それは否定の接頭辞 【KAC20236】
結音(Yuine)
あん
「あの
−−−
彼女が家から出ると、
雨が止んだ。
風が止んだ。
雷の予報も出ていたのに、
静かになった。
−−−
彼女が静かに微笑むと、
散歩の犬も、笑い返した。
お婆さんが、会釈した。
−−−
彼女は何も望まないのに、
その手に好機が訪れた。
手伝うと名乗るものさえ訪れた。
−−−
彼女は、ただ そこに居るだけ。
居るだけで、
彼女の存在は、許された。
−−−
「許さない。許さない。
ワタシを置いていくなんて。
ワタシは、アナタと居たいのに。
いつも、くっ付いていたいのに」
「離さないで。離れないで。
逃げてかないで。
置いてかないで。
ワタシは、アナタと一緒がいいの」
−−−
彼女の名は、「あん」。
「あん」は、アン。
「あん」は、
Annでも、Anne でもなくて、un-
それは、否定の接頭辞。
「あん」は、
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