第4話 日常の僕

“なずな”を境界線の入口へ送った。僕は、いつもの帰り道。時間がさっきまで止まっていたとは誰も知らない。知らなければ、何も無かったことと等しいとは限らない。僕は知っている。もしかして、こうしている瞬間も時間が止まっているかもしれない。“君、君の時間は大丈夫ですか。”思わず僕は隣りを追い抜く女性に声をかけそうになった。それにしても“菜”はどこに行ったんだ。一度しか会っていないのに僕の頭の中を占領する。”菜”。そのころ菜は、なずなが探しに来ていたように、こちらの世界にいた。僕にあって以来、菜はこちらの世界、人間界に来たくて。タブーを起こしても今すぐ行きたくて境界線で1人方法を探しいた。ある時、境界線の門番からあちらの肉を食べると境界線を渡れて、人間になれると聞いた。その代わり、御代は、かなり高くついたようだ。菜が以前話していたこちらの人間が対価を払い不老不死、永遠の命を境界線で過ごすのと、ちょうど逆だ。菜は、かなりの対価を払い、その肉を食らった。そしてこちらの人間界に来ていた。人間界への転生。しかも“ただの人間”“普通の人間”として。境界線での記憶もあの日、僕と会った記憶もすべてなくしていた。まさに人間界へ逆転生。しかも女子高生への転生。しかし一つだけ、菜、自身記憶が巡るときがある、夢の中だ。毎晩夢の中で境界線での記憶が巡り、僕と出会ったあの日が思い出される。しかし、何かの呪いか障害か、朝になるとすべて忘れている。この情報を僕は、僕の夢の中で見ていた。僕と会うのはいつになるのか。なずなとあって以来、見る夢だ。確かか、どうかはわからない。ただ菜と決定的に違うのは僕は夢を覚えていることだ。もしかして長崎のランタンの光に紛れてよこした便りは、君が転生した夢の中から僕に助けを求める便りだったのか。菜、君は本当にこの世界に転生してきたのか。女子高生かあ、きっと菜のことだから気の強い、うるさい女子高生に転生していると思うが。君に会いたい“菜”。

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