私の王子様~城出したお姫様が正体を隠して婚約者候補の王子たちと魔王討伐の旅に出かける件~

風雅ありす

【冒頭】こんなお話です。(※作中から一部抜粋。)

「……え、それは、どういうこと?」


 驚いて私が顔をあげると、ルカが困った顔で私を見ていた。


「国王陛下は、お集まり頂いた王子たちに、

 アイリス姫は、【魔王】に誘拐されたと話されたのです」


「ま、魔王?!」


「【魔王】を倒し、アイリス姫を無事に連れ戻してくれた者を姫の婚約者とする、と」


「なっ、そんな勝手な!」


 私の抗議に、ルカが恨めし気な視線を送る。


「勝手なのは、姫様です。

 そもそも姫が城を抜け出していなければ、こんなことには、ならなかったのですよ」


 それを言われると返す言葉もない。


「王子達は、既に【魔王】討伐の準備に取り掛かっています。

 今更、間違いでした、では済まない事態にまでなっているのです」


「そ、そんな……」


「こうなったら、こっそり王子達のあとをつけて行き、

 王子達が【魔王】を倒した後で、姫が姿を現せば、何とか……」


「そんな面白そうなこと、どうしてもっと早く言わないのよ!」


「…………は?」


「この国に、【魔王】がいるなんて話、私は、生まれて初めて聞いたわよ」


「え、えぇ……それは、私も初めて聞きました。

 どうやら、古より伝わる伝説のような話らしく、

 本当に【魔王】が存在するのかどうは……」


「決めた。私もその【魔王】討伐に参加するわっ」


「なっ、何を仰られるのです?

 あなたは、【魔王】に浚われた、ということになっているのですよ」


「それなら、偽名が必要よね。

 アイリスだから……【アリス】とかどうかしら?」


「つまり、身分を隠して王子達について行くということですか?

 そんな無茶苦茶な……バレたらどうするんですか」


「大丈夫よ。ルカが黙っててくれたら、バレないと思うわ。

 王子達は、私の顔も知らないわけだし。

 それに、私の婚約者候補たちなんでしょう?

 正体を隠して一緒に同行すれば、彼らの本性を見極められるじゃない」


「それは、まあそうでしょうが……第一、何と言ってついて行くおつもりですか。

 【魔王】討伐に女人の身でついて行くと言って、受け入れてもらえる筈がありません。

 それに、本当に【魔王】がいたとしたら、危険すぎます」


「理由なら、その場の成り行きで何か適当に考えるわ。

 危険なら、ルカが一緒についてきて、私を守ってくれればいいのよ」


「そ、それは、まぁ……私がついていれば、姫に危険が及ぶようなことには、絶対にさせませんが……それとこれとは話が……」


「さあ、王子様たちを探して、【魔王】退治よー!」


「………………どうなっても知りませんよ、私は」

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