第27話・ベヒモス戦


 歩き始めて3分後、俺の魔力視によってケイゴ達がベヒモスとの戦闘を開始したのが分かった。

 まあ、多分最初は苦戦するだろうけど何だかんだで勝てるだろと楽観的に考えながら俺は一応周りの警戒をしながらケイゴ達の戦闘を魔力視で見守る。


「あのう。そう言えば襲ってくる魔物って一体何なのですか?」

 気の弱そうな男子生徒が俺に質問をしてきた。それに対して俺はまあ特に深く考えずに答えた。否、答えてしまった。


「ん?普通にベヒモスだけど。というかもう襲ってきてるよ」

「へ?待ってくださいベヒモスってあの、ベヒモスですか?10メートル以上の巨体を持ち、街一つ簡単に滅ぼせるほどの化け物、ベヒモスですか?」

「そうだけど、どうかしたのか?まあケイゴ達がいるし大丈夫やろ?」

「いや。待ってください。ベヒモスですよね?そんな化け物を相手にするなんて聞いていませんよ。というかそんなことしたら皆死んでしまいますよ。先生を呼びましょうよ」

 言われてみればその通りの事を言われてしまった。

 まあ、確かに常識的に考えてベヒモスなんて大物を学生だけで討伐させようなんて正気の沙汰じゃないよな。

 なんかというか確実にライトノベルの価値観のせいで常識的な価値観ってやらが少々、いやかなり狂ってたかもな。

 まあ大丈夫だろうけど。それとそもそも論として先生を呼ぼうにも先生どっかに走って消えちまったから無理やしね。本当にどこ言ってんだが先生方は。


「いや。そんな事俺に言われても困る。まあ。Sクラスの皆はかなり強いから大丈夫だよ。それよりも巻き込まれたくなかったら。とっとと歩いて避難をする」


「は。はい。分かりました」

 何かまだ少し不服そうだが一応は納得してくれたのか歩き出す。

 さてと、じゃあ俺は歩きながらケイゴ達VSベヒモスを見させていただきますか。


 えっと、何々。

 ケイゴとマッスルトとミスルスで前衛を張ってCクラスの人は逃げてますね。

 ほんで残りのケイゴのハーレムメンバー二人が後衛と。

 なるほどなるほどね。取り敢えず今こっちに全力で逃げているCクラスの人と合流をするか。


「皆少し止まってくれ。今こっちにベヒモス戦から逃げたCクラスの人が来ている。優しく迎えて上げてくれ」

 俺のその言葉を聞いて少し不思議そうにするが、1分程で逃げてきたCクラスの人が来る。


「お前、何だあの化け物は話が違うじゃないか。ふざけてるのか俺を殺す気か」

 いきなり俺の胸ぐらをつかんで持ち上げて怒鳴ってきた。いや。そんなことを言われてもだろう。つかコイツ第三者視点で見たら小学生低学年の胸ぐらをつかんで怒鳴ってるクソ野郎だぞ。ちょっと痛い目を見て貰いますか。

 俺は普段少し抑え気味の魔力を解放して威圧をした。


 「ひ、ひひひギャアアアアアア」

 俺の胸倉をつかんでいたクソ野郎が情けない声を出して手を離す。

 

 「なあ。あんた別に俺がお前がベヒモスから逃げたことを責めるつもりはない、ただなあ、だからといって俺みたいな子供に向かって怒鳴って胸倉を掴んでいい何てことにはならないのは分かるだろ?」

 取り敢えず適当に脅してみる。その結果みっともなくお漏らしをして、泣き出す。いやはや恥ずかしい恥ずかしい。


「おい。早くお前らも列に加われ、ベヒモスとの戦闘に巻き込まれたくないだろ」

 俺はそう言って逃げてきた奴らを列に加えさせる。因みにお漏らし野郎も足をがくがくに震えさせながら列に加わる。


「さてと。じゃあ行きますか」

 そう言ってまた歩き始める。

 まあただ俺が魔力を解放して脅しをかけたせいで、皆俺に対しての恐怖心が結構上がって、順応になったのか、さっきよりも確実に歩くスピードは上がった。

 まあ、そんなわけで魔力視を使ってベヒモス戦を確認しようかと思ったが一旦辞めて、サクッとこいつらを避難させた方がゆっくりベヒモス戦の観戦できると思ったので、適当にある程度の広さがある場所を探し始める。


 1分後。


 ここから5分程歩いた所に良さげな感じで開けた場所があったので。そこまで案内させる。


 5分後。


 取り敢えず案内を終わらせたので。今度こそゆっくりベヒモス戦を観戦し始める。

 まあ、幸いここら一帯には魔物が見当たらないし、(俺とマッスルトにミスルスの肉狩りでいなくなってるだけだが)後はまあ戦えるCクラスの人もいるし。基本的には俺が護衛しなくても大丈夫そうかな。多分。知らんけど。うん、何というか非常に素晴らしいね。


 というわけで観戦、観戦と。


 えっと、何々今の所は両陣営特に怪我もなく互角にいってますね。ただ、ベヒモスの方は魔物だからか分からんが。全然体力を消費している感じはないけど、ケイゴ含めSクラスの面々は結構魔力消費と体力消費がキツそうだな。

 これは少し危ないかな。

 このまま体力切れ、魔力切れとなったか殺されるな。いやまあ流石にケイゴが覚醒するから大丈夫だろうけど。もしも覚醒しなかったら少しバレるリスクはあるが遠距離からの呪殺系魔法で終わらせるてあげるか。


 そんなこんなで観戦をすること10分。

 遂にケイゴ達の魔力と体力が尽きた。

 これはケイゴの覚醒に賭けるしかなないなって思っていたら、ベヒモスが大技としていきなり土で出来た槍を雨の様に降らせてきた。それも大量にだ。

 今回の戦いで初めて見た。これは完璧に勝負を決めてきてるな。流石に俺が援護に入るしかないかなって思ってた時だった。


「障壁魔法・魔法障壁」

 いきなり全員に障壁がかかって、土槍の雨を無効化させる。まさか・・・この魔法は・・・俺は慌てて魔力視の範囲を広げたらそこには、天使もといマリアンヌちゃんがいた。

 そして。その隣にはもちろん俺の嫌いな、いや大嫌いなアシュラ君もいる。


 そんなアシュラ君は一切何の躊躇いもなく、何を言ってるかは分からなかったが、とにかく叫びながらベヒモスに向かい、飛びあがり、その大きな目ん玉一つを剣で突き刺して潰した。

 完璧なる奇襲であり、ベヒモスがアシュラ君という存在を認識していなかったから成功した感じだが、でかすぎる。いやはやケイゴの覚醒ではなく仲間が来るという形で決ましたか。

 まあこれはこれであるあるの展開ですな。


 さてと、これはワンチャン皆が力を合わせたら勝てそうだな。

 さあどうなるか楽しみだ。


 ―――――――――――――――――――――

 補足説明

 ベヒモスをまともに討伐しようと思ったら100人編成の騎士団と30人の魔導士が必要です。

 それでもかなり犠牲が出ます。

 それくらいの化け物です。

 それと互角に戦えているSクラスのメンバーが狂ってるだけで普通ならば簡単に殺されています。

 Cクラスの生徒が逃げたのも無理ないです。というか10メートル以上の巨体を持った化け物を前に逃げずに立ち向かうなんてまとま神経じゃなければ出来ません。

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