第27話 逆葬儀屋VS葬儀屋 4
三人がそこから離れて歩き始めたとき、ごそりと動く音がした。起きたのだろうか。
コノ実は
「やめろ!」
「それはこっちのセリフよ逆葬儀屋!」
切っ先が薄く皮膚を破いて首元に赤い線を引いた。
「せっかく楽になれたと思ったのに、人間に戻されて、嫌なこと全部思い出させられて……あんたは人の人生に入り込んでなにがしたいのよ!」
「なにがしたいって、そりゃ」
「生き直して欲しいとかって言うんでしょうね人の気も知らないでバカみたいにエゴと正義を振りかざして神にでもなったみたいな顔して生きてりゃいいこと有るとか死んだら終わりだとか負けるなとか諦めるなとかいつか報われるとかいつか幸せになれるとかいつかいつかいつかって一生来ないいつかに縋りつかせて糞の役にも立たないたわごとを自動生産機みたいにだらだらだらだら垂れ流すんでしょう!」
彼女の眼は血走っていた。
「自殺するってことは、そりゃとんでもなく不幸なことがあったんだろうって思うさ。だけど話してくれなきゃわかんねえから」
「そうやって! 不幸! って! 括るな! 一言で! お前も不幸だっただろうけど俺も不幸だったんだぜ! みたいな! そういうわかってます! みたいな感じを! まずやめろ! あんたなんか! 自殺したこともないくせに!」
コノ実は荒い息を吐きながら、口元に笑みを浮かべる。
「私になにがあったかって? 同級生に無視されて虐められて家に帰ったら両親二人に暴力振るわれて飯もまともに食わせてもらえなくて勇気を出して児童相談所に駆け込んだらその受付のおっさんにレイプされたんだよ! それでも頑張って生きなさいってか!? セカンドレイプしておいて偉そうに良く言えるな! お前はどうせなにもわかってないくせにわかろうとすることが正義みたいに考えているからそうやって臆面もなく勝手に生き返すなんて言葉が吐けるんだよクソッタレが!」
コノ実は血走った目でしっかりと
おびただしい量の血が
「あはは——」——ごぼぼぼぼぼぼぼっ!
うがいのような音の濁流が
倒れた彼女に向かって懺悔するように、
「うああああああああああああああああああああああ!」
後ろから抱きしめられた。
日はまだ天高く在って、空気の読めない麗らかさを保っていた。太陽はまるで、なんでこんな日に死んでしまったのと嘲笑うように照り付けていた。
通話を終えた
「ちょっといいか?」
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