第9話 聖女救出 前半

 緊急でメガネ君を呼び出して、私はカメラを回させる。説明は簡潔に聖女を救出死に行くと伝えると、メガネ君もテレビのニュースを見ていたそうで。

 聖女様を救う英雄になれると喜んでいた。メガネ君はわかりやすいミーハーだよね。


 カメラのスタンバイを終えて、ダンジョンの中を写していく。


「今日は、急遽臨時配信だよ。さっきの動画を見てくれた人はありがとう。そんでここから見てくれる人はよろしく。アクゼだよ。今日は緊急ということで、ちょっとしたイベントだ! なんと、聖女様がモンスターパニックに巻き込まれて行方不明になっているらしいんだよね。だから、救出を兼ねて調査していこうと思います!」


 コメント欄が盛り上がる。他の配信者も数名ではあるけど同じような事をしている。ダンジョン内の映像が見えるとコメント欄に書き込まれている。


「さて、聖女様たちはどこにいるのか?」


 洞窟方のダンジョンで下層に行けば行くほど敵が強くなって行く。最下層は地下百階とかいう噂で、私も五十ぐらいまでしか行ったことがない。

 本日の進行具合と、大人数だったこともあり、そこまで深くは潜っているとは思えない。


 他の配信者も同じ考えみたいで、上層の捜索から始める様子なので私は一気に十階下層に降りることにした。


「上層階は他の人に任せて一気に十階降りたよ。今の所、聖女様たちの姿は見えないね。さすがは高ランクパーティーが護衛についていたから、この辺はいないかな?」


 コメント欄に返事をするわけじゃ無いけど、解説はしておく。ついでに階層を下りる際には階段の位置などもマップも公開することで今後の初心者用の動画としての役目も同時に作っておくのだ。


「さぁやって来たよ。二十階層をからは中級者向けになって魔物も強くなるから注意が必要。出てくる魔物の種類や魔物同士の連携なんかも冒険者ギルドで予習していくんだよ。私も初心者の頃は冒険者ギルドにはたくさんお世話になったものだよ。あそこにしかない冒険者だけの図書館とかマジで凄いから行ってみて」


 私は連携する魔物を倒しながら、止めをメガネ君に任せてレベルアップをさせておく。ヒーラーはレベル上げが難しいジョブなので、聖女様もたくさんの護衛を付けてレベル上げをしていたというわけなのよね。


「僕がどんどんレベル上がってます」

「この辺はザコだからね。それでもレベルが低いメガネ君なら簡単にレベルがあるでしょ」

「はい!」


 ライブ中でも、聖女様にどうして冒険者がついていたのかの説明をしてあげると、コメント欄でも知らなかった人が多いようだ。

 ただ、お姫様プレイと笑っていた人たちも、バカにできないことがわかってくれる。


「さて、地下三十階だね。ここからは中級でも結構厳しくなるから、冒険者をしている視聴者も来たことないんじゃない?」


 私の問いかけに、コメント欄が初めて見るとか、20階層以下でも十分に凄いとコメントが流れる。

 それでも20階層の間は、どこにもそれらしい形跡が無かった。


「どこにいるんだろうね? 流石にそろそろいると思うんだ」


 私は大規模パーティーが、来るとすればの目星を立てている。ただ、あれだけの高ランクがいて、ダンジョンパニックにハマったからと言って危険になることは珍しいと思ってしまう。


「よし。ここで罠を張って」

「何をしているんですか?」

「ちょっとね。あっ、予備のカメラ貸して」

「はい」


 私はいくつかカメラを設置して岩場へ隠しておく。


「よしよし。それじゃ行こうか」


 私は改めてカメラの前に立って状況を説明する。


「聖女様を護衛していた大規模パーティーの痕跡を見つけたよ!」


 今見つけたばかりという状況を装って、私が大規模パーティーの落とし物を指を差せば、コメント欄で誰よりも早い発見とコメントされる。

 どうやら他の探索冒険者はここまで来れていないようだ。


「早速、この先に進んで行くから。みんなも一緒に確認してね」


 ダンジョンの道が開けていくとすり鉢状の空間になっていて、入った場所から下を覗くと人らしき一段がモンスターと戦っている。


「見て!今も戦っている映像が見えるかな?」


 私の指示でメガネ君が下へとカメラを向けると、ダラダラとした戦闘が行われては聖女が回復をしたり、トドメを指している。

 ピンチではない状態で、ダンジョンパニックが起きているようには見えない。


 冒険者ではない者たちからすれば、モンスターと戦っている時点で十分に凄い光景に見えてしまう。

 コメント欄でも無事でよかったとか、まだ戦っているのかと心配する声が聞こえてくる。


 だけど、一人の冒険者らしき人のコメントで状況は一変する。


「おい。これって本当にダンジョンパニックを乗り越えたパーティーか?明らかに余裕そうで。危機的状況ではないんじゃないか?ダンジョンパニックにハマったのなら、死人も出るし、悲壮感と疲労で。あんな雰囲気でいられるはずがないぞ」


 その冒険者は、悪気があって言ったわけじゃない。単純に疑問をコメントに書いただけ。だけど、それは波紋となり他の冒険者がコメントを載せ。

 また、冒険者じゃない人たちにも違和感を生み出していく。


「聖女様の一団ですか?!救援に来ました!!!」


 私はすり鉢状の部屋を利用して大きな声で、下にいる彼らへ声をかけた。そんな私の声に気づいた一団は驚いた顔をして、次にカメラの存在に気づいて血相を変える。


「お前!何をしているんだ?」

「ですから、救援に来ました。外では聖女一行がダンジョンパニックにあったと大騒ぎですよ!」

「なっ!とにかくカメラを止めろ!」

「メガネ君。絶対にカメラを止めちゃダメよ」

「えっ。はい」


 私はメガネ君にカメラを回してもらいながら、彼らへ近づいていく。


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