第74話

 二人の名前から取って作ったなんて、まるで愛の結晶みたい……と思ってしまったあゆらは照れを隠すのに必死だった。


「も、もう少し捻った名前でもいいんじゃないかしら、キャロラインとか、シャルロッテとか」

「嫌やそんなかぶれた名前、なっ、アキ!」

「ナゥ〜〜イ」

「お、こいつナウイ言うてるで、天才ちゃう」


 子猫と会話しながら百円玉を入れクレーンを動かしては取れずに文句を言うを繰り返す志鬼。

 見た目は大人っぽいのだが、先ほどの小学生たちと変わらないはしゃぎようの彼を見てあゆらは笑いが込み上げてきた。

 ——楽しい。

 敬称をつけず名を呼び合い、変な気遣いをせずしたいことをしたいと素直に言える。

 志鬼はあゆらが今まで積み上げてきたすべてを一瞬で越えて来た。

 

 しばらく経つと、ようやく落とした目当ての景品を志鬼があゆらの前に差し出した。


「ん」

「……何、くれるの?」

「その猫、あゆらにそっくりやろ」

「これが、私に?」


 自分との共通点を探そうと、受け取った目力の強いパープルの猫をしげしげと眺めるあゆら。

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