ささいなこと

ささいなことが起こった。


ベビーカーに乗る赤ちゃんが蝶々を見て笑ったのだ。


それを目撃した一人の男も笑い出した。


突然のことに周囲の人々が、不審者をみるような目で彼に視線を送った。


女性が彼に声をかけた。


「どうして笑っているのですか?皆が見ていますよ」


男が答えた。


「ささいなことで笑えることを幸せだと思っているからさ。ささいなことで怒り狂う人の方が圧倒的に多いだろう?それにしても、あの子はとても幸せそうだなあ」


赤ちゃんと喜びを共有できる彼を、大人たちは羨ましく思えた。

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