ミス・アンラッキー7/ラッキー7に祈りを込めて(KAC20236参加作品)

小椋夏己

ミス・アンラッキーセブン

 私のクラスの尾崎七菜おざきななは、かなりかなり、その名と正反対に、本当に、掛け値なしに運が悪い子だと思う。

 この間なんか、コンビニで肉まんを買って、食べようと2つに割ったら中にあんが入ってなかった。初詣でおみくじを引いたら3年連続大凶を引いたそうだ。

 先日の年度末試験では開始の掛け声と同時にシャープペンシルが壊れて部品が飛び散っていたし、そういえば秋の運動会の徒競走の時、スタートの直前に運動靴の靴紐くつひもが切れていた。


「本当、名前負けってか、存在負け?」


 思わず本人にそう言ってしまったが、これを聞いてもらったら私がそう言った意味も分かるだろう。


──尾崎七菜、7組、出席番号7番、住所が7丁目7の77──


 名前からずらっと7が7つも並んでる、ぱっと見るとラッキーセブンの塊のような存在だ。


「え~そうかなあ、私は自分では結構運がいい方だと思ってるんだけどなあ」

「どこが!」


 聞いてたクラスの子たちがそう言ってドッと笑い、


「肉まんに餡が入ってなかったじゃん」

「でもさ、それってかなりレアじゃない? そんなのが当たるなんてラッキーだよ」

「ええ~じゃあ、おみくじ連続大凶は?」

「大凶ってさ、今が一番悪いってことなんだよ。だから、後は上がっていくしかない運気なの」

「試験開始と同時のシャーペンは?」

「あれ、先生が部品拾ってくれて、ほとんど事なきを得たんだよ? あれでリラックスしてテストに臨めたからかな、いつもより点数よかったの」

「運動会の靴紐は?」

「スタートしてからだったらきっと転んでた、本当、運がよかったよ!」


 と、こんな具合で本人はいつもニコニコ、本気で自分は運がいいと思っているようだ。


 でも「塞翁が馬さいおうがうま」「禍福は糾える縄の如しかふくはあざなえるなわのごとし」なんて言葉もあるから、人間の運、不運なんて結局は心の持ちようなのかも知れない。

 何よりも、七菜のその性格、そう思えるってのは本当に一番運がいいのかも知れないな。


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