秋 その二
家屋や建物が点在する中をしばらく走って、車を停める。木造の雑貨屋さんがあった。ここは昔ながらの個人経営の雑貨屋さんだ。
途中の休憩でつまんだり、帰ってから食べるスナック菓子をここで買い求める。
お店を営まれるご婦人と、
「さむうなってきたなあ」
「そうですねえ」
と、軽く雑話をして、車に戻って走り出す。
夜暗い中灯るお店の灯かりは、安らぎの光りでもあった。好きなこととはいえ、夜の遠出はやっぱり緊張を強いられる。時々緊張をほぐすのも大事だ。
この道は主要国道とはいえ、山間部になれば交通量もほとんどなくなる、と思っていたが。案外多かった。
時には大きめのバイクともすれ違う。ツーリング帰りか、それとも行きか。
前を走る車に追いついてしまうこともある。旅は道連れ世は情け、と。しばらく並んで走ることも珍しくない。
そこが長年をかけてつくられた生活空間であることを物語ることでもあった。
今は遭遇はなく、1台で走行だ。
ふと、何かが横切る。小さな動物のようだ。
「ネズミか」
野ネズミが全力疾走で道を横切ったのだ。
それからしばらくすれば、道端で車から逃げようと全力疾走するなにかがいた。
「ウサギか」
白線の向こう側の路肩で茶色の野ウサギが走っている。
そうかと思えば、道に何かいる。ブレーキを踏み減速すれば。
「鹿だ」
鹿が、大きな角のある牡鹿が、のっそのっそと道路を横切ろうとしていた。ヘッドライトで横顔の表情もわかり、目もはっきりと見えるほどに照らされているのに。意に介する様子もなく、悠然と道路を横切って、暗い土手へと消えてゆく。
暗くなったとはいえ、まだ寝るには早い時間帯で、動物も活発に動き。なかなか賑やかなことだった。
なんだか巨匠のもののけ映画の中に入り込んだような気持だった。
もちろんのんきに動物がいるなーと面白がるばかりでもない。
幸いオレは動物を跳ねてしまったことはないが。無残なことになった姿も見かける。さらに酷いのは、カラスやトビが屍肉を求めて道路に降りて死骸をついばんだり、持って帰ろうとして飛び上がるも重くて落としてしまう、なんてのも見たことがあり。
これが自然だと見せつけられる思いでもあり、色々な意味で、巨匠の容赦のないもののけ映画を連想させられたりする。
そこに加えての自然災害。防ぐに防げず、起こることを前提で備えなきゃいけない。
「間借りさせてもらってんだなあ」
オレは御大層な自然観などないが、こういったことを目にしていくうちに、人間は自然に間借りをさせてもらって生活をしているんだと思うようになった。
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