第17話 そろそろ

性格的にそろそろ本気を出さないと気持ちが悪い。それに”菜”、君に会いたい。

僕はなずなに「なずな、少年の言ってた”蝶”でわかったよ。”蝶の盗撮盗聴型小型ドローンを造るのは少年Bだが。攻撃してくる仮想世界Bの正体、犯人は人間だ。しかも高校生。元高校生だ。」なずなが「なんで人間の高校生が異世界の私達境界線人を狙うの?」「それは彼がすべての世界を支配し、”神”になろうとしているからだ。」なずなが、しかめっ面で「人間ごときが。こちらの世界に干渉するとは。こちらの世界は永遠だ。時間も存在しない”不老不死の世界。”その昔から我々境界線側を、時に人間たちは恐れ敬い”極楽浄土”とまで言っていたのに。」僕は「へーえ、極楽浄土、神様の世界ってここだったの?」なずながまた、しかめっ面で「それはそちらの人間が勝手に想像して言っているだけ。別にこちらは、神様でもなんでもない。ワタル、君がいた人間界と何も変わらない。私を見ればわかるでしょう。いいことも、悪いこともする。ただここには時間が無い。終わりがない。”時間があるか、ないか”ただそれだけの違いよ。」僕は「そうだな。勝手に人間界が決めつけたイメージで境界線を見ていただけか。」「そうよ。」「まあ、そのあたりのことは理解したとして犯人の正体は間違いなく少年Bだ。高校生だ。正しくは元高校生だ。”仮想世界B”はゲーマーの少年B、いや正しくはゲー魔のBが学校の宿題で出たプログラミングからできたものだと聞いている。彼の”仮想世界B”のゲームは、あっという間に広がり、彼は学校もやめてネットの世界からも突然消えた。噂によるとネットの中で人さらいや、悪いことをしていたから消えたって噂もある。それに一生分稼いだから、今はひっそり都内のタワーマンで気ままにリッチ生活しているとか。これが一般的な噂だ。しかし僕は確信している。Bはまだネットの世界にいる。Bの目的が達成されるいないからだ。Bは人間界も異世界も自分の支配下に置こうとしている。」なずなが、「なぜ?なぜ彼は”神”にこだわるの?”神”なんて、ほんとはどこにもいないのにね。」「単純に一番になりたいだけだと思うよ。なんでも一番は気持ちがいいからね。」「ワタル、ふざけているの。」「いやふざけてない。人間っていう生命体はいたって愚かな生き物だ。現状に満足はしない。それにその満足しないのは”向上心”という言葉に変換されて”努力”だとか”いい風に解釈されてよいことに聞こえる。実は”単なる欲張りな”それだけさ。”もっともっと”と欲深い。」なずなが「怖いね、人間って。」「なずな、今ごろ気づいたのかい、人間の怖さを。なんか笑えるんだけど。」「ワタル、それは失礼じゃないの。」なずなが真っ赤な顔で怒った。「なずな、ごめん、ごめん、言い過ぎた。」

「でもワタル、なぜBが犯人だと分かったの?”菜”が教えてくれた。いや、記憶をたどったんだ。僕が初めて”菜”と会ったとき真夜中なのに”蝶”が”菜”の近くを飛んでいたんだ。暗くてよく見えなかったけど”蝶”。でも正直あの時は”ガ”だと思っていたんだけどね。」なずなの顔が少し曇った。「なずな、どうかした?」なずなは「うん、大丈夫。何もない。それで、その時の”ガ”だっけ?それがBが造った盗撮盗聴型の”蝶”だったの?」「たぶん間違いない。」「と言うことは、その”蝶”は”菜”についてこの境界線、京、そして人間界とすべて行き来したってこと。」僕は「たぶん。なぜBが”菜”に蝶をつけたかどうかは、わからない。もしかしたら、ほんとうに、たまたま”菜”が境界線から”京”に行くって盗聴で知って、情報を得るためについてきたのかも知れない。それで”京”の人々の特殊能力、人間界にも自由に行き来できることをしり、時空空間移動は少年Bにはできない。だから”京”には勝てないといったのかもしれない。あくまでも憶測だが。」「まあ、いいわ、犯人が分かっただけでもすごいわ、ワタル。君はやっぱり天才ね。」「そうだな。」なずなが、「だから、ワタル、人間界に帰りなさい。これは境界線の長からの命令です。」「えっ、なずな。なずなは一人で大丈夫なのか。」なずなが、グーの手で僕の頭を「コッン。」なずなは「大丈夫よ。」明るく言った。そして小さな声で「ワタル、そのやさしさがいけないのよ。」僕は「えっ?」聞きかえしたが、なずなは「なんでもないわ。早く帰りなさい。」と僕を境界線の境界のドアに連れて行き、「じゃ、ワタル。B、やっけてね。”菜”によろしく。」っといって「ピシャリ」と境界線のドアを閉じた。次の瞬間、僕は学生の時に住んでいたマンション前に立っていた。


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