第11話男爵令嬢side
ホテルでの一時は最高だったわ。
ライアンに優しく愛され、時に激しく求められて。
ああ!
あああああ!!
これで彼は私の物だわ!
神様!神様!神様!
どうか私にライアンの子を授けてください!
彼となら誰よりも幸せになれる。
愛し愛される夫婦。
可愛い子供達。
あの男には絶対手に入れられないもの。
私ならライアンに用意してあげられるのよ!
――神様、どうか彼の子供を授けて下さい!
ライアンとの夢のような一夜。
その日から数週間後に、私の体に異変が訪れた。
食べ物の匂いで吐き気を感じるようになり、睡魔まで襲ってくるようになった。微熱が続き食欲もなくなった。そして月のものが全く来なくなってしまった。
私は歓喜した。
だってライアンとの子供に間違いないもの。
病院で検査してハッキリと「妊娠」と診断された時は嬉し過ぎてどうにかなってしまいそうだった。
すぐにライアンに伝えないと!
ああ!そうだわ!喜びを家族で分かち合わないと!
キング侯爵に伝えると物凄く喜んでくれたわ。
どうやら、侯爵もあの男の存在を苦々しく思っていたみたい!
やっぱりそうよね。
男じゃ、子供はできないもの。仕方ないわ。誰だって孫の顔を見たいものよ。特に貴族なら自分の血筋を大事にする。さぁ、邪魔者をさっさと追い出さなくっちゃ!私達の素晴らしい未来にあの男は不要よ!必要ないわ! それにしてもあの男があんなにもあっさりと承諾するなんてね。もっとゴネるとおもったんだけど。
でも良かった!本当に良かった!やっと私の苦労が報われる時が来たんだから! 私はライアンと一緒になって、幸せな家庭を築くの!父も「よくやった」と言ってくれたわ!
お腹が目立ち始める前に結婚式を執り行わなくっちゃ!
ライアンが変な事を言っているけど気にする必要はないって侯爵も言ってたわ。今はとにかくお腹の子供優先だからって。父と侯爵は気が早すぎるわ。もう男の子用の遊戯を買ってくるの。産まれてくるのはまだ先なのにね。ふふ。侯爵家の侍女頭の人が「御息女だったらどうなさるんですか。女児の物も一緒に準備するべきです」とか言ってプリプリ怒ってたわ。なんでかしら?生まれてくるのは「男児」以外ありえないっていうのに。
幸福に酔いしれていた私は気付かなかった。
ノア・タナベルを愛する者達の怒りを――――
そして、彼を愛する者達は地位と財産をこれでもかと言う程持ち合させていた事に。
平民の暗い男。
貴族に、それも侯爵家に楯突くことなんて出来ないと高を括っていた。
本当に知らなかったの。
彼がタナベル商会の息子だってことを。
貴族すら恐れる商人に息子だってことを。
私が気付いた時には味方が誰もいなくなってから。協力者たちの末路を知ったのは更に後のこと。
ノア・タナベルは決して手を出してはいけない相手だった。
決して怒らせてはならない存在。
私達が「彼」の逆鱗に触れてしまった事に気付いた時は既に遅かった。
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