第8話
放課後になると、広々とした美術室には女生徒たちが集まっていた。
人型の彫刻や洋風の壺など、芸術的なものがところ狭しと並ぶ中、あゆらの描いた絵は大きな金色の額縁にはめられ、前方に位置する白い壁に堂々と飾られていた。
そのキャンパスにいたのは、天使を抱く女神だった。
白と金色が混ざり合ったような神々しい光を浴びた女神は腕の中にいる天使を慈しむ目で見ており、その天使は指しゃぶりをしながら安心して女神に身を任せ眠っていた。
「ああ、素晴らしいですわね、これなら受賞も当然ですわ」
「わたくしも絵に興味がありますの、ぜひあゆらさんにご指導いただきたいですわ」
「皆さんどうもありがとう。私で力になれるならいくらでも」
自身の絵を見つめながら絶賛の声を口にする女生徒たちに、あゆらは得意げに微笑んだ。
その時ふと、あゆらはあることを思い出しスカートのポケットを探った。
「あ……嫌だわ、私、音楽の先生にボールペンを返すのを忘れていたわ」
「あら、それは一大事ですわね」
筋金入りのお嬢様たちにとっては、
「私、返してくるわね、皆さんは自由にしていて、すぐに戻るわ」
「行ってらっしゃいませ、あゆらさん、お気をつけて」
皆に見送られ、あゆらは音楽の授業の際に教師から借りたボールペンを返しに美術室を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます