第6話
硬い質感の黒髪を二つに分け、三つ編みし、薄い丸眼鏡をかけている小柄な少女。
彼女はあゆらの幼馴染である。
しかし、今はもうクラスメイト以下に話すこともなくなっていた。
理由は一つ。
美鈴の家が破綻したからだ。
美鈴の家は江戸時代から続く老舗旅館だったが、経営が傾き、店じまいをした。
それによりあゆらと近所だった家も売り払って引っ越し、今では借家暮らしだという。
その件が起きてから、あゆらは父親に美鈴とは付き合わないよう指示された。
美鈴と仲がよかったあゆらは、最初は不満があったものの、時の流れとともにそんな気持ちも薄れていった。
父親に反発しても無駄なことは小さな頃から刷り込まれているため、無理に納得するしかなかった。
美鈴の両親は家計が苦しくとも娘の生活はなるべく変えたくないと思ったため、無理してもこの学校に通わせていた。
“裕福”と一口に言っても、その中で確実に格差はあった。
決して
あゆらも美鈴を邪険に扱うわけではなく、声をかけられれば無視はせず、席が近くなれば世間話をするようなこともあった。
その証拠に、今美鈴と目が合ったあゆらは少し笑みを浮かべると軽く会釈をした。
それを見た美鈴は、慌ててあゆらよりも深く頭を下げたのだった。
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