第13話 11時14分 葛藤

 今までの出演者もこのような気持ちだったのだろうか。

 いや……担当PTuberは各月変わっているし、配信対象が僕たちだけというわけでもないはずだ。


 だから……僕は外れのPTuberに当たったということなんだ。


 こいつ……ほんとに分かってるのかよ!!

 ハンドガンは今までいいとこ30万だっただろうが――!


 もともと期待してはいなかったが、理不尽にも程がある。

 いや、このゲームに誠実さを求める僕のほうがおかしいのか……


 僕は思わずメニューを破りそうになったが、机に拳を叩き付けることで事なきを得た。

 机に額を押し付けて荒い呼吸を繰り返していると、徐々に落ち着きを取り戻してきた時にふと頭を過ぎった思い。


 あれ……でもみんな買えないならそれはそれでいいんじゃないのか……?


 ゲームで致命的なのはやはり銃器を使用されることだ。

 100万以下の中に手榴弾があるが、これは完全に撒き餌だ。


 武器は1個で1人まで。

 爆発で複数巻き込んだら電気ショック、下手を打てば自分も死ぬことになる。


 自分は大丈夫。なんて使うやつも配信内で何度か見かけたが、いざ実戦では使うことを躊躇うか、使った結果巻き込みでペナルティを受けているやつばかりだった。

 手榴弾は3発だが、ペナルティは購入時の単位でかかるため、1個目で1人、2個目で2人目を攻撃することもできない。

 ここを勘違いするやつが結構な頻度でいるんだよな……


 茹った頭は幾分冷静さを取り戻しつつも、プリルが実況ではなく、ゲームに参加すればさぞ盛り上がるだろうに、などと怨念は渦巻いたままだ……

 でも、噂で聞いたことがあるはずだ。

 運営ルールに抵触したのか、管理側だったPTuberが参加させられてたゲームの存在を……


 ――ダメだ。そんなことを考えてる場合じゃない。

 かぶりを振り頬を叩く。

 もっと有意義なことに頭を使えと両手を握りしめる。


 そして思考を前に進めるべく探り当てた道。

 他の参加者である。

 ゲームがどこでやるかは分からないが、参加するまでの段階で差をつけるとは考えにくい。

 このホテルはプライベートジェット向けに滑走路も備えているため、前日から当日にどこか遠くへ連れていかれる可能性も否定はできないが、注意を向けるに越したことはない。


 ここに来る前に交わした契約書では、ゲーム前に問題を起こした場合、問題の大小に関わらず人生に別れを告げる旨が記載されていた。

 だが、問題は起こさずとも僕のように浮いた人間がいれば……それは同じように犯罪者プレイヤーである可能性は高いと言ってもいいはずだ。


 見つけて何ができるわけでもないが、人相が分かればどのような人物か想像をすることはできる。

 素人の想像など当てにできるものではないとは言うけど、どんな些細な情報だとしても集めておくに超したことはない。


 さらに言えば僕もこの場違いなパーカー姿は変えておくべきだと言うことも理解した。

 1階にアパレルショップも入っていたことを思い出した僕は居ても立っても居られず、1階へ走り出した。


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