第4話 妹の部屋で過ごす最初の夜

 妹の美咲が部屋の電気を消したので、俺も布団に入り大人しくする。

…21時30分に寝れる気なんてしない。


普段の俺は、0時を過ぎてから本番なのに…。

今みたいに美咲に合わせるのが、母さんが俺に与えた罰になる。



 「お兄ちゃん、ごめんね。早くて寝れないでしょ?」


俺のせいでこんなことになったのに、気遣ってくれるのか…。


「お前が気にすることじゃない。悪いのは俺さ」

真面目に規則正しく生活してれば、こんな事にはならなかったんだ。


「…お兄ちゃんは、自分の部屋に戻りたい?」


「当然だ」

美咲の部屋の状況を考慮し、ゲーム機は持ち込めなかった。


なので今日ゲームができなくて、少し物足りないぜ…。

それと、音漏れを気にして爆音で音楽を聴けなかったのも不満だな。


「やっぱりそうだよね…」

彼女は何故か寂しそうなトーンで言う。


「お前だって嫌だろ? 俺がこの部屋に居続けたら…」


反対する理由はないと言っていたが、長期間になれば話は変わるはず。


…そういえば、罰の期間について母さんは何も言ってなかったな。

俺の生活態度の改善次第って事か?


「そんな事ないよ。今日一緒に過ごせたから、久しぶりにお兄ちゃんとたくさん話せたもん。この部屋にいる時は、いっぱいおしゃべりしようね」


どこまで本心かはわからないが、ここまで言ってくれるのは嬉しい。

今回の罰をきっかけに、俺も心を入れ替えた方が良さそうだ。


「お兄ちゃん。私そろそろ…」


眠気の限界に達したか? 寝かせてやらないと。


「そうか。おやすみ」

未だに寝れる気はしないがな…。


「うん…、おやすみ」


その言葉からちょっと経過した後、美咲の寝息が聞こえてきた…。


寝れないとはいえ、寝返りとかの音で起こすわけにはいかない。

俺はなるべく動かず・考えずをモットーに、目を閉じて眠くなるのを待った…。



 「……兄ちゃん、お兄ちゃん起きて」

美咲に体を揺すられる俺。


結局いつ寝たんだろう? 長い間目を閉じていたのは覚えているが…。


「早く起きて~」

そう言って、彼女は俺の布団をはがす。


布団で温められた空気が、一斉に逃げていく…。

これにより、寝続ける理由はなくなった。


だが、まだ眠いぞ。体はだるいし、目が開かねー。


「いい加減起きないと、イタズラしちゃうよ♡」


イタズラ? と思った矢先に、股間を触られた。


「何だ!?」

予想しない感覚に襲われたので、咄嗟に体を起こす。


「おはよう、お兄ちゃん。やっと起きてくれたね」


「おいおい、今のはイタズラどころじゃないだろ?」

ズボン越しとはいえ、限度を超えてる気がする。


「大きくなってるを観たら、触りたくなったの♡」


…俺のは朝立ちしている。美咲が興味を持つのは、仕方ないのか…?


「もしお前の寝起きが悪かったら、俺も色々触っても良いんだよな?」

ほぼ冗談で訊いてみた。


今触られたのは寝起きが悪いからだ。それなら、俺もやって良いはず。


「もちろん良いよ。私がすぐ起きなかったらね」


今の言葉、しっかり覚えておこう。いつか仕返しさせてもらうぞ。



 美咲と共に部屋を出てリビングに着いたところ、朝食は既にテーブルに置かれているな。


食器の色で俺のか美咲のかは判別できるから、間違う事はない。


「美咲。昨日の翔はどうだった?」

俺の生活態度の変化を確認する母さん。


「問題なかったよ。私と同じ時間に寝たから」


「翔がこの時間に起きれたのは、美咲と一緒の時間に寝たおかげね。これからも続けて良いかしら?」


起こされたとはいえ、俺がこの時間に行動できるのは早く寝た影響だろう。

いつも寝る時間に寝たら、間違いなく布団から動けないな…。


「もちろん」


1日で済むとは思ってないので、この展開は予想通りだ。


「美咲が1人で登校すると翔が2度寝するかもしれないから、一緒に登校してくれると嬉しいんだけど…」


母さん…。心配し過ぎだろ!


俺と美咲は同じ高校に通っている。だから一緒に登校することはできるが、する必要はないな。登校ぐらい、1人でさせてくれ…。


「それ良いね! お兄ちゃん、良いかな?」

上目遣いで俺を観る美咲。


そんな目で観られたら、断れないじゃないか。


「…わかったよ」


「やった♪」

笑顔で喜ぶ程か?


コイツ、甘えん坊だったんだな…。まだまだ子供っぽいところもあるようだ。



 朝食後、俺は着替えるために自分の部屋に入る。

自分の部屋なのに、着替えと私物を美咲の部屋に持ち込む時しか入れない…。


着替えを持ち込めるほど、彼女の部屋は広くないからな。

こうなるのは仕方ない事だ。


罰が終われば、こんな不便な思いとはおさらばできるぜ…。


登校準備を終え玄関に向かうと、美咲は既に待っていた。


「それじゃあ、行こうか♪ お兄ちゃん♪」

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