1話だけの本棚
黒夢
第1話 No Title
「—好きです。付き合ってください」
私の前に現れた男は.....“目が死んでいた”。
私、立花 薫(たちばな かおる)は中学2年から3年の、1年の間、彼氏という者がいた。
あの頃の私は、きっと満たされていたんだと思う。.....でも、別れた。
理由はなんだったのかは分からない。それこそ、何度も、何度も考えて、悩んで、苦しんで、次第に私は“疲れてしまった”のだ。この、“偽りの恋愛”に。
そして、私と、今はどこにいるか分からない彼は3年生に進級したばかりの頃に別れた。
それから私の周りには、人が寄り付かなくなった。理由は、分かっていた。彼と別れたからだ。
そこそこ、女子からモテる男が愛した私がきっと、憎かったのだろう。...しかし、付き合っていた頃ならきっと彼が助けてくれた。でも、今は付き合っていない。
当然、私は人生初めてのいじめにあったのだった。
初めは軽いいたずら程度のことだった。しかし、日を重ねるごとにそれは悪化していったのだ。
今時、素直に親や先生に言う子なんていないのは、現状の維持を望んでいるからだ。
もしも言ったら.....という不安と焦燥感に苛まれる日々は彼のことで悩んだ時よりも、より苦しく、より、痛かった。
.....だから私は、必死に勉強した。あの子たちよりも遥かにレベルの高い高校に行くことで、私は救われると本気で思った。そう考えるようになってから、私は以前よりも、辛く感じなくなった。
そして、志望した高校の合格通知を受け取ったとき、私は“泣き崩れた”。
「—好きです。付き合ってください」
俺の前にいる女は.....俺を“死んだ魚”のように見ている。
俺、長塚 忍(ながつか しのぶ)は小学6年の頃、可愛い彼女がいた。
中学の受験が無い分。俺の小学校は比較的、つまらなかった。その6年の間の数か月、俺は嬉しかったんだと思う。.......でも、彼女に“裏切られた”。
理由なんて考えたことは無かった。あの頃は本当にうれしくて、いろいろ考えていたんだと思う。.....でも、結局、俺はただの“使い捨てのごみ”だったんだ。
俺は、彼女と一緒に帰っていた。その日に限っていつもと違う道を通っていて、俺はのちにそれが罠だったと気づくことになる。
頭を思いっきりバットで背後から殴られた。あまりの激痛で、俺は頭を押さえた。
周囲からは笑い声が響くだけで、その中に、彼女の声も混じっていた。
それからは覚えていなかった。
でも、目を覚ますと白い天井で横にはお母さんがいる。お父さんも珍しくいて、俺は“生きている”。でも死にたかった。苦しくて、泣きたくて、でも、話したところでどうにかなる話ではないし、あまりの激痛で顔や名前を憶えていないから、俺は今までバットで殴った奴や笑ったやつの顔を知らない。
だから結局、俺は頭のけがをぶつけたと何回も言って、それ以上の事は喋らなかった。
頭のけがで入院してから数か月の間、なんども、なんども頭とは別のところに痛みが走る。それが辛くて、苦しかった。
定期検査でも異常が無かったから、俺はこれ以上の検査を望まなかった。
それが、うつ病と分かったのは、しばらくしてから、食欲が無くなったりした症状が起きたからだ。
すべて、完治したころには、小学校の卒業式で、俺はその日、行かなかった。
中学に上がってからまっさきにしたことは、その中学校の女子全員に告白し、振られることだった。小学校のようにはなりたくないから、もう“二度と彼女を作りたくないから”。振られて、振られまくって。すべての人から振られたころには、俺は嫌われ者になっていた。
ありもしない噂を流されて、時にはあからさまに嫌な顔をされたりしたが、幸いにもそのお陰で2年からは後輩へ告白をしないでも、俺の酷いうわさが役に立って、自然と誰も寄り付かなくなった。
そんなおかしな青春を送り、今度は高校でも同じことをする最中なのだ....が。
「—いいわよ。今日からよろしくね、彼氏くん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます