にはそんなこと一切書かれていなかったもの。ま、仮に契約不履行になったとしたら、それは相手の責任だしね」
「そ、そう?なら安心ね」
「ははっ!先輩は心配し過ぎ!」
エラ先輩は心配性だなぁ。もう! 確かに最初は不安だったよ。でも一度契約を結べば相手が勝手に破るなんてことはできない。例え、それが法外な額の要求だとしてもね。それに相手は貴族だ。もし万が一、約束を違えるような事があれば大変なことになるのはあっちだよ。だから僕が恐れることなんて何一つない!
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